いつだって、そばにいたから・・・

 いつだって、そばにいられると思っていた・・・



「本当に大切なものなら、譲らずに護るんだ」と、言われた事があって、その時は言葉の意味しかわからなかったように気がする。

 本当に大切なものがなんなのかさえ、きっとわからなかったのかもしれなくて・・・

 知っていると思っていたのに。

 でも何も知らなかった。


 失う前に気づくのは難しいのかもしれない。
 大切なものだと思っているつもりでも、思っているだけなのかもしれない・・・



 ずっとそばにいたから・・・

 ずっとそばにいられると思っていた・・・


 口を拭ったまま、一生を終えてしまいたかった。

 流れる血の記憶が、刻まれている弾劾の歴史が、この身をいくら苛んでも、きっと耐えていける。耐えていかなければならない。

 この手であの笑顔を失う事を考えれば・・・


 ヒトとは違うこの肉と鋼の躯を、受け入れてもらえないのだろうと思う事にくらべれば・・・

 なにもかもに蓋をして、ただ口やかましい兄弟子としていられるかもしれない。

 少しばかりうっとおしがられたとしても、それでもこの心地よい居場所を失わずにすむのだから。

 一生胸の奥で、甘い痛みが消えないのかもしれないけれど・・・





 こんな事言うと、また何を言われるかわからないけれど。

 本当は、もうずっと一緒にいられないのなら、生きている意味なんかないとさえ思っていたの。

 言えないけれど・・・
 私らしくないから・・・ね。


 だから・・・
 一緒に行きたかったんだよ・・・?




 離れたくなんかなかった。

 もしもその瞳が、自分以外の何者かを、愛しげに見つめるようになったらと考えたら、いっそもう殺してしまいたいと思うほどに・・・


 それでも・・・

 身勝手だとは思うけれど・・・

 やっぱり生きていてほしいんだ。
 誰かに向けて、あの笑顔を向けてしまう日が、来てしまうかもしてないけれど。



 きっとあたしは、今まで失うものすらなかったから、失うという本当の悲しみなんかわかってなかったんだ。

 見えているのに見えなくなっているような、聞こえているのに聞こえなくなってしまったような・・・

 五感さえ、まともに機能しない。


 愛しいという感情さえ、まるでどこかにいってしまったんじゃないかと思ったから・・・

 だって、いなくなるなんて思わなかった。
 ずっと一緒だと信じていた。
 今までと同じように・・・




 目が覚めて君がいて・・・

 何故だろう。本気で驚いた。
 君が僕より先に起きているから。どうやら僕の脳は、目覚めたばかりで混乱していたらしい。

 記憶の中よりも、少しだけ大人びた君を抱きしめる。愛しいという気持ちが、心の中にある器を溢れ出してしまっているほど、どれだけ抱き締めても満ち足りたような気持ちがしないのには、正直自分でも驚くばかりで・・・





 待っていたんじゃなくて・・・
 本当は動けなかっただけ。


 幸せだったのだと気づいて、ずっと甘やかされて護られていたのだと気づいて、自分がどれほどあの人で心を一杯にしていたのか自覚して・・・
 もう抱き締めてくれる腕も、叱ってくれる声もないのだと思いしらされて・・・


 それでも最後まで守られた命を、捨てる事など出来ないのだと思ったら、もう足は動かなかった。

 約束の事なんかすっかり忘れちゃってたよ。


 でももういいよね。

 こうしてそばにいられるから・・・




 たがいにかけることのないパズルのピースのように。





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