届かぬ思い前編

 

工藤邸前

ピンポーン、

「新一!早く起きないと遅刻するわよ!」

蘭がいつものとおり新一を起こそうとすると、

「おお、蘭君か、新一ならもう出かけたようじゃぞ・・」

隣に住んでいる博士が庭先から声をかけてきた。

「あら、博士、おはようございます。そうなんですか・・新一はもう行っちゃたんですか・・」

「ああ、志保君が起こして上げてな。ついちょっと前だったかのう、二人で学校に行ったようじゃが・・」

「え!み、宮野さんがですか?」

いつも繰り返している日常の風景、それに段々と変化が起きつつあることを蘭は感じ始めていた。

 

学校

「おい、工藤!お前一体どういうことだよ!」

教室に着くなり俺は数人のクラスメートに囲まれ、質問攻めにあった。

「はあ?どういうことって何のことだよ?」

「とぼけんなよ!宮野さんのことに決まってるじゃねえか!何でお前が宮野さんと一緒に登校して来るんだよ!」

「そうだそうだ!お前は彼女がいるだろ、毛利さんと一緒に来ればいいじゃねえか、まさかお前二股でもかけるつもりか?」

「バーロ、バカなこと言ってんじゃねえよ!前に言ったろ、アイツは俺の家の隣に住んでいるんだ。

だから、たまたま一緒に登校して来ただけだよ・・」

「本当か、工藤?仲良く二人でしゃべっていたじゃないか?」

「な、仲良くって、そ、そんなんじゃねえよ・・」

「う〜ん、怪しいな・・」

「と、とにかく勘弁してくれよ・・なんであんなヤツと話してたぐらいで朝っぱらから責められなきゃならないんだ・・」

「お前、宮野さんに対してあんなヤツってのはないだろ!」

「そうだ、失礼だぞ、工藤!」

(おいおい、いい加減にしてくれよ・・)

さすがに俺はうんざりしてきた、その時蘭が教室に入ってきた。

「新一、おはよう、今日は早いのね・・」

「あ、ああ、おはよう・・」

(まずいな、さらに事態が複雑になりそうだ・・)

俺が思わず逃げ出したい気分になった時、運良く先生が入ってきたのでこれ以上の追求は免れることができた。

 

「おい、宮野・・」

俺は隣に座ってる宮野に話し掛けた、

「・・・」

澄ました顔で黒板を見つめている志保・・俺はもう一度声をかけた、

「おい、宮野・・」

「・・・」

相変わらずの態度に少し頭にきた俺は声を荒げた、

「おい、宮野っ!」

「・・・あら、朝からこんなヤツと話したくなかったんじゃないかしら?」

「ぐ・・聞いてたのか・・」

「それで、何の話かしら?」

「えーとだなあ、さっきの聞いてたなら話は早いや。頼むから、起こしに来るの止めてくれ、こんな話があいつらの耳に入ったら

何を言われるかわかったもんじゃない・・ま、どうせ蘭が起こしてくれるから遅刻の心配はないしな・・」

「・・・その前に自分で起きるという選択肢はないのかしら?」

「とにかくだな、これ以上妙な噂をたてられたくなかったらってことだよ。お前だって迷惑だろ!」

「あら、別に私はかまわないわよ・・」

「え゛!」

「だって、名探偵さんの困りきった表情が毎日見れるんだもの・・面白そうじゃない?」

「お前な〜、勘弁してくれよ・・」

「はいはい、わかったわよ、工藤君・・」

そう答える志保の表情はどこか寂しげであった。

 

