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ソファーベッドから、上体を起こす。 「電気…つければいいのに」 まだ目のさめていない顔で何度か顔を擦り、カタカタと小気味良い音を立てて キーをたたくランチの覗いているモニターを、後ろから覗く。 「いいんだよ。お前が先に寝てたんだから」 まだぼけっとしていてモニターの中身を理解できない。 …でも、ランチのそう言う優しい気遣いは、理解できる。 痛いくらい。 モニターから漏れる明りに照らし出された、 少し痩せて、骨張った、その表情や、大きな手。 …すごく、切なくなる。 何でもないのに泣けてきそうなほど。 大好きなんだって、思い知らされる。 何でもないのにドキドキして、何でもないのに安心する。 側にいる事が許されて、よかったと思う。 つまらない独占欲なんかにプライドをかけて、今を壊す事なんて出来ない。 だけど、今だけってのは…やっぱ………だめかな…? すこし、眉が寄っちゃうのが解って、しゃがみこんだ。 固いイスの足にもたれて、地べたに座り込む。 ランチの、固い太腿に、頬をすりよせ、頭を乗せて。 涙が出そうだ。 すごく、切ないんだ。 どうして、こんな風に、なっちゃうんだろう… ただ、好きなだけなのに… 「俺さ、解ってんのよ?」 キーをたたく音が、ゆっくりになる。 「ランチがどこ見てるかくらい、解ってる」 ゆっくりになって、自然に、止る。 「でもさ…」 ………だめだ…もう、喋れない… 喉の奥が震えて、その声に、自分で泣けた。 自分の声が、切なさを増幅させる。 頭上を、ランチの腕や、手の影が動いているのがわかる。 髪に、触れて。 「解ってる」 そう、低くつぶやいて、ぱらぱらと、固い髪をもてあそぶ。 その、指の、熱。 …もう、この涙は一生とまらないんじゃないか?って、思う。 すごく、苦しくて、嬉しくて、切ない。 「………悪ぃな」 耳や、頬や、首筋に触れて。 それから、頬を覆うようにして、涙をぬぐってくれる。 優しくされると、辛くなる。 だけど… 優しくされたい。 もっと意志が強かったら。 もっとプライドが高かったら。 こんなに、苦しまなくて、済むのかな… どうしたら、いいんだろう… 熱い手のひらに頬をすりよせて。 …だめだよ…すごく、くるしいよ……… 「………うん」 謝罪の言葉にうなずいて。 でもそれは、肯定の意味なんかじゃない事くらい、ランチにも、わかってて。 でも… 「……悪ぃ」 もれそうな鳴咽を、噛み締めた。 …もう、終わりにしたい。 唇からは、涙の、味。 |