夢No.21
歩き屋
僕は、新宿駅を歩いていた。
相変わらず、すごい人ごみだ。
こんなにたくさんの人が歩いているとは・・・
人混みの中を、僕は縫うように早足で歩く。
すれ違いざま、一人の男性と肩がぶつかり合う。
すみません。
いえ。
短い言葉を交わし、立ち去ろうとする。
おや?
定期入れのようなものが落ちている。
振り返り、さっきの人を呼び止めようとしたが、
もうその姿は見えなくなっていた・・・
それを拾った僕は好奇心を抑えきれずに、
人気のない場所で、定期入れを開けてみる。
そこには、一枚のカードだけが入っていた。
表には『歩き屋』
裏には『新宿区』
と、奇妙な書体で、小さく記されているだけである。
IDカードかなにかだろうか? とてもシンプルなカードだ。
なんだこれ? 歩き屋?
奇妙な名称だな。どんな団体なんだ?
お店やさんかな? 企業名だろうか?
それにしたって、いったいどんな商売だ!?
そんなことを思いながら、カードを眺めていた。
さて、このカード、どうしたものか。
持ち主の名前も、連絡先も、なにも記されていない。
僕から直接、持ち主に返す手段はないわけだ。
交番に届けるべきかな。
いや、駅の構内で拾ったのだから、駅員に渡した方が良いのかも。
僕は『歩き屋』という名称を面白がり、くだらない想像を巡らせながら、
駅構内の詰め所のような場所へと赴いた。
あの、すいません。
これ、落とし物、拾ったんですけど・・・
あ、遺失物ですか、
それじゃ、こちらの用紙に記入して下さい。
僕の顔さえろくに見ずに、横を向いたまま、
係の人は忙しそうに用紙を差し出しながら、尋ねる。
で、なにを拾われましたか?
僕は用紙に自分の素性を記入しながら、
定期入れみたいですね。
と、拾ったものを係員に手渡す。
僕は下を向き、記入を続ける。
係員が定期入れを開く気配。
!?
なんだ?
僕はチラリと横目で係員を盗み見る。
今、定期入れに入っていたカードを見て、
一瞬、係員が、ぎょっとしたような気がしたのだ。
でも、それは一瞬のことで、
今の係員は、冷静そのものに見える。
これ、中、開けて見ましたか?
なにげない風に、係員は尋ねる。
・・・・・・・・・
なんだろう、この嫌な空気は。
僕は咄嗟に、
いえ、見てませんが?
と嘘をついた。
定期券が入っていたんじゃないんですか?
や、定期券だよ。
誰にでも使えるものだからね、
最近は拾っても、届けてくれる人は少なくなってね。
ありがとう。
落とした人も、すぐに気が付くはずだから、
ちゃんと持ち主が見つかって、返せるはずだよ。
言いながら、係員のこめかみが、ぴくりと引きつる。
何故、この人はこんな嘘をつくのだろう?
『歩き屋』って、いったい・・・
あのカードは・・・
たまらなくなって、僕は訊いてみた。
あの・・・『歩き屋』っていうのは・・・?
突然、係員が叫ぶ。
見たのか!?
物凄い形相で、こちらににじり寄る。
僕は怖くなって、その場を逃げ出す。
追いかけてくる係員。
駅の人混みへともぐりこみ、やりすごす。
歩いている大勢の人々。
歩いている、歩いている、歩いている。
・・・歩き屋?
歩くのが、仕事?
その時、構内放送のスピーカーが、なにやらノイズを発し始めた。
ガーガーピーピー、耳障りな音が辺りに響く。
すると、突然、人混みの流れが一斉に止まる。
まるで時が止まったかのように、動かなくなる人々。
ノイズだけが、駅の構内に響く。
いったいどうしたっていうんだ!?
僕は呆然と立ち尽くしていた。
スピーカーからのノイズは、いつの間にか鳴り止んでいる。
ゆっくりと、周りの人々が動きはじめる、僕の方へと、振り返るように。
僕を取り巻くように、人垣の輪が出来はじめる。
じりじりと人の輪は半径を縮めていき、僕を追いつめる。
な、なんですか? ちょっと、そこ、通りたいんですけど。
僕の問いかけに、無言の人々。
狭まる人の輪から、幾つもの腕が伸び、ついには僕を捕らえる。
どうしたんだ!? この人たちは、いったい!?
抵抗し、暴れる僕を、幾つもの手が押さえつける。
もがく抵抗もおかまいなしに、手足を押さえられ動きを封じられる。
気が付くと、目の前には、あの駅係員が立っていた。
まったく、手こずらせるな、君は。
そう言うと、ポケットからなにかを取り出した。
浸透圧式の注射器!?
押さえつけられている僕は、必死であがく。
しかし、僕の首筋に小さなその器具が押し当てられる。
プシュウ
もがき続ける僕。しかし次第に体に力が入らなくなってくる。
なんで、僕がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ・・・
ろれつの回らなくなってきた口で、それでも僕は質問を口にする。
『歩き屋』って、いったい・・・?
駅員は、ふと寂しそうな顔をし、少し躊躇った後、僕に言った。
『歩き屋』かい、それはね、君が目にしているもの、全てさ。
全て?
全てが、みんなが?
!?
そうか、いや、まさか、そんな・・・
それじゃ、僕の記憶は・・・この世界は・・・
僕以外の全員が、歩き屋だったなんて・・・
薄れていく意識。
ああ、僕は、このまま・・・
安心したまえ、それは只の麻酔だよ。
我々は、君に危害を加えるつもりはない。
むしろ、まったくその逆なのだから。
その声を聞きながら、僕は闇の中へ。
僕は捕まって、結局、記憶を改竄されちゃう。
ふりだしに戻る。夢から覚める。平穏な日々。
この夢を見た後、同じ設定で、
頑張っちゃう少年少女のお話を考えた。
アイデアだけなんだけどさ(苦笑)
あらすじ
第三次世界大戦後の世界。
特定種族を死滅させるウィルスの使用により、壊滅した日本。
大変珍しくなった絶滅寸前の「日本人」という種族を保護、観察するため、
日本の一部の区画を大戦前と同じ様に完全再現する、謎の動物保護団体。
大量のクローンを「歩き屋」として放ち、平和な日本を演出し、
そこに、生き残ったわずかな日本人達を生活させている。
記憶を改竄された少数の「本物の日本人」は今が西暦2000年だと信じて疑わない。
すべてが作り事の人生。
そこでは恋愛でさえも「純血な日本人種」を望む者の意図的な操作によるものだった。
そんな中、純血種の少年は、歩き屋の少女と出会い、恋に落ちる。
真実を知った少年が選んだ道とは・・・・・・
ちょっと面白そうだな(笑)
ほんとは日本だけじゃなく、世界が滅んでいて、
残り少ない地球人を、異星人が保護・管理してるんだけど、
実質地球人を管理しているのは、地球人のクローン達の上層部で、
組織内部の階級とか、いろんな事情とか、
純血に対するコンプレックスとか、憧れとか、
それらが複雑に絡みあったりしてるっていう、裏設定アリ。
でも、このあらすじしか考えてないよ。
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