長い1週間(3)
コナンは買い物から帰ってくるとやることもないのでずっと小説を読んで暇をつぶしていた。
志保は眠いので自室でしばらく仮眠をとっていたが夕方になると起き出して夕飯の準備をすることになった。
「なあ、オメーなんでそんな格好で料理するんだ?」
喉が渇いたので冷蔵庫まで飲み物を取りに行ったコナンが夕飯を作っている志保の格好を尋ねた、
志保は黒い服に白衣を羽織っているといういつもの服装で料理をしていた。
「別にいいじゃない・・人の勝手でしょ?」
「だって目の前にちゃんとエプロンがあるじゃねーか・・それは着ればいいと思うんだけど・・」
キッチンの壁に掛けてあるエプロンを見ながらコナンはそう言った。
そのエプロンはおそらく博士が買ってきたものなんだろう、そのせいかあまり志保の服の趣味にあっているとは言えないような柄であった。
まあこいつに服の趣味なんかあるんだかどうか・・・コナンはエプロンを見ながらそんなことを思っていたのであるが・・
「だったら目の前で人が料理作っているんだから少しぐらい手伝ってくれてもいいと思わない?」
「ああ、俺今小説読んでいる最中で忙しいんだ・・飯できたら教えてくれ、腹減ってるから早く作ってくれよ・・」
志保から思わぬ反撃をくらったコナンは随分と勝手な言葉を残してキッチンから出て行った。
しばらくして「なんであなたの分まで私がつくらなきゃならないの・・」とぶつぶつと文句をいいながら志保は夕飯ができたことをコナンに知らせた。
志保のそんな文句なぞおかまいなしに勢いよくご飯を口に運ぶコナン、この日はまともに朝飯昼飯を食ってなかったので空腹であったせいか
無言でむしゃむしゃと食べつづけるのであった。
「ふ〜、食った食った・・それにしてもオメー結構料理うまいんだなあ・・」
お腹が膨れて一息ついたコナンはようやく口を開いた。
「そりゃあ長いこと一人暮らしだったもの、料理ぐらいはそれなりにうまくなるわよ・・」
「ふ〜ん、オメーも意外と女っぽいところあるんだな・・」
「目の前にいる女性に向かって言うには随分と失礼な言葉ね、工藤君・・」
志保は言葉とは裏腹に特に気分を害した様子もなく軽口をたたいた。
「その口を直せばもうちょい女っぽくなるんだろうけどな・・」
コナンは小声でそうつぶやくとテーブルから立ち再びソファで小説の続きを読み始めた。
次の日の朝、志保が朝食の目玉焼きを作っているとコナンが起きてきた。
「宮野、飯は何だ?」
第一声がこれであった。
「そこにパンがあるでしょ?焼いて食べたら?」
冷たく志保が言い放つ。
「ああ、わかった。ついでに俺の分の目玉焼きも頼むぜ・・」
ちゃっかりとそんなことを言いながらテーブルにつくコナンであった。
「あのねえ・・だいたい何であなたがこんな時間に起きてくるのよ?いつもは遅刻ぎりぎりまで寝ている癖に学校に行く必要のない時に限って・・」
志保は文句を言いながら二つ目の卵をフライパンの上に落とした。
「いや、昨日寝すぎたせいか目が覚めちまってな・・」
コナンはそう言いながら新聞に目をとおす。
「ふ〜ん、アニマルショーの世界公演がまた始まったらしいぜ・・」
「あらそう・・また日本にも来るのかしら?」
「11月か12月くらいに来日するみたいだな・・オメー確かこういうの好きだったよな?」
「ええ・・まあ・・」
「じゃあ、連れてってやろうか?」
「あら、デートのお誘いってわけ?」
丁度目玉焼きができたので皿に載せてテーブルまで運んできた志保はそう聞き返した。
内心はうれしかったがもちろんそんな表情はおくびにも出さない。
「デ、デートだなんて別にそんなつもりじゃあ・・」
慌てて否定するコナンを見ながら志保はクスリと笑う。
「まあ私も小学生のガキにデートに誘われてもうれしくないけどね・・」
「悪かったな、小学生のガキで!だいたい元はと言えば・・」
「あら、そうなったのはあなたの不注意が原因じゃなくて・・・?」
「はいはい、そーですよ・・」
諦めてコナンは降参した。
「ねえ工藤君、そこのケチャップ取ってくれない?」
「ケチャップ・・?何に使うんだ?」
そう言いながらコナンはケチャップを渡した。
ケチャップを受け取ると志保はそれを目玉焼きにかけた。
「え゛、オメー目玉焼きにケチャップかけて食うのか?」
「そうだけど・・別に普通でしょ?」
「普通ソースか醤油じゃないのか?」
「うるさいわね・・人の好みの問題でしょ?いちいち口出さないで欲しいわ・・」
この種のくだらない言い争いでは志保に勝てないことを知っているコナンは口を出さないことにした。
コナンが黙ったので時計を見てみるともう8時を回っていたので志保は急いで朝食を食べ終えて学校に向かった。
