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ピクッと瞼を痙攣させて、啓介は浅い眠りから覚醒した。 いつの間にかウトウトしていたらしい。 さきほどまでリビングのソファーで一緒に酒を飲んでいたはずの涼介の姿は見当たらなく なっている。 (シャワーでも浴びてんのかな…?) 兄を探して脱衣所に入ると明かりが点いていて、『俺の勘も冴えてるな』と思う。 浴室からは、シャワーの流れ出ている音が聞こえてくる。 その音を聞いた瞬間、なんだか無性に涼介の顔が見たくなって、啓介はドアを開けて浴室 に一歩踏み込んだ。 「啓介!?」 突然入ってきた啓介に驚いて、涼介が振り返った。 シャワーを浴びていた涼介の白い身体に流れるお湯が撥ねて、啓介の服にいくつか染みを 作る。 「俺が寝ちまったの放ってくんだもんな。ひでーやアニキ」 『黙って置いていかれて拗ねてるんだぞ』ということを伝えたくて言ったのに………。 「何訳が分からないことを、おい!啓介、濡れるぞ」 子供のような駄々をこねる自分に涼介が溜め息を吐いたのが分かって、啓介は『服なんて どうでもいいのに』と少しムッとする。 それがまた顔に出てしまったのか、涼介は微かに苦笑してたぶん啓介のためにお湯を止め ようとシャワーのコックに腕を伸ばした。 しなやかな、白い腕。 その腕を思いっきり、啓介は掴んだ。 「アニキ、俺………もうダメだ!!」 「うわっ!?」 そのまま強く兄の身体を引き寄せる。服が濡れるのが分かったが、そんなのは啓介にとっ て、やっぱりどうでもいいことだった。 「こら、啓介!放せ!」 「そんなアニキの姿見て、俺がガマンできるわけねーだろ!!」 涼介の濡れた髪からするシャンプーの香りにクラクラする。 「自分で勝手に入ってきて何言ってんだ、お前は」 呆れたような台詞。それでも引き剥がそうとしている涼介の腕が本気ではないのが嬉しく て、啓介は『ヘヘ』と笑った。 「何笑ってるんだ」 「痛っ!」 パシッと頭を叩かれながらも、やっぱりすごくすごく幸せな気がして、啓介は思い切って 言ってみる。 「ここで、したいな………アニキ」 ペロッと涼介の唇を舌でなぞる。 『ダメか?』と上目使いで訊ねる自分のこういう顔に涼介が弱いのは分かっているのだ。 「………」 何か言おうとして口を開きかけた涼介は、結局諦めたように口を噤んで、啓介の首に腕を 回し、キスを返してくれた。 (やっぱアニキは俺には甘いんだよなー) 『言ったら怒るから、アニキには内緒だけど』と心の中で呟きながら、綺麗な涼介の鎖骨 に啓介は軽く歯を立てた………。 終わり |