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もっと早くに君たちとであっていればよかったのにね。 もう遅いよ。 だって僕の羽はもうこんなに真っ黒で。 僕にはどうしたら良いのかさっぱり解らないんだ。 「あんたにだけは、なつくんだな」 朝早くから鳥と戯れるバルコニーのスプーキーに、あくびまじりで声をかけた。 スプーキーに早起きなんてありえない。 きっと昨日PCに向かって、そのまま朝を迎えたのだろう。 寝不足のためか、不健康に色の白い肌は、今にも透けて消えそうだった。 「よく餌をやっちゃっているからね」 伸ばした手には餌が乗っているのか、様々な種類の鳥たちが群がっていて。 その腕や、肩や、足元にも。 月がすごくきれいだった。 それが欲しくて手を伸ばしたら、僕はこんなところに落っこちてしまった。 真っ白な羽は重たいここの空気の中で飛ぶにはあまりにも弱くて脆くて。 僕は空には帰れない。 「ハトの糞だって公害になる。本当はこんな事しちゃいけないんだよ」 自分が近付くと鳥が逃げてしまう。 過去に何度かやっていて知っているランチは、ソファーベッドからその後ろ姿を眺めているだけ。 ひどく、心配になる。 鳥たちは、いつか彼を遠くへつれていってしまうんじゃないか? 「…あんたどうせ寝てないんだろ?いいかげん寝た方が良いぜ」 その声に振り返ったスプーキーの背中には、白くて大きな翼があって。 でもそれは墨に落とした半紙が色を変えるように、下から黒く染まっていく。 そんな感じのヴィジョンが見えて。 スプーキーのもとに歩み寄った。 一斉に鳥が飛び立って。 彼は一人取り残されたような顔をして。 希薄な笑みで、ランチを見上げた。 羽は、真っ黒になって、消えた。 六対もの翼を漆黒に染めた、一人の男の話を知っているかい? 僕は、権力なんて求めちゃいけなかったんだ。 僕は本当は、ただここにいたいだけだったのに…。 |