音速の貴公子
高校時代、卒業旅行で当時仲の良かったメンバーでスキー旅行へ行きました。
時季は確か3月末。
場所は秋田県の田沢湖スキー場。
今回、俺は初めてスキーというモノを味わい、
非常に面白いものだという事を知る事ができ感動。
今まで日記の方でも言ったが、俺は運動という運動は苦手です。
苦手というより、全くと言って良い程運動音痴。
だが、そんな自分でも初めてスポーツの中で
唯一楽しいと思えるモノを見つけられて嬉しかった。
1日目は流石に初めてという事もあって、
「どうせ俺にはスポーツ全般で出来るものなど無い」と思い込んでいた。
だが、スキーは今までやった事のあるスポーツとは違いました。
ストックをとスキー板を使い、雪の上を滑降する訳だが、
中々バランス感覚が必要である。
自慢では無いが、唯一人並みに優れている能力として
平衡感覚という項目が存在する。
幼少時代からガードレールなどの上で鍛えたバランス感覚。
今になって役に立つ時が来るとは(汗
特技の(?)平衡感覚を活かし順調に俺は滑降をこなしていく。
全ては順調かと思われた...。
だが、常に落とし穴人生を送ってきた俺。
やはり悲劇は起こるのだった。
俺は
曲がる事が出来なかった
更に
止まる事も出来なかった
スキーで「曲がれない」は「止まらない」は問題大有りだ。
死の危険が大有りだ...。
下手にバランス感覚が良いようで、転びもせず、加速する事しか知らない俺。
俺はいつしかハ文字滑降をすっ飛ばし、直滑降が得意技となっていた。
俺の滑降速度はどれくらいヤバかったのか・・・?
実はスキー旅行のメンツの中にスキーの資格も持っている
ポイズン軍曹が居たのだが、
ポイズン軍曹ですら俺の直滑降最高速度には追いつけなかった程だ。
だが、最終的に速度が危険だと認知して止まろうとハ文字滑降をするのだが・・・
ハ文字滑降が出来ない為、俺は大きく横転する事となる。
すっ飛んだ後、スキー板やストックの残骸が辺りに散らばる。
スキー板はある程度衝撃があると安全装置が働いて勝手に足から外れ、
ストックは吹っ飛びに耐えられなくなった俺が手を放すから吹っ飛んで無くなる、と。
それを回収するのが困難で困難で仕方なかったな
何よりスキー場の雪ってサラサラタイプの雪なんですよ。
だから、転んで雪に突っ込むと本当に漫画のように頭だけ雪にめり込むっていうあの形になりましてね
周りから見たら笑える状態なんだろうけど実際俺は笑えなかったね
そして、俺のその直滑降の鬼としてメンバーの皆から
“音速スキーヤー”として称えられたのであった。
スキー旅行二日目
俺は皆と滑っていたが、突如コースアウトしてしまう。
俺 「あれ?ここは見た事無いな…」
全く見た事が無い風景。
1日目には通った事が無い所で帰り方はおろか今、自分が居る現在地すらも判らない。
路頭に迷っていると、20代中盤くらいの男性が通りかかった。
チャンスだ、これでロッジに帰れる
俺は心が躍った。
早速、ロッジへの帰り方を聞く為に話し掛ける俺。
男性 「ロッジだったら、このリフトに乗れば帰れるヨ(^^」と
↑の顔文字のような笑顔で親切に教えて下さいました。
俺 「ありがとうございます!」
これで、皆と合流出来ると安心して目の前のリフトに乗り込む。
ガタンガタン・・・
ガタン、ガタガタ・・・
俺 「(怖ぇな、このリフト・・)」
俺が乗っているリフトは、今まで乗ったリフトとは違う作りだった。
何より非常に古臭い作りだった。
リフトは所々赤く錆びており焦燥感を荒立たせた。
だが、スキー場だし、メンテナンスはしっかりと施されているだろうと俺は自分を説得し始めた。
暫くしてから、お目当てのロッジを発見した。
俺 「おっ!あれだ、あそこに行けば皆と合流出来るゾ。」
ガタンガタン…
俺 「・・・」
ガタンゴタン…
俺 「あのぉ・・」
ロッジがどんどん小さくなってゆくんですけど・・(血涙
リフトは一向に終着駅に着く気配が無い。
それどころか頂上を目指して上がり続けている。
まるで、俺の思いを無視しているかのように
ガタン・・ガタン・・
ようやく終着駅。
ちなみにロッジはもう見えない
これはどういう事なのだろうか・・
親切だったアノ男にハメられた…?
ファッキン野朗、秋田に現る!!
ひとしきり、さっきの男に対して愚痴を言い放った所で
周りには誰の姿も無い事に気付く。
今の現状を友人達に電話で伝える事にした。
幸い、(当時は)PHSはポケットにしまってある。
すぐさま電話。
Trrrrrrr・・
Trrrrrrrr・・・
Trrrrrrrrrrrrrrr・・・
出ねーし
気を取り直して二人目の友人に電話。
Trrrrrr・・
がちゃ。
友人「はい、もしもし。」
俺 「俺だ・・・」
友人「みっちー!一体、今何処にいるんだよー?」
とりあえず、現状を詳しく説明する。
俺 「・・・・・という事があって、今、山の頂上に居るんだ。」
友人 「マジ!?ちょっと皆!!
