他に行き場がない事くらい、わかってた。
あたしに何ひとつ決める権利なんかないのも、本当はわかってた。
だから諦めて、ここにいる事にした。
でも、なりたいと思った事なんか、一度もなかった。
他に選ぶものなんかないのにね・・・
あいかわらず、講義に出ても頭に何も入ってこない。それどころか、どんどん眠くなってくるし。
眠ると、またうるさいのよねぇ。
でも眠いし・・・
うう、頑張れトリス!
「・・・どうやらトリスは眠そうじゃな。今日はここまでにしておこうか」
よし、何とか乗り切ったかな。でも、やっぱり頭に入ってないけど。だって、眠いし。
「ふぁりがとうごふぁいましふぁ〜」
「もう部屋に戻って休みなさい」
「ふにゅ・・・おやすみなさい・・」
「・・・おやすみ」
折角の師範の好意だったけど、なんか部屋まで持ちそうもないなぁ・・・でもさすがに、廊下で寝るわけにもいかないし・・・
ふらふらしてるのは、なんとなく自覚があるんだけど。だからといって、おぼつかない足元を、なんとかできる筈もなくて。マズイなと思った間もなく、あたしは意識を手放した。
あの日も、確か喧嘩したんだっけ。
喧嘩なんて可愛いもんじゃなかったけど。ただ黙って言葉を受けていたら、どうにかなりそうだったから、つい手が出て・・・相手によっては返りうちだったりして。
あんまり体も大きい方じゃなかったから。今もそんなに大きくないけど。
なんて言われたんだっけな。
どうせいつもと同じ事だろうけど。
あの日は五分五分だったのよね。相手も一人だったし。あっちこっち痛かったけど、相手が逃げだしたから、満足だった。
それからどうしたんだっけ?
ああ、そうだ。それでいつもの様に、ネスに叱られたんだった。それで・・・それで・・・
それで・・・?
なんだったかな?どうだったかな?
う〜ん、なんだかあったかくて、気持ちがいいような・・・
「ふみゅ・・・?」
ぼんやりした視界に、天井らしきものが映る。ええと、多分天井よね。そうそう、天井。しかもなんか見覚えあるし。
「・・・ようやくお目覚めかい?」
へ・・・?なんか、ネスっぽい声がするんだけど。あたし寝ぼけてる?まだ夢でも見てる?
「やれやれ、まったく寝起きはいつもこれだ・・・トリス?気分はどうだ?」
「・・・気分もなにも・・・なんであたしベッドの上に?」
あ、呆れてる。いやぁ、あの顔は本物ね。夢ならもっと、優しげに微笑むでしょうしね。
「廊下で寝こけていたんだよ、君は」
「うわぁぁぁ・・・」
やっぱり、あそこで意識が途絶えたのか。
「あ〜・・・じゃあ、ネスが運んでくれたの?悪かったわね」
「まったく、ふらふらと歩いているかと思えば、急に廊下に倒れこむんだからな・・・」
「ごめん、ごめん。なんだかすっごく眠くてね。あはは。重くなかった?」
そっか、ネスが運んでくれたのか。だからあんな夢も見たのかな。
「う〜ん、眠ったらすっきりしちゃった。・・・なんかおなかも空いてきたし」
「夕食なら、机の上だ。さっさと食べて、片付けてくれ」
「はいはい」
「それと・・・君が隠していた課題も、きちんとやっておくように」
う・・・見つかってるし〜
「はぁ〜い」
仕方なく、あたしはのそりとベッドの上に起き上がる。ごはん食べたら、寝ちゃうわよ。
「・・・ネス?」
何か言いたげなネスに、ちょっと警戒する。まだなにかあるのかなぁ。あの事かな・・・いや・・・う〜ん。
「なんでもない・・・」
ふいっと視線を逸らせると、ネスは部屋を出ていった。何だったのかな?
ああでも、最後の方があやふやだったけど、懐かしい夢見ちゃったわね。諦めなきゃいけないのに、諦めきれなかった頃の夢。
本当、なんだったかな。どうだったかな、あの後・・・
初めて会った瞬間、とっても懐かしくて。でも、そんなはずなくて。それから、胸が痛かった。
疎まれているのはわかったけど、側にいるのはあの人しかいなくて。すがったり頼ったりできないけど、でも信用はしてもいいなと思ってた。
誰の前でも泣かないって決めたのに、いつかあの人の側で大泣きしてた。いつの間にか、眠れないって言うと、一晩中一緒にいてくれた。
いつからだったかな・・・
いつか思い出せるかな・・・
>>>いつか見る事のできる風景(完)
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