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何だか眠いと言って寝込んでいるリーダーの居る方から怪しげな物音がするから 気になって様子を見にいったら、案の定風邪薬のビンと一緒になって 地べたに落っこちているものだから、呆れ返って大きくため息をついた。 「…ハハ……何だか頭が痛くなってきちゃって…」 「頭が痛ぇのはこっちだよ…」 そう言ってスプーキーよりも風邪薬のビンを先に拾い上げ、手のひらで一度弾ませる。 「頭痛ぇ奴がいまさら風邪薬飲んでどうすんだよ」 普通、頭痛薬だろ? 床に転がったままじゃ何かなと体勢を立て直すスプーキーに、 水の注がれたコップと頭痛薬を渡して、ソファベッドにどっかりと腰をかけるランチ。 そのひざに背中をもたれ、口に含んだ水と薬を飲み干した。 舌に残ったざらっとした苦さに、眉をしかめる。 でも、薬はほんとは貴重品で、契約社員やフリーアルバイター、 果ては小遣い暮しの学生の集まったスプーキーズに、 病人に優しい保険なんて便利な物とは縁遠く、 高い薬を暇無し飲んでるスプーキーなんかは、計理のランチに頭が上がらない。 不平なんて言おう物なら飲むなって言われるのがオチだ。 …でも結局飲まされるんだけど。 薬を飲み終わったのを確認して、 自分の座ってるソファベッドにかかった毛布の端を持ち上げて、入るように促すランチ。 しょうがないから…って言うかそれしか出来そうに無いから、 黙ってふらふらと毛布の下に潜り込んで、鼻から上だけ顔を出して、 「添い寝でもしてくれるの?」 って、へらっと笑ったら、ランチときたらかけらの遠慮も無く大あくびをして、 「そうだな」 って言って上体を横に倒した。 その転がった大きな背中に毛布越しにぴったりと背中を合わせて、 「僕も、少し寝るよ」 ってくっついた背中を残して体を丸めたら、 「寝過ぎで頭痛いんじゃねぇの?」 って背中が揺れた。 …そんな事言ってるけど、普段は添い寝なんてしてくれない。 具合の悪い時に甘えると、大抵の事は聞いてくれるんだ。この男は。 何だかその不器用さが嬉しくて、思わず顔が笑っちゃってるけど、 病人がこんな顔してるのもなんだか申し訳なくて、毛布を引っ張りあげて顔を隠した。 一定のリズムで上下する体に、眠っちゃったのかな?と思ってたら、 どうやら向こうもそう思ってたみたいで、 「寝たのか?」 って地べたを這うみたいに声を転がして、体を起こして、長い腕を伸ばして、額に触れた。 …結局、心配してるし… おかしくて、肩が震えた。 「…なんだよ。起きてんのか?」 少しバツが悪そうに離した手をジーンズのポケットに突っ込んで、 すねたような顔をしてるランチに、両手を広げ、差し出した。 「病人が何ニコニコしてんだよ」 …まったく。 でもそう言って、腕の中に入ってきてくれる。 …僕が病人だから? 病人だからなんだろうな。まぁ、いいや。 回した両手で、彼の背中をしっかり掴んで、目をつぶった。 そんなに心配しなくていいよ? 目が覚める頃には、きっと良くなってる。 君から、よく効く薬をいっぱい貰ったからね。 「明日、花見にでも行くか?」 急に言うから、またおかしくて。 笑いながらうなずいて、 うなずいてから、 「おやすみ」 って、言った。 「あぁ」 頬に触れる彼の胸から直接響く低い音で。 …おやすみ |