昼休み

「工藤君、お昼どうするの?」

「俺は購買でパンでも買って食うけど・・」

「あら、彼女から手作り愛妻弁当とからもらえなかったのかしら?」

「なんだよ、愛妻弁当って?だいたい蘭だって忙しいだろ・・」

「あら、誰も毛利さんだなんて一言も言ってないけど・・」

「・・・んで、オメーはどうするんだよ?」

「私は・・」

新一と志保が話しているとクラスメートが割り込んできた。

「工藤、飯買いに行こうぜ!」

「ああ、そうだな・・じゃあな、宮野・・」

新一はクラスメートと一緒に教室から出て行った、クラスメートと楽しげにしゃべっている新一を

志保が見ていると突然横から声をかけられた。

「宮野さん、よかったら一緒に食べない?」

「あら、毛利さん・・」

「蘭でいいわよ、蘭で・・」

「じゃあ蘭さん、私も志保って呼んでね・・」

「ええ、志保さん・・」

「ところで何かようかしら、蘭さん?」

「用って別にないわよ、ちょっと話をしてみたかっただけよ・・」

「ふ〜ん・・」(それだけとは思えないのよね・・まあ、おそらく・・)ちらりと志保は隣の席を見た。

「ねえ、志保さん・・哀ちゃんって元気にしてるかしら?」

「え、ええ・・」

「それにしても、志保さんと哀ちゃんってホントによく似てるわね・・哀ちゃんとはよく話してるの?」

「えーと、たまに話するぐらいかしらね、私と入れ違いに外国に行っちゃたから・・」

(そりゃ、同じ人が幼児化しただけなんだから似てるに決まってるわね・・)

「哀ちゃんって好きな人とかいたのかしらねえ?何か聞いてる?」

「好きな人?今まだ小学2年生よ、それにそんな柄じゃないでしょ・・」

「でも哀ちゃんって妙に大人びた子だったわよ、コナン君もそうだったけど・・」

「コナン君?」

「ああ、志保さんはあんまり知らないのよね、家で1年間くらい預かってた子なんだけど・・」

「その子のことなら妹から少し聞いたことあるわよ・・」志保はそしらぬ顔をしながら答えた、

(彼のことならよ〜く知ってるわよ・・そう、あなたよりずっと詳しくね、毛利さん・・)

「そうなの・・で、コナン君のこと哀ちゃん何て言ってたの?」

「何て言ってたって・・別に、こういう子がいるってだけだったけど・・」

「ふ〜ん、そうなの・・」

「・・・?」

「これは私の想像なんだけど・・哀ちゃんってコナン君のこと好きだったんじゃないかしら?」

思いがけない蘭の言葉に飲み物を飲んでいた志保は思わずむせてしまった、

「あ、志保さん、大丈夫?」

「ゲホゲホ、だ、大丈夫よ、ちょっとむせちゃったみたい・・」

「・・・」

「ふう、少し落ち着いたわ・・で、どうしてそう思ったのかしら?」

「どうしてって・・なんとなくって感じかしら、まあ、コナン君は気が付いてなかったようだけど・・」

「・・その話工藤君にしたの?」

「新一に?してないけど・・どうして?」

「え・・いや、たぶん妹の性格だとそういうこと人に話されるのって嫌がりそうだから・・」

「ふ〜ん、なんだかんだと言っても姉妹なのね、妹思いのいいお姉さんじゃない・・いいなあ、私も妹か姉って欲しかったわ・・」

姉という言葉に志保はドキッとした、自分でも心臓の高鳴りがはっきりとわかるほどに・・

(お姉ちゃん・・私のたった一人の家族・・私のせいで・・私を組織から抜けさせるために・・)

蘭はふさぎこんでしまった志保のただならぬ表情に驚きを隠せなかった。

「あ、あの・・志保さん大丈夫ですか?」

「・・・」

「し、志保さん!」

「あ、え・・・ああ、ごめんなさい、ちょっと、嫌なこと思い出しちゃって・・」

「私が余計なこと言ったせいよね、ごめんなさい・・」

「べ、別になんでもないから、気にしないで・・」

「・・・」

「・・・」

お互いに何となく気まずい雰囲気になった時・・・

「よう、オメーら何してんだよ?」

「工藤君!」

「新一!」

思わず声が重なってしまった二人、

蘭と志保はお互いの顔を見合わせると二人でクスクスと笑い始めた。

「なんだってんだよ、一体?」

一人事態をよく呑み込めない新一はぼうぜんと立ちつくしていた。

 

続く

 

あとがき

サブタイトルは「女の修羅場」です(笑)、とりあえず和やかに話していますね。

本当は蘭に「新一のことどう思ってるの?」っていうセリフを言わせたかったんですが、

今回はなしということで比較的平和に話しが進みました。

哀ちゃんがコナンのこと好きだったんじゃないのかというセリフは新一と一緒の時に言わせるという案もあったんですが、

新一抜きの方が話しやすいかなと思ったんで新一には知らせないことにしました(笑)

志保嬢はきっとむきになって否定するんでしょうな、「絶対にないわよ!」とか言ってね(笑)

あ〜、そうした方がおもしろかったかも・・・

とりあえず後編に続きます、拙い文章ですが読んでくださってありがとうございます。