夢No.14
金色の魚
学校で、奇妙な課題を出され、
川のような、湖のような所へ、クラス単位で出かける。
虫を採集するのが目的らしいのだが、
その虫というのが、ミミズのような、ゴカイのような、
てらてら光る、粘液質の気色悪い線虫なのだ。
遅刻してきた俺は、教室の掲示を見、虫の採集場所へ向かう。
河原でみんなと合流するが、俺だけなかなか、その虫が見つけられない。
友人らに聞くと、なんでも貯水池の方にたくさんいるらしい。
「お前も早く捕まえて、さっさと教室戻れよ」
すでに虫を捕まえた友人たちは口々に言い、俺を残して去る。
なんだ、俺には付き合ってくれないのか。冷たいヤツらめ。
苦笑いをひとつ。俺は貯水池を目指し歩き出す。
ああ。ぽかぽかとした日差しのいい天気だ。気持ちいいな。
俺はおひさまを仰ぐ。ふりそそぐ陽の光。ひとりでに口元がほころんでくる。
遅刻ついでに、学校なんてサボって散歩ってのも、たまには悪かないな。
一人でニヤニヤしながら、上を向いて歩いている俺。
ハタから見たら、ヘンなヤツだと思われるんだろうな、とは思うものの、
思いたいヤツには思わせておくさ、と相変わらずニヤけ顔で歩く。
小道をしばらく歩くと、土手の下は湖のようになっている。
ここが貯水池らしい。なかなか広い池のあちこちに、小島が浮かんでいる。
一番近くの小島には、釣りをしている老人と女の子がいる。
老人は釣り糸を垂らし、少女は水際で足をぱちゃぱちゃさせ、水と戯れている。
孫なのだろうか、老人が少女を見守る眼差しは、とても暖かい。
老人は、俺の視線に気が付き、気恥ずかし気に頭に手をやり、こちらにおじぎする。
俺も軽く一礼し、そちらに向かい歩きつつ「釣れますか?」と訊ねる。
老人は静かに首を振り、少女は「ぜ〜んぜんっ!」と明るく答え笑っている。
「ねえ! こっちおいでよ!」
少女が明るく笑いかける。
俺は戸惑うが、老人の暖かい笑みに誘われ、小島へと向かうことにする。
向こうまではこちらの岸から少し距離があるが、
飛び石のような足場が点々とあるので、飛び乗っていけば渡れそうだ。
俺はタッ、タッと、足場を飛び移る。
「あ! そこ!」
少女が叫ぶのと、俺が次の足場に飛び移るのは、ほぼ同時だった。
その声の響きに、次に起こる事態は予想がついたが、
やはり足場がぐらぐらと揺れ、じわじわと沈んでいく。
だが、かろうじて体勢を整えた俺は、その次の足場にすぐさま飛び移る。
小島にたどり着いた俺に、少女が声をかける。
「あそこの足場、ぐらぐらして、危ないのよね」
「そういうことは、早めに言ってくれよ。ま。無事だったからいいけどね」
「えへ。ごめんなさい。あ、こんにちは」
「あ、ああ、こんにちは」
「ねーねー。お兄さんはなにをしてる人?」
「学生」
「あ〜。サボってるんでしょお? いっけないんだ〜」
「違うよ。んー、違わないかも知れないけどな」
「あはは、何ソレ? 面白い」
挨拶から交わされる他愛もない会話。
その間も ふん ふふ〜ん♪ と鼻歌を歌いながら、水と戯れる少女。
老人は静かに竿に向かっているが、時折、全然釣れないとボヤいている。
しかしどうやら、老人の注意は、もっぱら竿よりも、少女の方に向いているようだ。
少女を見つめる老人の自慢げで、誇らしげな顔が、俺に問いかけるような視線を投げる。
この娘は老人の宝物なのだろう。俺も無言で、いい子ですね、と視線を返す。
老人にはちゃんとそれが通じたらしい。満面に笑みを浮かべて、大きく頷く。
「竿は余っているし、一緒にどうじゃね?」
老人に勧められ、俺も釣りをすることにする。
「エサはなんですか?」と聞くと、
「そこらへんをほじくれば、ミミズがおるから、それを使えばええ」と老人。
水際を少し掘り返してみる。すると、ミミズではない虫が、土の中でのたくっている。
学校で採取してくるように言われた、例の気色悪い地虫だ。
なんとはなしに、僕はその虫を釣り針に付け、竿を垂らす。
と、突然、強い引き。しなる竿。すごい手応えだ。かなりの大物か!?
驚いた顔の老人と少女も、俺に声援を投げかける。
釣りに関してはよく知らない俺は、とにかく力任せに、
引っこ抜くように竿を上げる。イメージとしては、カツオの一本釣りだ。
ザバっ!っと水から上がる魚影、力を入れすぎた俺は、反動で尻餅をついてしまう。
ひっくり返った俺の胸に、放り上がった魚が落ちてくる。
デカイ。60センチはあろうかという、見たこともない魚。
大きいウロコが、金色に光る。姿は熱帯魚のアロワナに似ていなくもない。
「わぁ! すごい、すごい!」少女は飛び跳ねて喜んでいる。
老人は真剣な眼差しで、魚を見「うむむ」と低く唸ってから、俺を見ている。
その視線があまりにきつく、鋭かったので、不安になる。
「おじいさん、これ、なんていう魚なんですか?」
しかし、老人は問いには答えず、深く自分の考えに没頭しているようだ。
意を決したように、老人は少女に向かって、なにごとか耳打ちし、
少女にポケットから出したナイフを手渡した。
これから一体、なにが始まるのだろうか?
