また、やってしまいました。
おわかりの通り、内輪ネタです。
それも、内輪じゃないと、何がネタなのかも、分からないです。
・・・反省してます。
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「バーミステリ・動物編」
キーというドアの開く音に、僕は顔を上げた。
就職活動中なのだろうか、リクルートスーツらしきものを着た若者が、入っても良いのかと聞いてくる。
「ええ、やってますよ。どうぞ、お入り下さい」
ふー、今日、初めてのお客だ。
もう10時になる、普段なら最低でも5、6人のお客がいる時間だ。
「え、すいません。ぼーっとしてしまって、何ですか」
いけない、お客様に話しかけられて、聞いていないなんて、バーテン失格だ。
「いや、普段はもっとお客様いらっしゃいますよ。でも、まぁ、こんな日もあります」
どうやら、他のお客がいないので、不審に思ったらしい。
そりゃそうだろう、僕だってこの時間に客が1人もいない店は、避けるような気がする。
「いえ、本当にたまですよ、こんな日は。この前こんなだったのは、去年の7月15日ですから」
そう、7月15日、後1ヶ月もすれば、1年たつんだなぁ。
「えっ何ですか、良く覚えているなぁですか。忘れようとしても、忘れられない日なんですよ」
あ、注文を取らなきゃいけないな。
ふむ、バドワイザーか、楽でよいや。
「何が、忘れられないのかって、いえ、その日も遅くなってから、お客様が見えたんですよ。ただ、すごく変わったお客様で」
ありゃりゃ、すぐに一本開けちゃった。
お代わりですか、いくらビールだからって、こんなにすぐに顔赤くして良いのかな。
ええ、ええ、出しますとも、商売ですからね。
「そりゃ、変わったお客はたくさんいらっしゃいますよ。でも、あの日のお客は、特別変わっていたんです」
また、お代わりですか。
良いですけどね、潰れないで下さいよ。
「え、その日のことを話すんですか」
話すのは、かまわないけれど、どう話せばよいのだろうか。
えーと、あの日は。
そう、あの日は、とても蒸し暑い日でした・・・・・・
吹き込んできた、蒸し暑い空気に僕は顔を上げた。
ドアを見るとちょうど、閉じるところだった。
ふー、どうやら迷ったあげく、入るのを止めたお客がいたようだ。
どういう訳か、今日はお客がまだ一人もいない。
こんなに、蒸し暑いのだから、冷たいビールでも飲もうというお客がいても良いだろうに。
そんなことを考えながら、磨いていたグラスに目を移そうとしたとき、視界のすみを白い影が横切った。
あれっと思い、店の中を見渡す。
しかし、目に入ってくるのは、見慣れた店内だけだ。
明るすぎもせず、暗すぎもしない、ほのかな明かり。
そして、客の吐き出した夢にくすんだ壁が、明かりが生み出す柔らかな陰影に彩られている。
いい店だよなぁ、そう、しみじみと思っていると、何か白い物が落ちているのを見つけた。
変だな、さっきまで確かに何もなかったのに、そう思いながら近づき、拾い上げる。
それは、白い鳥の羽だった。
振ってみても、回してみても、光にすかしてみても、やっぱり鳥の羽だった。
何故こんな物が有るのか判らず、首を傾げていると、又、視界のすみを白い影が横切った。
今度こそ、きちんと見てやろうと、首を振り白い影を追いかける。
右に、左に、体ごと、激しく首を振り体を回す。
ふう、ふう、ふう、しばらくすると、さすがに息切れしてくる。
五分ほどもそうしていただろうか、しかし結局、白い影は視界のすみを逃げ回るだけだった。
げ、幻覚か、やっぱ働き過ぎかなぁ、もうちょっと睡眠時間増やした方がよいかも。
首の振りすぎでクラクラする頭を抱え、そんなことを思いながら、カウンターの中に戻る。
目をつぶり、首を揉んでいると、
「ジントニック一杯」
と言う声が聞こえた。
ぱっと目を開けると、もうお馴染みになった白い影が視界のすみを逃げていく。
わざと目を背け、恐る恐る、
「はい、ジントニックですね」
と声をかけた。
すると「そう、つまみは適当に」
と言う答えが返ってきた。
ほとんど機械的に、酒とつまみを用意し、カウンターに置く。
すると、僕の視界の外で、酒を飲んでいる気配が伝わってくる。
「あのーお客さん、どうして僕が見ようとすると、逃げるんですか?」
そう、僕が聞くと、
「しょうがないじゃん。もって生まれた性質なんだから」
と言う、よく分からない答えが返ってきた。
どういう意味だろうと考えていると、
「あ、お父さんみっけー」
と言う声と共に、蒸し暑い空気が吹き込んできた。
こんどは、子供か、そう思いドアの方を見ると、そこにいたのは、ちぎれんばかりにしっぽを振る犬だった。
何故、犬が?そう思う間もなく、犬はものすごいスピードで駆け寄ってくる。
次の瞬間、
「クキェーーーーーーーーーーーーーー」
ものすごい、怪鳥の叫びが、店を満たした。
そして、私は見た!!
