背後で扉が閉まる。
目隠しを外されたばかりの瞳に、「炎」が飛び込んでくる。
中央の祭壇に灯され、一時も止まることなく姿を変える。
魅入られたように見つめていると、美しい少女が詠うように言葉を紡ぐ。
「人間の最高の幸福は『生まれてこないこと』」
「その次の幸福は『できるだけ早くこの世を去ること』」
苦痛。
悲哀。
恐怖。
絶望。
今までの生涯に起こった情景が津波のように襲いかかる。
「『世界』は『邪悪な造物主』によって作られた『不完全なもの』でしかなく、『高貴なる魂』は、『下賎なる肉体』という『牢獄』に閉じ込められ、『生』という『悪夢』に囚われている」
戦争。
貧困。
飢餓。
天災。
世界は多くの不正と悪徳に満ち、自然は余りにも無慈悲に振る舞う。
「目覚めよ!」
「悟れ!」
「『破滅こそ至福』。『消滅こそ救済』であるという『真理』を!」
涙が止めど無く流れ、体は歓喜に打ち震える。
「ようこそ『宴』へ。我々は貴方を歓迎します」
静かな落ち着いた声が響く。
それが「始まり」だった。
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