第5回 半身で進む
俺が十萌を杖術の稽古に呼ぶのは、剣術の稽古が終わった後だ。一息入れて
から、「やろうか」と声をかける。
このところはずっと、今まで教えた基本の構えから実際に打ち込む稽古をし
ていた。剣術の方ではまだ相対稽古は一切させていないが、杖術では、一歩先に
それを始めた形だ。
杉村や仁科に差をつけたいというんじゃないが、十萌は、年末に神櫻二刀流
へ入門できるかどうかの見取りを控えているから、いわば、特訓だな。
「十萌。本手構え」
滑らかに、言われた通り構える十萌の右前に、向きを同じにして立った。
「敵と相対する時、必ずこうして半身に構える。このまま進んだりさがったりす
るんだが、できるか?」
十萌が少し考え込む。
「体の角度を変えずに、踏み出しているのとは反対側、後ろにある足を前へ持っ
てくる。この時、腰が回るはずだけど、半身を保ったまま、腰を回しすぎないよ
うにする。重心は下にな」
基本的には、半身のまま前へ進むわけだから、そうしようと思えば、おのず
と足の角度も、足取りも、決まってくる。そう頭ではわかっていても、杖を構え
たまま実際にやるのは、最初は難しい。
「壁に突き当たりそうになったら、今度はそのまま後ろへ下がる。半身を崩すな
よ」
当然、後ろへ下がる方が難しい。背中に目はついてないからな。
この歩法だけを何往復かやらせた後、今度は突きを組み入れた。本手構えか
ら足を踏み出すと共に、前に杖を突き、次の一歩で引く。下がる時は構えのまま
だが、前進する時は必ず突きを入れるようにする。
杖術でも、基本がかっちり出来ていれば、最低限、それで戦い抜く事は可能
だ。十萌と一緒に、何度も道場の端を往復する。
踏み出しては突き、半身で進み、踏み出しては突く。単調に思えるが、集中
してやっていると、時間のたつのを忘れてしまうんだよな。