ナイフを渡された少女は、躊躇いもなく、手慣れた様子で魚をさばき始めた。
機械的で、スピーディな少女のナイフの動きによって、金色の魚は見る間に解体される。
冷静に魚から内蔵を取り出す、血にまみれるその小さな手。
さっきまでの少女のあどけなさとはあまりにも不釣り合いな、残虐とも思えるその行為。
しかし、その目に残虐性はない。むしろ職人のそれと同じような、
自分のしていることに対する信念のようなものさえ、その目には宿っている。
俺の目と、魂を釘付けにする少女の動作。
まるで、少女の手で捌かれているのが、自分であるかのような錯覚に陥りくらくらする。
当然のようにそれらを行う少女の姿が、恐ろしくも美しく目に焼き付く。
俺がそれらに違和感を感じるのは、少女に自分勝手な先入観を抱いていたからだろう。
知らず、驚きが顔に出たままだったのだろう。
少女は俺の顔をのぞき込むと「どうしたの?」と怪訝そうな様子で首をかしげる。
その表情はすでにあどけなさを取り戻している。
「い、いや、なんでもない」答える俺。 少なからぬ動揺は果たして隠せただろうか?
「その魚、食べるの?」少女に聞くが、答えたのは、老人の低い声だった。
「その魚は、特別なんじゃ」
見ると、解体された魚は、その頭を中心として、盛り土の上に幾何学的に並べられていた。
なんなのだろう? これは、なにかの宗教的儀式なのだろうか?
訊くことがためらわれたが、そんな俺の戸惑いを感じたのだろうか、
老人は「ただの昔からの、しきたりみたいなものじゃよ」と、曖昧な説明でその場を流す。
あまり、深く訊かない方が良い話題なのだろうか?
俺は気にはなるものの「そうですか」と、とりあえず相槌を打ち会話を切る。
老人が釣りを再開したので、俺も再び釣り糸を垂れる。今度のエサはちゃんとミミズだ。
しかし、二人とも、それ以降魚がかかることはない。
結局、俺はまた、少女と話をしている。
さっきの出来事が、夢であったかのように、少女はあどけなく笑う。
しばらく話して仲が良くなると、
少女は突然、どこかでスイッチが入ったかのように、饒舌になる。
吹き抜ける風。流れる雲。土の匂い。澄んだ空気の薫り。
ひっそり咲く花。そよぐ草の葉。繁る樹々の奏でる葉音。
小鳥のさえずり、虫の羽音、遠くで吠えている犬。
顔にふりそそぐ陽の光の暖かさ。水に浸す手のひらの冷たさ。
それら全ての美しさ、自然の姿。細部に宿る美。生命の輝き。
その素晴らしさを、その全てを愛していることを、堰を切ったように喋り出す少女。
俺は驚き、圧倒される。言葉は幼いが、なんと豊かな表現力なのだろう。
その少女の感受性の強さにうちのめされる。
そのあどけない表情の、どこにそれだけの感情を詰め込んでいたのだろう。
そこで俺は気付く。そうか、この娘も自然の一部なんだ。完全に純粋な魂だ。
どうか、この娘がその気持ちのまま、ずっといてくれますように。俺は心から願う。
その時、その瞬間。確かに俺は、その少女を、
その少女の純粋さを恐れ、同時にその純粋さに憧れ、惹かれていた。
彼女の光が、俺の影、俺の暗闇をくっきりと浮かび上がらせ、少し悲しくなる。
俺はここに居るべき人間ではない。
彼女の無垢な魂を汚す前に立ち去らねばなるまい。
「もう行っちゃうの?」
「ああ。 学校、行かなくっちゃな」
そんな気はさらさらないし、もう夕暮れなのだが、他に口実も思いつかない。
俺は老人にぺこりと一礼し、腰を上げる。
ふと、先刻、解体され幾何学模様に配置された魚が目に止まる。
中心部に置かれていた魚の頭、閉じていたはずの、その口が開いている。
そこから、小さな木の芽が生え出してきているヴィジョンが脳裏に飛び込んでくる。
死と再生。
「ちょっとまって! ね。コレ」
少女が手のひらを差し出す
「記念品の、ぞーていですっ」
無理して難しい語彙を使う、外見とアンバランスな少女を愛おしく思う。
が、立ち去り難くなるのを怖れ、俺は無表情を装う。
手のひらには、さっきの金色の魚のウロコが一枚。
「ありがと。貰っとく」
「また、会えるよね?」
「ああ」
もう会うこともないだろう。俺は少女に背を向け歩き出す。
少女から、その純粋さから逃げ出したと言ってもいいのかも知れない。
「約束だからねー!」 遠くから、少女の声が聞こえてくる。
俺は聞こえないフリで、大きな夕日に向かって、そのまま歩み去る。
伸びる自分の影が後からついてくるのを、痛いくらいに感じている。
手の中には、陽に透かすと虹色に輝くウロコ。
脈絡がない。この夢の主題ってなんだ?
って、夢にそんなモン求めてはいけないのかも知れんな。
だから、タイトルもてきとーに付けた。。。
文章的にも滅茶苦茶ですな。支離滅裂。クドい表現(苦笑)
ロリコン。
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