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「機動戦艦ナデシコ 〜異話 The Prince Of Darkness」

第一章 【前奏曲】

 

 無限に広がる大宇宙。

 希望に満ちし、人類最後のフロンティア。

 だがそこは希望にのみ満ちあふれた新天地では無い。

 絶望もまた満ち溢れた世界である。

 だが怖れるな宇宙移民を志す諸君。

 我々は進まねばならないのだ。

 数多くの苦難があろうとも、そこにこそ我々の未来があるのだから。

            〈人類初の星間移民船【火星への道標】にて配られた小冊子より抜粋〉

 

 

 

 

 時は【地球連合】と【木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星国家間反地球連合共同体小惑星/通称・木連】との全面戦争。人類史上初の星間戦争【第一次汎太陽系戦争】が終決して二年後。

 ようやくの事で人類世界は戦時の息苦しさを脱し、和平がもたらした恩恵にあずかりはじめた時だった。

 その恩恵の一つに【ヒサゴプラン】というものがある。

 これは星間戦争末期において、【地球連合】及び【木連】双方の苛烈な争奪戦の対象となった【火星の遺蹟】及び【ボゾンジャンプ】技術を、星系内の移動という平和利用目的に設立されたものである。

 “宇宙をめぐる大螺旋”をうたい文句に、大戦後、金星軌道から木星圏にまでに巨大化した人類領域の全てを網羅する事を目的にした一大高速物流ネットワークの建設がその最終目標であった。

 現在の所は地球圏から火星までのネットワークが完成しているだけ−最終敷設予定の42%−ではあったが、その効果は荒廃しきった火星の再建計画が予定の3%増しの速度で実施されている事からも明らかであった。

 そして物語は、この【ヒサゴプラン】より始まる。

 場所は【ヒサゴプラン】の中継ステーションの一つであり、同時に、いまだ不確定要素の大きいボゾンジャンプを安全に安定させた状況で使用する事を目的とした研究も行なっている【シラヒメ・ステーション】であった。

 

 

 

 

 異変を最初に察知したのは【シラヒメ・ステーション】の最外周部に設置されている、無人の第三域監視衛星だった。

 即座にリアルタイムネットワークで形成された対宙監視網の元締めたる【シラヒメ・ステーション】の中枢電算機へと通報が行なわれた。

 中枢電算機はボース粒子の増大を確認後、三秒でボース粒子増大の報とともに準戦闘態勢への移行を意味する第二種警戒態勢の発令の要請を、自らを見守っている管制官と呼ばれる人間に通報を行なう。

 戦後に設計製作されたとはいえ、戦時に使用された様々な電算機より豊富な戦訓を受け継いでいた【シラヒメ・ステーション】の中枢電算機は、ボース粒子の発生確認後に採取された情報からこれが何等かの敵対行動であると判断したのだ。

 それは戦時の反応としては完璧なものだった。

 ただ問題は、それを見た人間が平時に訓練され、その精神は完全な平時状態にあったということだった。

「おっこの反応は…………おい見てくれこの数値」

「おいおい、虚報かよこんな場所に」

「二ヵ月前の隕石のダメージが抜けてねえのか?」

「でもありゃあ昨日、システムチェックが終わったばかりだぞ?昨日の今日でバグが生まれるかぁ?」

 緊張感の全く無い会話。

 ある意味、これは当然であった。

 もはや戦時中ではないのだ。

 一個護衛戦隊が駐留する【シラヒメ・ステーション】は軍隊崩れの宇宙海賊程度が手を出せる場所ではないのだ。

 ならば誰がこのような場所を襲うというのか。

 だが襲撃者は確かに存在していた。

「だが第三種警報の要請が出てるぞ?」

「まあいい。おれ達が判断する事じゃねえな。神田さん!監視衛星がボース粒子の発生を検知しました」

「あぁん?」

 人類が地上のみを生息場所としていた時代からの伝統から“劇場”と呼ばれているそこには、人類の住む全領域をカヴァーする螺旋の動脈たるボゾンジャンプ・ネットワークの確実な管理、運行を行なう為、昼夜−無論、概念的なものではあるが、人間の生理感覚を維持する為に街路照明などを調節して人工的に作り出している−を問わず一〇名前後の男女が詰めていた。

