合わせ鏡




・・・やあ、おはよう。ちょっと久しぶりかな?

今日は何の話をしてあげようか。









あのころはね、

悩みが終わることは無くて。

どうしたらいいんだろうといつも頭を悩ませていたんだ。

凄く凄く苦しくて。

いっそ想うことなんかやめてしまおうと思ったこともあるけど。

・・・え?

そりゃあ一度も話したこと無いもん。知らなくて当たり前デショ?

拗ねないでよー。

ごめんってば。機嫌直して?

でも本当にやめなくてよかったと思うよ。

凄く幸せだからね。今。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほんと?

あぁ、そういってくれると嬉しいなぁ。ボクだけじゃなかったんだ。

等身大の鏡は背を向け合ってたということかな。

相手の姿を映すことも無く。

違う方向をお互い見ていたんだね。

向きを変えればいいだけなのに。






でも悩みは尽きないねぇ。

そりゃ通じ合えるまでよりは凄く楽になったけど。

でも、新たに追加されていく悩みだってある。

もちろん・・・・・・幸せだよ。

でもその幸せに対する悩みができてしまう。

・・・・・・贅沢かな。

向かい合った鏡はお互いを際限なく映してしまうから。

心の奥の奥までは絶対に見えないね。

目を凝らしてもぜんぜんわからない。

合わせ鏡はかえって惑わせるばかりで。






・・・・・・・・・・・ねぇ、アッシュ?

君はこの冷たい地面の下で何を思っているのかな。

何も思ってないかな。

もう、・・・・・・・・・・・「思う」ということすら君にはできないんだね・・・・・・・・・・・・。

前から君は聞き役だったけど、相槌も返ってこないのはさみしすぎるなぁ。









今は片方だけが残ってしまって。

跡形も無く粉々になったもう片方を静かに映す。

向かい合わせの鏡は割れてしまったんだ。










ばいばい、アッシュ。

また来るよ。また話そう?・・・・・・ボクの独り言だけどね。