いつか君が知ることがあったとしても……
 君は笑ってくれるだろうか…?




 僕の日常は、娯楽などとは無縁のものだった。監視と蔑視に常にさらされ、自由など考える事さえ許されなかった。
 僕に出来た事は、義父の元で召喚術を学ぶ事だけ。
 それも仕方のない事だ。
 そうされるべき理由が、僕という存在そのものなのだから。
「ネスティ…お前に話しておかねばばらぬ事がある……」
 父であり師匠でもあるライル師範がそう切り出した時、すでに僕には予感があったのかもしれない。
 告げられた瞬間だけ、まるで心が冷えていくような感覚があっただけで、その後がただ機械的に、了承した旨を伝えたのだ。
 それは確かに、ここに在る。
 どれだけ古い記録であろうと、過去の罪だと慰められようと、僕の中には確かに色あせる事なく存在している。
 忘れる事など叶わない。
 望む事すら許されない。
 いつだって目の前には、絶望しかないのだ。


「さぁ、トリス…挨拶をしなさい」
 促されて、少女はぎこちない笑顔を浮かべた。
 だが、その瞳はまるで、冷たいガラス球のようだった。どこも見てはいない瞳は、すべての世界を拒絶しているかのようだ。
 同じ世代の子供よりも小さな体。
 ここに連れてこられるまでに、無理に洗われたのだろう、艶のなくなった髪が、バサバサと乱れたままだ。適当に着せられた、サイズの合っていない服が、余計に少女を小さくみせた。
「トリス…です……よろしく…おねがい……します」
 この少女が、そうだというのだろうか?
 この頼りなげに存在する少女が?
 僕の記憶の中にありつづける「罪」だと?
「……僕はネスティ、君の兄弟子だ。わからない事があれば、僕に聞くようにしてくれれば問題ない」
 じわりと、奥に涌き出すものがある。
 それは、捨ててしまおうとさえ思っていたものを、蘇らせる。
 何故現れた?何故、僕の前に?



 ドイシテイマサラ……



 僕は君を憎むしかない。憎む事しか出来ない。
 それは僕の中から、消える事はないのだから。




 だから………




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