「よーよー、マルセル、あのバカ、知らねえ?」
「あれぇ、ゼフェル。一緒じゃなかったの?僕、一緒にいると思ってたから、今、2人の事探してたんだよ?」
庭園で日光浴をしていたマルセルが、ゼフェルの問いにさらりと答えた時、2人の背後から軽い口調の聞き慣れた声がした。
「ひっどーい、『あのバカ』で通じちゃうなんて・・・マルセルもそう思ってるってコトよネ。」
「オ、オリヴィエ様・・・ぼ、僕はそんなつもりじゃ・・・」
必死になって弁解しようとるすマルセルを見て、オリヴィエがケラケラと笑った。
「わかってるって。本当にもう、アンタってからかい甲斐のあるコだねえ。」
「よー、オリヴィエ。オメー、知らねーか?あの熱血青春大バカ野郎。」
ゼフェルの問いに、オリヴィエが肩を竦めてみせた。
「さあね。アタシは知らないなあ。でも、あの万年お気楽坊やのコトなら、オスカーが知ってるんじゃなあい?金魚のフンだからさ。あ、フンっていうより、太郎さんとお猿の次郎君って言った方が当ってるかもね。」
「・・・オリヴィエ様だって、結構酷い事言ってるくせに・・・」
マルセルが呟いた瞬間
「言ってくれるな!金魚のフンって程四六時中、一緒にいる訳じゃあ、ないんだぜ?」
背後から声がして、三人はギョッとしたように振り返る。
「あ〜ら、噂をすれば、オスカーじゃないの。今日も男前ねー。ほれぼれしちゃうわァ。」
「気色の悪い世辞は辞めろ、極楽鳥。歯が浮くぜ。」
「なによ、せっかく人が誉めてやったのに、バカ!」
「貴様に誉められたところで、これっぽっちも嬉しくなどない。」
いつものように戯れ合いを始めた2人を見て溜息をつきながら、ゼフェルが割って入った。
「んで、どうなんだよ、オッサン。結局、知らねーのかよ?あいつの居場所。」
「んなッ!こらっ、ゼフェル!だッ、誰がオッサンだッ!」
「オメーだよ、オメー。俺らから見れば、十二分にオッサンだってーの!な?マルセル?」
「・・・僕に振られても・・・」
マルセルが困ったように曖昧な笑みをその顔に浮かべ、オスカーは一つ咳払いをした。
「と、とにかく、だ。俺もあの坊やの事を探している所なんだ。」
「あら、アンタと一緒にいないとなると・・・またジュリアスのパシリでもしてんのかしら。」
「・・・そのジュリアス様より、アイツを探してくるように言われたんだ。」
「ふーん・・・」
オリヴィエが気のなさそうな返事をした時、マルセルが声を上げた。
「あっ、アンジェリークだ。あれ、リュミエール様と一緒みたい・・・。」
その声にいち早く気づいたリュミエールが、涼しい微笑みを浮かべながら、4人の方へ歩み寄ってきた。
「こーんにちはー。リュミちゃん。今日はアンジェリークとデートかな?」
オリヴィエがひらひらとアンジェリークに向かって手を振ってみせ、彼女がピョコンとおじぎをした。
「こんにちは、みなさん。お揃いで、日光浴ですか?」
「いやーね、偶然会っただけよ。何が悲しくて、こんなムサ苦しい男4人で日光浴なんてしなくちゃならない訳?」
心底嫌そうな顔で答えるオリヴィエを見て、リュミエールがフフ、と笑った。
「なー、ノー天気のバカ野郎、見なかったか?」
「ランディの事ですか?」
ゼフェルの言葉にリュミエールが即答し、オスカー、オリヴィエ、マルセルが顔を見合わせて笑いだした。
「・・・どうかなさいましたか?」
リュミエールが不思議そうな顔で問うと、おかしくて仕方ないと言った風に、オリヴィエが答えた。
「やっぱ、リュミちゃんでも『ノー天気のバカ野郎』で通じちゃうのねー。」
あっ、という風にリュミエールが口を押さえた。
「気にする事はないよ。アタシ達、全員そうだったもんね。あのバカに、熱血青春大バカ野郎に、万年お気楽坊やに、オスカーの金魚のフン、そして、ノー天気のバカ野郎。・・・ったく、おかしいったら。」
リュミエールが少し顔を赤くしながら、一つ、咳払いをした。
「・・・ともかく、ランディなら、先程ルヴァ様と一緒に、森の湖の方に向かうのを見かけましたが。」
「森の湖ィ!?」
全員絶句し、しばらくその場は凍り付いたようになった。