教室に入ると蘭がコナンのことで話しかけてきた、新一の話題は避けたかった志保としてはコナンの話をしてくれた方が都合がよかった。
「何、何?あの生意気なガキんちょがこっちに来てるわけ?」
突然園子が二人の会話に割り込んで来た。
「そうなのよ、今は博士の家に泊まっているみたい・・」
「ふ〜ん、じゃあ今は宮野さんがあの子の世話しているわけなのね・・あの子って生意気で大変でしょ?」
「もう園子ったら・・でもあの子結構やさしいところもあるのよ・・」
「だんなの帰りを一年近くも待っていた蘭とは違うのよ、ねえ宮野さんもそう思わない?」
突然話を振られた志保は今朝のやり取りを思い出して答えた。
「う〜ん、どっちかっていうとかなり生意気な子供ね・・私じゃあもてあましそうだわ・・」
「ほら、やっぱりそうじゃない?蘭は何かと世話をやきすぎるのよ・・」
「まあ、やさしいところもあるけど・・」
一応フォローも入れておいた。
「そういえばあの茶髪の女の子も変わってたわよねえ、妙に大人びていたというか・・あんま子供っぽくなかったのよね・・」
園子が突然哀のことの触れた、ただし姉である志保が目の前にいたのであまり悪くは言わなかった。
その代わりに志保にいろいろと質問してきた。
「それにしてもあの子と宮野さんってよく似てるわね・・誰が見ても姉妹ってはっきりとわかるくらいだし・・
でもどうして苗字が違うわけ?」
「ええと・・それは・・」
「ちょっと園子!志保さんの家族だって色々と事情があるんでしょ・・そんなこと聞くもんじゃないわよ・・」
返答に窮していた志保は蘭に救われた形になった。
「あ、ごめんなさい宮野さん・・」
園子も事情を察して謝った。
普通に考えれば親が離婚してなどというような家庭の事情が想像できるし現に哀と志保は単身で博士の家に居候の身分でもあった、
あまり口に出したがらないようなことであることは容易に察しがつくのである。
もちろん本当は全く違うのであるが志保が複雑な家族事情であったのは同じことであった、そして姉妹がいたことも・・
「あ、もうそろそろ先生が来るわね・・席につきましょう・・」
蘭はそう言うと自分の席に戻っていった。
(姉妹か・・私とお姉ちゃんはあまり似てはいなかったわね、でも仲はよかったわ・・
そのお姉ちゃんはもういない・・私に残されたのは・・工藤君・・・)
ボーっと授業を聞き流しながらそんなことを考えていた志保であったが思わず新一のことを考えてしまう自分に苦笑した。
(私ったら何バカなこと考えているのかしら・・彼が愛している人は彼女・・もはや私には関係のない人なのよ・・
これ以上深みにはまると、私ヤバイわね・・)
しかしそんなことを考えながら隣の新一の席を見ると思わず彼の顔が浮かび上がってしまうのであった。
志保は終始そんな感じで一日中まるで上の空のような状態で過ごしたあと蘭がコナンに会いたいというので蘭と一緒に帰った。
「まったく、新一ったら『事件は片付いたからちゃんと学校にいくぜ』なんて言った次の日からまた急な事件だとかで学校休むんだから・・」
あまりそりが合わない(と志保は思っている)この二人が意気投合する話といえば新一の悪口であった。
志保の蘭に対する苦手意識の主たる原因である新一についての話が(特に悪口が)二人の共通の話題になっているのは
我ながら奇妙なことだなと志保は思った。
「ただいま・・」
「お邪魔します・・」
コナンが玄関で出迎えるなどというようなことはなく家の中はひっそりとしている。
「コナン君は・・?」
「さあ?本でも読んでいるんじゃないかしら?」
家の中にいる限り事件とは無縁のはずだし・・・と志保は思いながら中に入ると予想通りソファーで寝そべって本を読んでいた。
「あら、コナン君久しぶりねえ〜元気にしてた?」
「あ、え・・蘭・・ねえちゃん、久しぶりだね・・」
蘭が来るとは思っていなかったので随分とぎこちない対応になった。
蘭にとりあえず返事をすると志保に向かって手招きをするので何事かと思いながら志保はコナンの元に近づいた。
「何よ、一体?」
「蘭を連れてくるなら先に言えよ、びっくりしたじゃねえか・・」
「私が連れて来たわけじゃないわ、彼女が勝手についてきたのよ・・」
「ったく・・」
二人でひそひそ話していると蘭が怪訝な顔をしながら近づいてきた。
「二人ともどうしたの?」
「た、たいしたことじゃないよ・・えーと、その・・」
「久しぶりなんだからゆっくり話でもしたらどうかしら?今お茶でもいれてくるわ・・」
志保はそういうとキッチンの方に向かった。
あとがき
すいません、大分久しぶりです。しかも前中後編では100%終わらないことが発覚したので
1,2,3・・としました。次のはもっと早く書けるようにしたいです(汗