 そして管制官らを統括しているのは劇場名物とも呼ばれている男だった。

 名を神田・シロー。

 その真面目なのか不真面目なのか、一見しただけでは判らない態度から“三十の不良路街道まっしぐらの凶悪中年”と部下に言われている、だが同時にどのような情況に対しても沈着冷静に応じる事から信頼もされている管制官だった。

 その言葉に神田は、それまで、まるで艶本にでも目を通すような表情で眺めていた特殊なロシア帝国を舞台に哲学的な何かを求めた−と作者は言っている−本から面を上げた。

「位置は本ステーションより8000です。どうやら虚探−虚報探知−みたいな…………」

「何だと!!」

 管理者が対象との距離を口にした瞬間、神田の顔付きが一変した。

 宙を舞う小説本。

 だが神田はそのようなものに一片の意識も分けなかった。

「馬鹿野郎!何やっていた!?」

 部下の8000という、宇宙を舞台にした戦争では“極至近距離”という位置に対する緊張感の無さを内心で罵りながら、部下たちに命令していく。

「観測班、データV−21番の位置を至急探索しろ!現状で得られるデータから不明機の正体を探れ!!」

「へぁ!?はい!今四番の望遠カメラが正体不明機を捉えました。メインスクリーン望遠最大、一番−劇場正面の大画面−に出します!」

 二〇〇u級の大画面にコンピューターによって補正された、少しばかりぼやけた映像の中に正体不明機の姿はあった。

 黒一色の何処かずんぐりとした印象を与える、全高一五m前後と思われる機体。

 そのサイズから少なくとも“マジンタイプ”と呼ばれた旧木連の有人ボゾンジャンプ機では無い事は判るものの、それ以外は全く不明の機体だった。

「ありゃあいったい…………」

「ジェーン機動兵器年鑑にも、これと似た機体は登録されていません!」

「まさに正体不明だな……………………」

 呆れたように呟く神田。

 だが謎の黒い機体はそのような贅沢を許さなかった。

「なっ!?」

 一直線で突入を図るソレは、尋常ではない加速力で【シラヒメ・ステーション】に迫ってきていた。

「通信は!?」

「駄目です!IFF、応答ありません!!」

「電波状態はどうだ!?」

「状況、クリア!外周の観測衛星とのリアルタイムリンクは正…………あっ通信途絶!?…………畜生!…………アカシア−V−第三域監視衛星の通称−、正体不明機に破壊されたもようです!!」

 飛びかう怒号。

 神田の脳裏には、昨日のステーション責任者会議にて知らされた、ヒサゴプラン関連の施設を狙う謎の襲撃者の話が甦っていた。

“黒き亡霊”

 それが爆砕されたステーションより回収されたレコーダーに残っていた、全身を漆黒の装甲に包んだ謎の機動兵器へ付けられた呼称だった。

「“テキ”…………か」

(例の奴か?)

 一瞬だけ呆けたような声を洩らした神田だったが次の瞬間、張りのある、騒ついた劇場の誰もがはっきりと認識できる声で命を発していた。

「只今より神田主任管制官の権限をもって第一種警戒態勢の発令する!!!総員急げ!」

 明瞭な命令の与えられた瞬間、それまであたふたと混乱した情況にあった、管制室は一気に統制を取り戻していた。

 だが、そんな神田に副主任管制官が小声で話し掛けた。

「しかし神田さん」

「“しかし”は無しだ。昨今の宇宙戦闘は殆どが一〇分からでケリが付いちまう。今発令しなくては間に合わんぞ」

 殆ど視線を副官へと向ける事無く答える神田。

「ですが誤報だったら」

「そんときゃあ減棒だ減棒。三ヵ月、いやあ四ヵ月は行くかもな…………ハラァ括っとけよ?」

「んなモン、貴方の副官を押しつけられた時にとくに括ってますよ……………………ふう…………」

 ため息をつく副官。

 だが神田は委細構う事無く嬉々として部下達に檄を飛ばしていく。

“戦争好きの、変態中年”

