はね



今日は珍しくマンションから仕事に行って、
帰りはそのままアジトへ向かった。
トレーラーの扉をくぐると、大きなフライパンを軽々と持ち上げて、
ランチが振り返る。
「あんた、何付けてんだ?」
フライパンを持ったまま彼は近寄り、僕の胸元に手を伸ばす。
「…はね?」
ランチが手にしたそれを眺めて、首を傾げた。
「羽毛布団の羽かな」
白くて小さなそれは、彼によって、気付かれる。
「今日、仕事だったんだろ?」
「うん。ずっとくっついてたんだね」
ずっと、落ちなくて良かった。
そう思った。
この羽は、彼に見つけてもらうまで、ずっと頑張って待っていたんだろう。
僕と同じように。
羽は、ランチの手で、僕の胸ポケットに押し込まれる。
「ハハ…自分で捨てろって?」
「違う」
冬の外気で冷えた頬に、彼は手の甲で触れるようにノックして。
「あんたのだろ?」
悪戯に、意地悪に笑って、火の付いたままのコンロに戻る。
「僕の…かな」
これが僕の羽ならば、僕は救いを求める相手を間違えたりはしない。
地球の自転と同じように、何者かに回されるCD−ROM。
そこに磔にされた君を助けたくて。
神に祈りを捧げ、悪魔に命を捧げた。
神は彼らに忘却を与え、悪魔は僕に反覆を与える。
怖いくらい歪んだ、ごく個人的な幸福論。



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