夢No.25
ハサミムシ
暗く湿った場所
苔むした石をどかすと
しなやかに素早く動く小さな黒い影
その動きを目で追おうとする内に
眩暈にも似た感覚に包まれ
急速に世界が拡大してゆく
体躯はみる間に縮んでゆく
かがむように目で追っていた小さな影は
いつしか見上げるような大きな影になっていた
大きな黒い瞳がこちらを捕らえ接近し
触角がうなりを立てて頭上を振り抜ける
蟻のような頭に長く扁平な体躯
つやつやと滑らかに黒光りしている体節の連なり
その先には左右非対称に美しく弧を描く鋭利な刃
ハサミムシ
なぜだか頭の芯が強く痛む
威嚇するかのように体を反らせ
頭と鋏を同時にこちらに向けてはいるが
どうやらそれを振り下ろすつもりはないように見える
それでもその巨大さに怯え後ずさると
窪地に足をとられよろけてしまう
背になにかが当たる
不思議な弾力を持つ壁のような・・・
ゆっくりと首を巡らせるとそこには
半透明で乳白色の大きな筒状のものが林立していた
・・・卵
そうかこれを守っていたのか
ぞわり
寄りかかっていた背後のその内側が動く気配
振り返る目の前でゆっくりと盛り上がり裂けていく殻
半透明で乳白色の蠢く幼虫がゆっくりと這いだしてくる
同時に林立していた周りの卵も一斉に孵化をはじめる
白く透明な幼虫達に魅入られ動けない
周囲を取り囲むその輪は次第に狭まり
それが閉じるか否かというその時
ヤメナサイ コドモタチ
頭の中に強い響き
ヤメナサイ コドモタチ ソレハチガウ
海が割れるように幼虫の群れが割れ道が出来る
ふらふらとそこから抜け出すと
先程と同じように頭と鋏をこちらに向けている成虫がいる
サア コドモタチ
頭が割れるような強い響き
サア タベナサイ
その思念波と共に高みから鋏が振り下ろされる
鋭く光る美しい弧の鋭利な鋏が広がりながら煌めく
もう駄目だ・・・・・・ぎゅっと目をつぶる
じゃくり
硬いものを裂くような嫌な音に目を開ける
目の前には首の落ちたハサミムシと
地面に突き刺さり閉じられている刃
呆然としている間にも
幼虫たちはその骸に群がりそれを貪り始める
逃げ出す背後から
激しい頭の痛みと共に
歓喜にみちた感情の思念が津波のようにどっと襲いかかる
ただ眩暈に囚われ
訳も分からず涙を流しながら
闇雲になりふり構わずその場を走り去る
只走り去る
ハサミムシってほんとに子供に自分を食べさせるらしい。
この夢を見た後で知りました。
もっとも夢で見たのとは違って、
子育てをちゃんとしてから、巣立ちの際にそうするんだとか。
ずいぶん子煩悩なムシだなぁ。
旦那サン食べちゃうカマキリ婦人ってのは知ってたけど(苦笑)
今思うと、題材的にはNo.18「虎」とカブるような気もするな。
ちなみにオチが曖昧なのは、夢が曖昧だったから。
肝腎なのはハサミムシの昆虫的な美しさのディティールだった筈なのに、
それがあんまり表現出来ていないのが悲しい。
主格を用いなかったのは、ワザとです。
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