“トリガー・クレイジー”

 そういった陰口を裏打ちする神田の態度だった。

 だが同時に非常時には、そんな態度が部下たちになにがしらの安心感を与えていた。

 久々に戦時中を思い出させる状況に、口の端を弛ませながら神田は硬化プラスティクのカヴァーに覆われていた第一種警報発令釦を思いっきり叩いた。

 人の神経を刺激する甲高い金属音が鳴り響きはじめた。

 【シラヒメ・ステーション】が建設されて以来、訓練以外では一度として鳴ることの無かった甲高い第一種警報音がステーション全域に鳴り響いているのだ。

 外周に配置さらた防空衛星が一斉に短距離対空ミサイルを発射する。

 そして【シラヒメ・ステーション】に駐留する第五〇八護衛戦隊が敵機動兵器の予測突入軌道へと動き始めていた。

「五〇八護衛戦隊、敵機動兵器との交戦を開始。距離2300!!!」

「ちぃ素早ええお客さんだ!!【ホワイト・ファングス】−【シラヒメ・ステーション】駐留の機動兵器部隊。一個中隊、四十五機が編成駐留している。新鋭のステルンクーゲルを装備している−の出撃はどうなった?」

「ダメです、格納庫ハッチが開きません!回線系にトラブルです!!現在人を回させています」

「何だと!敵機はそこまで…」

 そう神田が口にした瞬間、突如として激しい衝撃が【シラヒメ・ステーション】を襲った。

「研究施設のC、D、Sの3ブロックが破損!通信途絶です!!」

 通常は中央管制室中央にある大画面に、立体架線描写で青く表示されている【シラヒメ・ステーション】の状況表示板が真っ赤になっていく。

「くそったれ、なんてぇ攻撃力だ!格納庫のハッチ直ったか?」

「無理です、強力なハッキングが仕掛けられているらしく…………」

「ちっ…………かまわねぇ、【ホワイト・ファングス】の連中に伝えろ。ハッチをブッ飛ばして出撃しろってな!!」

「アイ。格納庫、こちら第一管制室……………………」

 逸早い警報によって、人員を重防御区画へと収容したお陰か、死者はいま二桁に留まっていたが、それも時間の問題だろう。

 戦艦の主砲級の攻撃に耐えられるよう設計された重防御区画は未だ被害を受けていないものの、それ以外の場所の受けた被害は惨憺たる状況へと陥っていっていた。

「第一から第三までの広域レーダー群沈黙!」

「イ号ブロックの防御火器群、完全沈黙です!!」

「第三管制室全壊!」

「遠距離用の第三通信アンテナ損壊!地球連邦宇宙軍との直通リアルタイム回線、主、副が途絶しました!!現在予備回線の立ち上げを進めて…………」

「急げよ!?情報が無ければどうにもならんぞ!!」

「主任、近域を航行中の連邦宇宙軍第四艦隊所属の巡航艦【アマリリス】より入電です!“ワレ最大速力ニテ急行中、今暫シ耐エラレタシ”です!!」

 通信管制官が意識して上げた歓声に近い報告に管制室の随所で歓声が上がるが、それも第八〇五護衛戦隊所属の泊地防衛用護衛艦の【ツバキ】が爆沈するまでだった。

 それはまるで悪夢の様な光景だった。

 泊地防衛という任務用に特化させた設計によって航続距離及び居住性を削った結果、通常の艦隊型護衛艦とは比較にならぬ程に大量に設置された対空砲座が流星雨の様に火線を放ちながら、残る三隻の護衛艦からの援護を受けつつ【ツバキ】は敵機動兵器の進路に割り込みをかける。

