赤ずきんチャチャ 外伝1       - プリンセス・ジョアン -   「・・・アン!・・ジョアン!」   ぼぉっとしている私の頭の中に、さっきから誰かが私を呼ぶ声が聞こえてくる。  ふと、自分が眠ってしまっていたことに気がついた。   「ジョアンったらもぅ、またこんなところで寝てるんだから・・・4月だからっ  て油断してると、風邪引くぞ!」   声の主は隣のクラスのマリーちゃんだった。彼女の家系は人魚で、普段は私たち  と同じ人間の姿をしているが、脚が濡れると人魚に戻ってしまう。雨の日は苦労し  ているとか。   「あ・・・マリー。どうしたのそんな顔して?」   私はマリーがやけに慌てているのが不思議だった。マリーはいつも活発で落ち着  きのない女の子だけど、普段と様子が違うことは私にもわかった。   「相変わらずのんきね、ジョアン。あなたがいくら呼んでも起きないから、死ん  でるんじゃないかと思ったのよ!」   そういうとマリーは私の額をこつんと突いた。起きなかったのも無理はない、だ  ってここはこの学校で一番陽当たりがよくて気持ちいい小高い芝生の丘。そして私  の特等席。こんな気持ちのいい場所で眠くならない方がおかしい。なんて、自分で  自分を正当化してみる。   「死んでるわけないじゃない。こんなノーテンキおばかに死ぬような悩みなんて  ないわよ」   といきなり、しぃなちゃんが後ろから私にのしかかってきた。しぃなちゃんは私  の幼なじみでクラスメート、成績はクラスのトップ。私とは正反対の頭のいい子。   「しぃなったらひどいわ。私にだって悩みの一つくらいあるんだから」   私はそう言ってから、しまったと思った。この二人が聞き返さないことなんてま  ずないから。   「あんたに悩みなんてあるの?」   「あるんだったら私たちに聞かせなさいよ」   思った通り、二人は間髪入れずに聞き返してきた。さすがにこうなってしまって  は、私も逃げ切れないとあきらめた。   「いい、笑わないでよ? 最近ね、変な夢を見るの。私が先陣に立って、人々を  連れて魔族に戦いを挑んでいる夢なの。左腕には楯、左手には大きな弓矢、そして  右手には剣を持っていて・・・」   そこまで言った時、二人が変な目で私を見てるのに気づいた。   「魔族って、あの北の山にすんでいる魔族なの?」   「うん。見た目はあんな感じ。校舎よりも高い魔族がいて、そいつがすべての魔  族を仕切っているみたいだった。」   目を閉じると、その光景が浮かんでくる。私の頭の中では、その巨大な魔族を『  大魔王』と呼んでいた。大魔王は右手に持った大きな剣で私を執拗に襲ってきた。  思い出した途端、何か怖いものがこみ上げてきた。   「ジョアンのみる変な夢って、いつもなんか現実世界と空想世界が混ざってて、  嘘のような本当のようなよくわからないものばっかり」   しぃなちゃんは興味深そうに聞いてるのに対し、マリーは相変わらずまじめに聞  いてくれない。まぁ、それでもいいんだけどね。   「そうよ、だって魔族と私たち人間は取り決めを守ってお互い干渉しないように  暮らしているのよ、魔族と戦うなんてことは考えられないわ」   しぃなちゃんの返事に、私は自分の夢が本当だと思えなくなってきた。確かに人  間と魔族はそういう取り決めを交わしている。おそらくこのままなら戦うことなん  てないと思う。でも、夢の中にでてきた大魔王が本当にいるとすれば・・・・   「ねぇ二人とも、もしあの大魔王が実在したなら、人間界を征服しようとかたく  らんで攻めてくることも考えられない?」   私は大魔王の存在が夢の中だけとは思えなかった。夢の中でも大魔王はとてつも  ない存在感と威圧感を感じたから。   「大魔王なんて、ジョアンの夢の中だけよ。だいたいそんな大魔王がいたら、も  うとっくに攻めてきてるんじゃない?」   マリーの意見ももっともだった。征服を企む大魔王がいれば、もうとっくの昔に  この世界を攻めていた気がするから。   「そうね、そうだよね。私の見る夢なんてさ、きっと全部空想なんだよ。だって、  今まで一度も当たってないじゃん」   「そうそう、そうやってクイズの答えが違ったことが、過去に何回あったかしら  ね?」   「テストの予想だってみんなはずれてたもんね」   「もぉ、マリーもしぃなもいじわるなんだかららぁっっ!」   3人でふざけていると、チャイムが鳴って昼休みが終わりを告げた。   「あ、次の授業、ラーズ先生だよ、急がないとムチでビシバシされちゃうっ!」   こうして私たちは、午後の授業へと駆け出した。   後世、チャチャの時代に伝えられるように、ジョアン1世が魔族と戦うのは、こ  れより3年後のことである。この戦いでジョアン1世は、国王にその功績を認めら  れ、女王として国を統治することとなった。そして、「マジカルクイーン・ジョア  ン1世」として後世に語り継がれていくのである。「マジカルプリンセス」として  戦ったチャチャがこのジョアンの血を引く少女であることは、すでにみなさんもご  存じの通りである。  あとがき   というわけで、初めてのジョアン1世の作品です。私の世界では、チャチャの天  然ボケは先祖代々の遺伝だと考えているので、ジョアン1世も同じようにドジな女  の子として描かれています。本当はもっとドジなシーンとか出したかったのですが、  思わぬ方向へシリアス化してしまったので、これが限界でした。   途中にでてきたマリーちゃんとしぃなちゃんは、みなさますでに感付いてるとは  思いますが、それぞれマリンちゃんとしぃねちゃんの先祖です。マリーちゃんはマ  リンちゃんそのままという感じですが、しぃなちゃんの方は、さながらやっこちゃ  んとしぃねちゃんをあわせたような女の子です。女の子なのは単に私の趣味ですが、  初期の頃にしぃねちゃんを女の子だと思いこんでいた私の名残でもあります。(苦笑)   次回また何か書くときは、もっともっとチャチャらしいものとかを書いていけた  らいいな。と思っています。今回のはちょっとチャチャっぽくなかった気がします  ので・・・                                 月野玲亜子☆