戦闘終了後、リューグの視線の先にいる人物が、以前とは違っている事にミニスは気付いた。
気付いてから、できるだけ注意して見ていたのだが、最近はその人物を視界に納めた後、とても不機嫌そうな(もともと不機嫌そうなのだけれど)表情で舌打ちする姿まで目撃するようになった。
となれば、もうそれは疑いようもない事実を、ミニスの中に育んだ。
(これは、やっぱり、きっと・・・そういう事なのよねっ!)
最初はほんの、女の子たちの茶飲み話しを獲得しちゃったぐらいの、軽い気持ちだったのだが、なんとなく、こっそりからかいの対象にすべきではないような微妙な問題をはらんでいるようにも思えて、ミニスの口は貝になった。
気づいている人間は、他にもいて、ひょっとするとミニスの知らない所で何やら話が進んでいるのかもしれない。
それはちょっと、ミニスとしては仕方ないような気持ちと、軽い阻害感も感じる。それでも、ミニスがしゃしゃり出ていけるものでもない事は、やはり本人が一番自覚していたので、話たくてうずうずとしていた気持ちは、じょじょに萎んでいくのだった。
(・・・どうにかなっちゃうのかしら?)
もどかしいと、きっと周囲の方が思うのだろう。
ミニスは、きゅっと胸の前で手を合わせた。
ほんのり暖かく、じんわりと甘い気持ち。
瞳を閉じたそこに、柔らかく微笑む人。
「そろそろ、手合わせ終わってる頃かな?」
会いたいと思う時に会えて、気持ちを伝えられる程近くにいられるのは、きっと幸せなはずなのに、うまくいかない事もある。
再開発区。
そこでいつも二人は手合わせしていた。
軽く走ってきたミニスは、だがそこに一人しか姿を見つけられなかった。その一人も、少し考えこんでいる様子で、ミニスは困惑した。
「・・・どうしたの、ロッカ」
近づいてきたミニスに気づいていなかったのか、ロッカは驚いたようにミニスに視線を向けた。だが、すぐにいつものように穏やかに笑ってみせた。
「何でもない・・・いや、ちょっと・・・どうしたんだろうって思う事があって」
何でもないと言おうとしていたのを、急に撤回したのは、ミニスが頬を膨らませて言外に「はぐらかすのは許さない」と言っていたからだろう。
ミニスは、用意していた2枚の布をロッカに手渡した。本当は二人分用意していたそれは、冷たい井戸水で濡らしたものと乾いたもので、運動した後ではさぞかし気持ちのいいものだったろう。
有り難うと言ってロッカは受け取ると、先刻の言葉に続けた。
「どうも今日は、リューグの奴が不機嫌でね」
「リューグの不機嫌は、いつもでしょう?ケンカでもしたの?」
「それなら、不思議に思ったりしないよ。なんとなく、八つ当たりの相手をさせられたような気分なんだ」
「やつあたり〜?」
「何があったかなんて、聞いても言わないだろうから、別に聞きはしなかったんだけど・・・」
ミニスは、軽く考えこむように首を傾げた。
「何もなかったからかなぁ・・・」
「え?」
「ううん、なんでもないよ」
「何か知ってるのかい?」
「知ってるっていうか・・・トリスの事じゃないかって思うの」
「トリスさん・・・?」
「リューグ、多分トリスのこと・・・」
「リューグが?・・・ああ、まぁ・・・そうだね・・・そうかもしれない」
何となく自分の中で納得したのか、ロッカはうんうんと頷いた。
「でもね、トリスってば二言目には、ネスティネスティでしょ?ネスティだって、何かあればトリスだしね。それは、ほらきっとしょうがないって私たちは思うでしょ?ほんの少しだけど、二人がどうやって生きてきたのかって、知ったわけだし」
でも、とミニスは続ける。
あの二人が、それ以上の関係を望んでいないのかどうか、外からは解らないから苛々するんじゃないか。
諦めてしまうには、はっきりしてほしい。
でも・・・もしも・・・?
「なんてね、ちょっと思ったんだけど・・・案外外れかもしれないよね。やっぱり、リューグの気持ちはリューグにしかわからないもの」
えへへ、と笑ったミニスの頭を、そっとロッカは撫でた。恐らくはその子供扱いした仕草を、ミニスは好きではない事を知っていて。
「・・・ミニスも不安だったかい?」
「え?」
「ごめんよ・・・言われた事あるんだけど、なかなか直らないみたいで。この癖と一緒でね」
ミニスの頭を撫でていた手を、ロッカは苦笑しながらどけた。
「案外、気がまわらないって・・・」
「そんな事もないと思うけど・・・気づいてくれたし」
「いやもう、さすがにこれで気づかないのは・・・」
「あはは。あ、嫌味とかそういうんじゃなかったからね?」
「うん・・・でも、大切なのはわかってくれるよね」
「大丈夫、わかるよ。私にもあるもの、大事な事」
「ただ、こうやって話あえたりできないのは・・・少し辛いのかもしれない」
さぁ戻ろうと、ロッカがミニスを促した。
ミニスは、こくりと頷いて、ロッカの後をついて歩きだした。
大事な事を、秤にかけて比べる事などできないことは、きっと誰だってわかっているのに、それでも時々理不尽に思う事もある。
省みて、それが鏡に映った自分の姿でも。
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ロカミニ視点の、リュトリ・・・というか、なんかこれではリューグがあんまりだ(涙)格好悪いよ。ごめん、リューグ・・・
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