 しかし敵機動兵器はその濃厚な対空射撃の尽くを避けきっていた。

 そして【ツバキ】の脇を通り抜ける瞬間に、敵機動兵器より【ツバキ】の船腹へと叩き込まれた一撃。

 【ツバキ】は機動兵器との交戦を主眼にして火力と防御力とを与えられていた最新鋭の【キリ】級泊地防衛用護衛艦の一鑑ではあったが、謎の機動兵器の放ったレルーキャノンの弾はその護衛艦としては珍しい程に大出力のディステーション・フィールドを易々と突き破って機関部を直撃し、これを爆沈させていた。

「化け物かよ!?」

 誰かが茫然と呟いている。

 神田とてそれを咎める気には成らなかった。

 【キリ】級の持つディステーション・フィールドは、−カタログデータによれば−機動兵器が標準装備する程度の兵装ならば貫通される事はありえないとされていたが、それが易々と破られたのだ。

 それも漆黒の機動兵器の標準兵装によって。

 機動力のみならず、攻撃力も尋常では無い機体だった。

 そして今敵機は、第一種警報の発令と同時に起動した対空火器群の四〇〇門近い火線に曝されながらも、一つとして致命的な損害を受ける事のなく、逆に位置を晒した銃座を敵機動兵器は的確な攻撃で確実に沈黙させていっていた。

 何とか出撃に成功した【ホワイト・ファングス】のステルンクーゲルが攻撃を仕掛けるが、どれも瞬く間に撃ち落されていく。

「見事だ……………………」

 管制官として連邦宇宙軍時代には航宙母艦【ハルシオン】に乗り組み、数多くの会戦に参加した神田でも見たこともない程に、それは見事な三次元機動だった。

 殆どの隊員がエースパイロット級の腕前を持っている【ホワイト・ファングス】のパイロット達が行なう緻密な連携攻撃を殆ど完璧に避け、逆に確実な一撃でステルンクーゲルを屠っていく。

 そして最後のステルンクーゲルが【シラヒメ・ステーション】の極至近距離で、敵機動兵器の放ったレールガンらしき有質量弾を四肢や背面の機動ユニットに受けて瞬く間に火玉と化した。

「………………………………いったい何者だよ、あのパイロットは」

 神田はその早業を呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 深遠の宇宙を背景に駆け抜ける黒い機動兵器。

 その星明かりすらも吸収するような漆黒の装甲をまとった機動兵器のコクピット。

 並みのパイロットでは操縦するどころか気を失ってしまう程に苛烈な加速圧力にあっても、そのパイロットは黒い耐Gスーツとヘルメットバイザーとの隙間より覗いている口元に薄い笑みを張り付けながら縦横に機体を操っていた。

 迫り来るステルンクーゲル部隊を粉砕すると、続いて【シラヒメ・ステーション】の機能を奪うように的確に攻撃を加えていく。

「…………ラピス」

 パイロットが唐突に、感情というものを削ぎ落としたような声で呟く。

『はい。ハッキングは成功。【シラヒメ】全機能掌握まであと三ブロックです』

 その言葉への答は通信回線では無く、脳へと直接送られてきていた。

 その意志は淡々として、パイロット以上に情動の感じられないものだった。

「急げ。奴らは動く。その前に情報収集を終了しろ」

『はい』

 

 

 

 