みっちー今、頂上に居るんだって!遭難だって!!」(大声で
ガヤ 「マジかよー!」
「遭難!?」
「ヤバいっしょ!!」
「あっはっは!!」
誰だ?今、笑ってた奴は
・・というか電話口から聞こえた話し声から察するに
メンバーのほとんど(全員では無いと思いたい)は
俺の命が危険に晒されている事が面白いらしいな
相当ショックだったね
俺が電話をした時、下界では温かい昼食を食べてたみたい
そう、俺が頂上にいた時間は確か昼だった。
俺は死と隣り合わせだというのに彼らは昼食食っていたんだよな・・
更に自分には関係無いからって笑い話に変える始末。
情け無用だな…。
マジで生きて帰れなかったら俺は化けて出たに違いない
生きてても恨むが(苦笑
結局、友人達は救助隊に頂上まで来てもらって助けてもらう事を薦めたが、
俺は反対した。
そこで救助隊を呼んだら俺のプライドが崩れ去る。
どういう事かというと・・・
簡単に想像が付く事だが帰ったトコで皆の笑い者。
誰が、救助隊を呼んでやるものか!
考えた末、俺は自身の力で下山する事を決意。
見下ろした感じどう見ても上級者用の角度としか言えない斜面
閲覧者の方の中には、
『スキー板を外して歩いて下山すれば良いのでは?』
と考える人も少なくないだろう。
無理だった
リフトの地点で気付くべきだったのかも知れないが、
人がほとんど利用しないコースで
深雪なので歩くと足がめり込んで歩く事が出来ない。
滑ってするしか方法が残されていないのである。
スキーを始めてたった1日。
果たして本当に無事下山する事が出来るのか?
自問自答する程、不安は増すばかり。
吹き抜ける風は冷たく、気温も随分と低い。
人気が無いせいか物寂しく気温がただでさえ低いのに
更に低下したと錯覚さえ起きた。
体力的にも精神的にもガタがきているようなのが自分で分かるのがイヤだった。
根拠は無いが自分は無事下山できる気がしてならなかった。
何故だかは分からないが、そんな気がした。
俺は2日目の地点でも曲がる事も止まる事も出来ない
*出来るようになったのは3日目からです。
もはや、下山する方法は一つしか考えられなかった。
<滑降してある程度加速したらわざと横転>
これしか無い。
確実に下山して一刻も早くこの状況を抜け出す俺が考えた最良の手段だ。
数時間後、何度転んだか分からない。
それくらい転んだ。
頭も数回打った気がする。
しかし俺の考えた<ある程度加速したらわざと横転>には欠点が存在しする。
結局のところ遅い事には変わりない。
一番の原因としてやはり深雪
全然、進めない。
俺が考えたモノと逆の『ある程度加速』をしないと深雪の上は滑る事が出来ない。
俺 「はぁ・・」
大きく溜息を付く俺。
心の底からの溜息だっただろう・・・
後ろからは無情にも過ぎ去っていくプロ並みのスキーヤー。
あの人に助けを求めれば俺の戦いも簡単に幕を閉じるのにな・・・
プライドは必要だが、時として邪魔に思える時がある。
特に俺の人生ではプライドのせいで失敗した事は数知れず。
俺 「(不器用な人間だな、俺は・・)」
いつまでも深雪に身を埋めている訳にもいかないのでスキー板を外し、斜面に出るまで歩く。
ズザッ・・ズザッ・・・
それにしても今回のスキー旅行。
俺 「苦い思い出になっちまったな・・」
今の想いをそのまま言葉に出した。
正に嫌な思い出としか言いようが無い思い出。
俺は自分を信じて滑った。
不思議と恐怖は無かった。
そう、気が付くと俺はこんな状況でもスキーを楽しもうとしているのだ。
サバイバルスキーを楽しんでいる自分がいるのである。
死の恐怖に直面して思考回路が狂ってしまったのかと思われるかも知れないが、
俺はある事に気付いた。
今までの人生に当てはめて考えて判ったのだが、
どうやら俺は「逆境に強い」っぽい
きっとそうだろう。
自分の身が危うくなればなるほど真の実力を発揮する事が出来る・・・
俺はいつしか直滑降をしていた。
もの凄いスピードが出ていたのも気にせず、それどころか気持ちよかった。
完全にスキーを楽しんでいたようだ。
かくしてロッジに辿り着く事が出来た、と。
ロッジに着いた時の友人の一人の言葉なんだと思いますか…?
友人 「『苦い思い出が出来た』」
俺 「!?」
そう、確実にそう言ったのです。
下山の途中に俺が呟いた一言でした。
どうやら、横転した拍子にPHSが勝手に友人に発信していたらしい
お陰で散々馬鹿にされましたヨ、私は。
でも、この時は別に苛立ちませんでしたな。
恐らく、自分の力のみで下山した事が誇らしかったのと
スキーが本当に楽しかったから何もかも帳消しに出来た
というのが理由でしょう。
生命の危機になってスキーの楽しみを知った俺。
今年もスキーへ行くんですが、今年もきっと大丈夫でしょう。
(というか、明日なんですケドね(^^;)
必ず生きて帰って来れる、そんな気がする。
ただ心配なのが・・・
今年のスキーのメンツ。
おなごが3人も居やがります
絶対一波乱起こるな。
ま、その時はテキスト化してこのコンテンツが増えるから良し、とするか(^^;
お話した通り次の年にもスキー旅行へ行ってきました。
感想をまとめたモノがこちらです。