犬に片方の羽を捕まれた鶏が、逃げようともがいている姿を。
犬に捕まれていない方の羽には、私が出したグラスが握られている。
何故、犬と鶏が人間の言葉でしゃべれる?
何故、犬と鶏がバーに来る?
その時の私の頭は、無数の?に埋め尽くされていた。
「俺は、お前のお父さんじゃない」
しかし、そんな私の?をよそに、鶏は犬に向かって叫んでいる。
「えーなんでーお父さんじゃん。捨て子はいけないよー」
鶏の叫びに対し、犬は本当に変なことを言われたというような様子で反論する。
「俺は、子供を持った覚えはない」
ムキになって言う鶏に対し、
「お父さんっ、男がそれを言うのは卑怯だよ!!」
と犬が答えている。
「えーい、もういいから羽を離せ」
「ダメだよ。お父さん逃げようとするもん」
この頃になると、私も?を突き抜け、確かに鶏は犬の親にはなれないよな、と言う次元で動いていた。
要するに、思考停止をしていたのだと思う。
しばらく鶏と犬の注文に機械的に応ていると、またドアが開いた気配がした。
濁った目をドアの方に向けると、そこには・・・猫がいた。
はっ、もう驚くものか、何でも来い、その時の私はそんな気持ちだった。
「もう、逃げるなんてダメにゃん。犬もずるいよ、お父さんの独り占めはー」
猫はそう言いながら、鶏に近づいていく。
そして、犬がつかんでいない方の羽をつかんで、椅子に腰掛けた。
「えーと、あたしはねぇ」
猫が注文しようとすると、
「ダメだよ、お前は酒飲むな」
と犬が押しとどめ、隣で鶏もうなずいている。
「いいじゃない、少しだけだから。お父さんもいるし」
そう言って、猫が注文すると、
「しょうがないなぁ、潰れても知らないからな」
と犬が答えた、間に挟まれた鶏は、いじけたような口調で、
「だから、お父さんじゃないのに」
と呟いている。
どういう訳か、犬と猫が鶏を捕まえて、鶏を食べるのではなく、宴会が始まる。
だからこの世は面白い。
は、あは、は、は、は、は、あは、は、あは、は、は・・・
もう、この後は時間の感覚も確かじゃなくなっていました。
ぼんやりした記憶の中で、覚えていることは、いつの間にか、鶏の首に海月が巻き付いていたことです。
鶏の頭の上に、本体って言うんですかね、体の部分が浮いていて、首に、触手って言うか手が巻き付いているんですよ。
それを見たら、これ、この世の風景じゃないやと思いましてね、気を失っちゃったんです。
ちょうど12時でした。
いえ、ほら、そこにある時計がちょうど12時で、鳴ったんですよ。
夢だろうって?
夢じゃないですよ、朝起きたら、お金がカウンターに乗っていましたから。
むしられたような、白い鶏の羽もたくさん落ちていましたし。
そう言えば、そろそろ12時になりますねぇ。
あれお客さん、そんな着ぐるみ、何処から取り出したんですか?
やだなぁ、面白くないですよ、そんなギャグ、あれでしょ、酔ってなるってやつでしょ。
確かに良くできてますけどね。
へー牙まで付いているんですか、本当に良くできてますね、まるで本物みたいですよ。
あ、あのお客さん、その唸るの止めてもらえませんか。
お客さん、だから、あ、あのお客さん、いや、あの、お客さん、だからねぇ、お客さんってば・・・
「ギャーーーーーーーーーーーーー」
8時のニュースをお伝えします。
昨夜12時頃、東京都豊島区にある、バーミステリで従業員の和泉さんが倒れているのが発見されました。
幸い命に別状はありませんでしたが、和泉さんは全治3ヶ月の重傷です。
警察が事情を聞いたところ、和泉さんは虎に襲われたと証言しているそうです。
警察では、訓練された犬を使った強盗と見ていますが、一応、近所で、ペットとして虎を飼っていた人物がいないか捜索を続けると共に、付近の住民に警戒を呼びかけています。
さて、次のニュースです・・・・・・
バーミステリ・動物編 終わり
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