「遅かりし復讐者。汝は未熟なり」

 【シラヒメ・ステーション】の最奥に、殆どのステーション在留者に気付かれぬように設けられた、機密保持の為に名称すらも付けられていない研究ブロック。

 そこで陣笠を被り時代掛かった格好をした男が一人、襲撃者の姿を映した画面を見ていた。

 その皮膚の裂目が如く見える口元に爬虫類めいた笑みを張り付けて。

 その周りには、地に臥せり寸毫とも動かぬ白衣姿の人々があった。

 本来は純白である筈の白衣には赤い花が咲き乱れている。

 換気の止められた狭い研究ブロックに篭もった、凄まじい血臭と硝煙の匂い。

 だが男はそのような事に気を取られる事無く淡々と、黒い機体の映し出される画面を見つめていた。

「…………………………………………多少は腕を上げたか…………だが心を鎧で覆おうとも…………」

 そう、小さく呟くと男は興味を失ったように頚元の釦に触れた。

「陣風、準備はどうか?」

『はっ北辰様、滞りなく』

「……………………滅」

 もう一度だけ画面を見た男、北辰が一言呟き光に包まれて消えた瞬間、それまで沈黙が支配した研究室を炎と爆炎が征服していた。

 

 

 

 

 連邦宇宙軍の誇る最新鋭巡航艦【アマリリス】の艦長であるアオイ・ジュン中佐は、自艦に宇宙軍が巡航艦に定める安全航行規定を無視した、安全許容量一杯の加速度を出させながら急行していた。

 そのほっそりとした船殻に寄り添うように設置されていた四本のリニアカタパルトが、まるで花開くように展開していく。

「【サウス・ボア】隊、全機発艦完了!」

「艦内のダメコン−ダメージ・コントロール−システム、チェック完了!」

「機関出力41%。現在異常なし」

 ナデシコの副長時代は、アクの強い艦僑要員たちに埋もれて目立たず、“何処にいるのか判らない。何処にいても同じ”と酷評されていたアオイではあったが、その能力は他の“能力だけ最優先”して集められたナデシコA乗組員と同様に優れたものを持っていたのだった。

 そうで無ければ若干二十五才で最新鋭艦の艦長を拝命する事は無い。

 規模が縮小したとはいえ、いや、縮小されたが故に宇宙軍の士官達の質は高く、新鋭艦々長の座は容易に得られるものではないのだ。

 そのような有能な艦長に率いられ、鍛えられた【アマリリス】の搭乗員たちが無能である筈が無かった。

 その練度の高さを示すように、着実に責務をこなしていく乗組員たち。

「グラビティブラスト、蓄電開始します」

「簡易レーダー衛星発射終了。以後、本艦の外周1キロの位置に固定します」

「主砲、全システムチェック終了まであと一〇秒!」

「艦長。総員の第一種戦闘配置への移行、あと三〇秒で終了を予定」

 忙しく様々な報告が飛び交う中、戦闘準備と【シラヒメ・ステーション】への最大速力での急行を指示していらいアオイはじっと耐圧座席に身を沈めていた。

 その目は【シラヒメ・ステーション】から送られてきた敵機動兵器の各種情報を追っていた。

(敵機動兵器の機動性能は冠絶している。だが襲撃がたった一機で行なわれるのは…………)

 その時、アオイの座る制御卓のパネルに示された艦内情報が全て青、すなわちが【アマリリス】の戦闘準備が終了した事を示した。

 それは訓練航海中に【シラヒメ・ステーション】より緊急救難信号を受け取って三秒後にアオイが第一種戦闘配置及び【シラヒメ・ステーション】救援を発令してから六十七秒後の事だった。

 その時間に満足を覚えながら、アオイは最後に口頭で確認を行なっていく。

「航海」

「航海問題無し。全スタビライザー、正常作動を確認」

「機関」

「機関良好。出力正常。現在第一種態勢で待機状態。機関部各種センサー作動確認完了。超高速巡航発揮可能」

「砲術」

「主砲、一番、二番、三番、四番、発射準備よし。安全システム、レッドよりグリーンへ即時発射可能」

「軸線搭載のグラビティブラスト、蓄電レベルB。精密及び照射モード使用可能」

「対空砲座群、全システムの作動確認。試射完了」

「艦載」

「【サウス・ボア】隊はあと一八〇秒で【シラヒメ・ステーション】最外殻域へ到着予定です。現在リニアカタパルトはモードbへ移行。有質量弾の発射態勢完了までは約三十秒です」

