HBTって何でしょうか?

 HBTとはHeterojunction Bipolar Transistorの略です。…と言われてもいまいちピンときませんね。まずは、トランジスタの簡単な歴史から説明していきます。点接触型トランジスタをご存知でしょうか。これは、Ge結晶に2本の金属針を立てて増幅器とする簡素な作りのトランジスタです。こうハッキリ言うのも何なのですが、ショボイです。しかし1947年当時、真空管が主流であった時代において、これを生み出したブラッテン(W.H.Brattain)とバーディーン(J.Bardeen)は素晴らしいですね。そもそも、トランジスタとは何の略なのでしょう?トランジスタとは「Transfer」と「Resister」の合成語であり、「真空管に変わるレジスタ」を意味します。翌年1948年には、皆さんご存知のあの方「ショックレー」さんがnpn型トランジスタに関する特許を出願しました。更に彼は、1949年に接合型トランジスタの理論を発表していたのでした。この接合型トランジスタは当時、主に軍事向けに生産されていました。何だか、時代を感じさせますね。以降、トランジスタに関する研究が急速に進み、接合型FET(Field Effect Transistor)や拡散接合型トランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)などが続々と登場し、現在に至るわけです。

 て、話は元に戻りますが、HBTは古いものではn-GaAs/p-Ge/n-Geといった構造を持つものも存在します。ここで、GaAsという物体Xが登場しました。コイツは一体何物なのでしょう。GaAsは化学式を見て分かるとおり、化合物です。更に、半導体としての性質も併せ持っているので、これを化合物半導体と呼びます。1952Siemens社のH.Welkerによって、GaAsなどに代表されるV−X族化合物が、SiGeのような半導体としての性質を持つことが明らかにされて以来、数多くの化合物について研究が行われてきました。化合物半導体としてGaAs、InP、InSbなど、それぞれの持っているエネルギーギャップやキャリアの移動度などの特徴を活かした用途の開発が進められましたが、こうした化合物半導体のうちで最も開発が進み、研究の活発なものはGaAsです。GaAsは「ガリウム・ヒ素」です。…って当たり前のことを言ってしまいましたが、「ヒ素」って聞いたことありませんか?某カレーライス事件で一躍注目を浴びた例の危険物質です。ちなみに、私達の研究室ではコレを扱っています。「GaAs食ってみる?」なんて、シャレでしか言えませんね。

 ういえば、HBTの説明を何もしてませんでした…。HBTとは、通常のホモ接合トランジスタとは異なり、エミッタ部分にワイドギャップの半導体材料を採用することにより、ベースからエミッタへの正孔の逆注入を防いでいます。これにより、エミッタ注入効率が上昇し、電流利得特性の向上を望むことができるわけです。HBT構造の歴史は、以外に古く、ショックレーが過去に提唱していたものです。研究が盛んに行われてきたものの中で、AlGaAs/GaAsヘテロ接合を利用したHBTがあります。しかし、Alを含んでいるため酸化しやすいといった、信頼性に関わる要素により、最近ではInGaPをエミッタとして採用したInGaP/GaAsヘテロ接合を有するHBTの研究が進められています。InGaPの利点は、GaAsとの選択エッチングが可能であると言うところにあります。それにより、エミッタ層の薄膜化が実現できるため、トランジスタの高周波特性の向上につながります。下の図は、HBTの一般的なバンド構造です。

HBTの基本的なバンド構造