コイツと初めて出会ったのはいつの日だったか。それももう、覚えてはいない。
覚えているのはそれが、すっげー遠い、遠い昔だった、って事。
あの頃はまだ、コイツの背が俺よりちょっと大きくて、俺よりちょっと、目線が上にあった。
それが悔しくて悔しくて、よくコイツに当たったっけ。
ま、最も。
今となっちゃー、笑い話だよな、なあ?ランディ?
オメーはいつも、困ったように苦笑いして言ったよな。
たったの4センチ違うだけじゃないか。ってさ。
たった4センチの差がどんだけのもんだったか、今の俺にはちっと思い出せねーんだけど、それがすっげー悔しかったって事だけは確かなんだぜ?
だけど気づいたら、俺はオメーを追い抜いちまってた。
いつも上にあった目線が、随分と下に見えた。
それは、ある日突然だったよな。
寝て、起きて、また寝て、起きて、そしたらオメーの瞳が下にあった。
一晩に何センチも背が伸びる、ってやつ。ずっと眉唾だと思ってたけどよ。本当にあるんだなって感心する反面、俺の中で何かがスーッて変わってた。
なんだかオメーに反発するのもバカらしー気がしてよ。
オメーが妙に小さく見えたってゆーか。
何もかもが、バカらしくなっちまった。
今まで何にこだわってたんだか、それもわかんなくなっちまったんだ。
たった4センチ。
俺も初めて、そう思ったんだよな。
あの時、オメーと二人で派遣されるなんて冗談じゃねえ、って思ったんだ。
誤解すんなよな。別にオメーが嫌だったとか、そんな訳じゃねーんだ。
ただ俺は、俺の力を試したかっただけだったんだ。
そして、俺の力を認めて欲しかった。
自分1人の力でどこまでできるのか、それを知りたかった。
知っておかなきゃいけねーって思ったんだ。
男にはそーいう時がある。わかるだろ?
だからこっそり先に聖地を抜け出して、あの惑星に向かったんだ。
パーッと任務をこなして、サーッと帰るつもりだったんだ。
あんなヘマをやらかすなんて、計算にはなかった。そうだろ?
まさかあんなでっけえ岩が爆風に飛ばされてくるなんて、誰が想像できるんだ?
悪い事は重なるもんで、俺の勝手な行動のせいで、ポッドのエネルギーは残り少なくなっていた。
冷静に考えてみると、バカにでも解る事だよな。
俺がまずここへ来て、オメーが続き、つまり往復分のエネルギーしか詰められていなかったあのポッドのタンクは、既に空に近かったって事だもんな。
二人を載せて時空を移動する力は、あのポッドには残っていなかったんだ。
俺はそれに、全く気づかなかった。
オメーだけがそれに、気づいていた。
ちぇっ、いつもと立場が全く逆転してたよな。
足の効かない俺をポッドに押し込めて笑った、オメーの笑顔が忘れられねーんだ。
どうして、俺の勝手な行動を怒らなかったんだ?
いつものように、責めてくれればよかったんだ。
これじゃあまるで、俺が悪者みてーじゃねーか。
ポッドのシェルター越しに伝わってきたあの爆音を、振動を、俺は一生忘れられねーと思う。
そしてあの瞬間の、オメーの笑顔を。
たった4センチの重みを、俺はそのサイアクな状況で初めて知ったんだ。
4センチ分、オメーは俺よりも大人だった、って事だよな。
4センチ、俺が大きくなった後でさえ。
俺は何度も夢を見て、その度にオメーはあの笑顔で言うんだ。
サヨナラ。って。
なあ、これが最後だなんて言うなよな。
お前はもう、大丈夫だろ?なんて、そんなのオメーのエゴなんだよ。
正直に言うから、笑うなよ?
俺にはまだまだ、オメーが必要だし、オメーにも俺が必要だろ?
そしてまた今日も、俺は夢に見る。
マルセルと俺達と、一緒に飛び跳ねて笑ってた頃を。
コイツの背が俺よりちょっと大きくて、俺よりちょっと、目線が上にあった頃を。
その頃はよくコイツに当たったけど、もう当たる事もできねーんだな。
コイツは相変わらず、返事をしない。
起きてるんだか寝てるんだかわかんねー、規則的な吐息をたてている。
だけど、俺には解ってるんだ。すぐだ。もうすぐ再び出会う事ができる。
だってほら、今にも目を醒ましそうじゃねーか。
もっともっと、話す事がたくさんあるだろ、なあ?ランディ?