「電測及び通信」

「簡易レーダー衛星、展開終了。全四機パッシブモードで本艦を追走中。データーリンクシステム、異常ありません」

「艦載部隊とのリアルタイムリンク正常作動中。【シラヒメ・ステーション】との情報回線も第三級秘守回線で展開中です」

「副長」

「総員、耐圧座席への着席を確認。艦長、現在【アマリリス】は全ての作戦行動が可能です」

 唄うように各部門の責任者と最終確認を終えたアオイは一つ小さく咳をすると、あみだに被っていた略帽−【ナデシコ】の副長時代から愛用していたもの−を被りなおした。

「緊張してますね、艦長?」

「まあね。本艦が進宙して初めての実戦だからね。緊張しない方がおかしいんじゃないかな?」

「ですが艦長、本艦の戦闘力と乗員ならば、3F−第三艦隊。通称“第一機動部隊”。統合軍の設立によって往時の三割にまで削減されきっている宇宙軍で唯一、有力な即応戦闘能力を持った精鋭部隊−の戦艦戦隊を相手にしたって引けを取るハズがありませんよ」

 何より艦長が指揮しているのだから。

 言外にそう言いながら若い副長は胸を張ってみせた。

 確かにアオイは堅実で優秀な艦長であった。

 そして【リアトリス】は登場時のうたい文句が“地球圏最強の戦闘能力”と言われた【エーデルワイス】級巡航艦の三番艦であり、この艦級は戦後になって本格化した【火星の遺蹟】によって得られた技術を採用して建造された最初の戦闘用艦艇群の一つだった。

 【ナデシコ】改級−現在一番艦である【ナデシコb】が就役中−で試験的に採用された、いわゆる“ネオジェネシスプラン”の一環として北崎アームストロングが設計/建造した本級は、航宙艦として史上初めて操舵システムにナノマシンを介した直接リンクシステムを採用していた。

 この操舵手と艦との直接リンクは、スリムな機動力を重視した船殻と相俟って、一世代前の航宙機動機にも匹敵する程の機動性能と直接攻撃能力を【エーデルワイス】級に与えていた。

 もっとも、その代償として本級は作戦機動時に耐圧シートへの着席が義務付けられるようなっていた。

 心地よい緊張感が戦闘指揮所を包んでいた。

 そして戦闘指揮所に詰める各員の制御卓の脇に出されているカウンターが残り二桁を切った時、アオイは一つ咳をすると、唇を舐めた。

「そろそろだね」

 顎を引き、略帽を目深に被ったその姿から表情を読み取る事は出来ない。

「超高速巡航開始まであと9秒。6・5・4・3・!」

 副長の行なっていたカウントダウンが残り3へと達した時、突如としてメインモニターに『緊急事態発生』の文字が写し出されていた。

「超高速巡航凍結!情況報せ!!」

「【シラヒメ・ステーション】との直接回線切断!救援信号が停止しました」

「情況把握急げ!」

「待ってください……………………艦長!」

「どうした!?」

「しっ、シラヒメが爆発した模様です!!」

「何!?」

 通信管制官が叫んだ瞬間、戦闘指揮所のメインディスプレイにまるで芥子粒のように写し出されていた【シラヒメ・ステーション】が光に包まれていた。

 

 

 

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【ケイ氏の独言】

 殆どの皆さん初めまして。艦隊所属のお気楽自堕落独航鑑【鈴鹿】のケイ氏です。

 どうでしょうか私の初ナデシコSS。

 “コレの何処がナデシコ?”ってな声が聞こえてきそうな感じがしますね(笑)。

 おまけに短いし。

 まあこの章はいわゆる劇場版のオープニング・パートですから、まあそこら辺はご容赦の程を(笑)。

 では次章でまたお会いしましょう。

 




艦長兼司令からの攻撃指令(?)

さて、ケイ氏さんからSSを頂きました。

劇場版再構成ですな。

とりあえずはオープニングということで、これからどうなるか楽しみですな。

さりげなく軍事色が強いし(笑)

期待してますよん♪

メールはここ!

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