ここから先は、パラレル設定の話があります。
すいません、続きました。終わりません。
某ステキサイトさまの日記で書かれていた、芸能人榛名とマネジの加具山さんのネタで妄想しております。
もうほんと、色々な方々に申し訳ない気持ちでいっぱいです…

すいませんすいませんすいません。



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榛名元希は、トップアイドルだ。
某モデル誌のオーディションに合格してから、あっという間にスターダムにのし上がった。


勢いがあるが、敵も多い。


それは、本人に問題があると周囲も思ってはいたが、それが榛名の持ち味だったので、あえていさめはしなかった。


そういうキャラで受けている間はいいけど、そのあとどうすんだよ。


その中で、いつも反発していたのは、榛名のマネージャーの加具山だった。


たしかに、我がままで傍若無人でやりたい放題キャラが受けているうちはいい。そういう仕事が多いうちはいい。 けれど、いつまでもそういうことが出来るわけでもないだろう。
まぁ、そういう仕事を取れるようにするのが、マネージャーの仕事なのだから、取れなくなったとするなら、それは榛名のせいではなく、加具山の腕が悪いということになるのだろう。


割りに合わないよな。


加具山は、榛名より一つ年上なだけだった。
別に芸能人になりたいという夢があったわけではない。けれど、明るい場所で騒がれている年の近い青年と、自分との差をふと思う。
成功すること、認められること。
そういうものが、目に見える形で存在する場所に住む人物。
日の当たらない、誰が褒めてくれるわけでもない場所で、ただ責任だけがのしかかる自分。


それは、時折じわりと加具山を追い詰める。


仕事が嫌な訳ではないのだろう。嫌だったらいつでもやめている。
この不景気に、親戚の芸能プロダクションにコネ入社しただけだったけれど、いままで続けていたのは仕事が楽しかったこともあった。


そもそも加具山は、榛名のことはそう嫌いでもない。
たしかに我がままだし自分勝手だけれど、一応健康オタクらしく、体調管理には気を配っているし(そのかわり、片付けができないのは困りものだったが)体育会系なのか、一つ年上なだけのマネージャーの加具山には敬語なのだ。
自惚れていいなら、懐かれているように感じていた。


だからこそ、余計。
時折襲う、そのじわりと重たい気持ちが、加具山にとって不快以外のなにものでもない。


榛名が悪いわけではないのだから。



どうしてこんな劣等感を抱かなければならないのだろう。



「…さん……加具山さんってば!」
「え?」
「人の話、聴いてんすか。アンタ」
「悪い…ええと、なんだっけ」
「だーから、こないだ言ってたあの仕事、ちゃんと断ってくれたんですかって」
「…断ってない」
「なんで!」
「なんでもなにも…うちのタレントはあそこのCMにいつも使ってもらってるんだから。義理とか大人の事情とか…色々あるんだよ」
「は?」
「だから、お前が嫌だってゴネてもどうにもなんないんだって」
「俺、あそこの仕事絶対しませんよ」
「…子供じゃあるまいし、我侭言うな。もう契約書だって作ってるんだから、そういうわけにもいかないんだよ。だいたい、お前が仕事してくれたら、これからだって仕事まわってくるかもしれないだろ。うちの事務所は、お前だけしかいないんじゃねぇんだ。今までお前の我侭に融通してるんだから、今回くらい譲っておけよ」
「俺は、自分がしたくない仕事はしないって言ってんです。それに、なんだよ。結局それって、他の奴らのために、我慢しろってことだろうが」


加具山は、開きかけた口を閉じた。
にらみつけるようにしていた視線を外す。
ごねる榛名に、いらいらして少し口調がきつくなっていた。いつもの我侭だ。
いつもなら、どうにか宥めて仕事をさせるか、榛名の希望を通すために事務所に掛け合うかするだけなのに。
突然、加具山はどうでもよくなった。
ぽっかりと、どこかに穴が開いてしまったように感じる。


「そうだな…」
「加具山さん?」


急に声を落とした加具山に、榛名が首をかしげる。


「やりたくない仕事なら、やらなきゃいいだろ…つーか、なんでお前、この世界入ったんだかわかんねぇよ。もう知らねぇよ、お前なんか。そんなに俺がとってきた仕事が気に入らないなら、自分で全部仕事入れろよ」
「加具山さ…」
「俺、辞めるわ」
「は?」
「これ、お前のスケジュール。事務所にでも電話して、確認しとけ。じゃあな」
「アンタ何言ってんだよ!」
「ウルセェ、触んな!うんざりだよ、お前なんか」
「…っ!」


加具山を掴もうと伸ばされた榛名の腕が、止まった。
普段なら見られないような、表情で榛名は加具山を見ていた。
けれど、それを加具山知らない。さっさと背を向けて、部屋を出て行こうとしていたからだ。


(そういや、なんで俺こいつと同じマンションに住んでんだっけか…)


後で荷物取りにくるの面倒だなと思いながら、ドアを締めた加具山は、そのドアを思いっきりけりつけた。


(秋丸にでも、取りに行ってもらうか)


後輩マネージャーの顔を思い出しながら、加具山はそのまま隣の部屋のドアを開けた。きっと今の時間なら、いるはずだ。


「秋丸、今日泊めてくれ」


いきなりずかずかと入ってきた、先輩マネージャーの加具山の姿に、秋丸はびっくりして数度まばたきした後に、ずり落ちた眼鏡を押し上げて、苦笑した。


「榛名、またなんかしたんですか?」
「…あいつはいつもと同じだろ」
「加具山さん?」
「俺、あいつのマネージャーやめるから」
「はぁっ?なんでそんな話に」
「やる気無くなった」
「いや、ちょっと…加具山さん…」
「大河にはちゃんと、後で言うからさ…そういえば、お前そろそろ仕事じゃないのか。早く行かないと遅刻するぞ」
「え?ええ、それはそうなんですけど…」
「じゃあな、気をつけていけよ」
「うわ〜…わかりました、帰ったら話聞きますから、はやまんないでくださいよ!」


本当に時間が押していたので、秋丸は慌てて部屋を飛び出すようにして出て行った。
その姿をぼんやり見ながら、加具山は呟く。


「はやまんなって…別に死ぬわけでもあるまいし……」


勝手知ったる他人の家、加具山はドアの鍵を閉めると、リビングのソファーに体を沈めた。


「だって、俺じゃなくったっていいじゃねぇかよ。つーか、いっそ俺じゃないほうがマシだって…その方が、思うとおりの仕事が取ってやれるだろうし」


半分以上八つ当たりだと、加具山は思ってはいた。
榛名が悪いのではない。



我侭なのはわかっているのだから、それをうまくさばけない自分が良くないのだ。



「実家帰ろうかな…って、どこの一人暮らしOLだよ、俺」




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