ポチと御主人様



 大学に泊まり込みで実習をした翌日、自宅に戻り、リビングで新聞を読んでいた涼介は、
玄関の前に入ってきた啓介の愛車のエンジン音に、ふと視線を上げた。
 今聞こえているドタバタは、たぶん涼介のFCを見つけた啓介が慌てて廊下を走ってくる音
だろう。
「アニキ!!帰ってたのか!?」
 ドアを開けるなり、涼介の座っているソファーに大股で駆け寄ってくる啓介の嬉しそうな
様子に、
(尻尾があったら振ってそうだな………)
と涼介は失笑してしまった。
「何だよ、アニキ」
 涼介がふと漏らした僅かな笑みにも啓介は敏感に反応する。
 近くで顔を覗き込もうとする啓介は、やっぱり可愛い………。
 自分にこんなにも誰かに執着する心があることを気付かせてくれたのは啓介だ。
(可愛さ余って、なんとやらってやつだな………)
『分かってんのか、コイツは』と思いっきり鼻を摘み上げてやる。
「痛ーっ!あにふんだよ………アニキ」
 かなり本気の力に涙を滲ませながら、それでも甘えているのか、離れようとしない啓介に
涼介は苦笑した。
「悪かったよ」
と謝りながら、赤くなってしまった啓介の鼻先に軽くキスしてやると、パッと笑顔になって
喉元に擦り寄ってくる。
(やっぱり………犬だな)
 涼介の心の声を啓介は知らない………。



終わり




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