どんなに聞こえないフリをしていても、その声だけははっきりと届く。
 もともと大きな声だし。
 いつだってはっきりと呼ぶし。


 どうしたって、聞こえないふりなど出来るはずがないのに。


「はーなーい!」

「なぁ!はーなーいってば!」

「花井ー!」

「あーずーさー!」

「そっちで呼ぶな!」


 結局無視できない。
 くそ!
 ただでさえ、どうしてかわかりたくもない理由で、呼ばれただけで微妙な気持ちになるのに。


 気のせいだと思いたい。
 気にしすぎなんだと思いたい。



「花井、なんかない?俺ハラへっちゃってさー」
「なんか買えば?」
「なんかちょうだい?」
「持ってねぇよ」
「えー!」
「えー!って、持ってないとおかしいみたいじゃねぇか?」
「おう!花井は、俺のためになんか持っててよ」
「持っててよって…」
「あー…ハラ減った〜昼メシぜんぜんたんないしな〜」
「って、言いっぱなしかよ…」


 きっと届いているんだろう。
 本当は、認められたいはずの想いとは違う、その気持ちが。



 ホント、処置なし。