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船首からつながる欄干に背を付けて。 後ろへ進む船の動きと、正面からの風の間で。 煙はいつも、奇妙に滞っていた。 「タバコって、うまいのか?」 船首から、ルフィの声。 サンジがここに居る時は、たいがい、ルフィがそこに居た。 「最近は、な」 素っ気なく、返事をする。 「昔は、うまくなかったのか?」 「あぁ、クソ不味かったぜ?」 人が口に含んでいる物に興味があるのか。 珍しい問いかけに、律儀に答える自分がおかしかった。 「じゃぁ、なんで吸ってんだ?」 衣擦れの音が、船に当たる波音の合間に聞こえる。 だから、あえて振り返らずに。 「意地…だろ、たぶん。吸ってみるか?」 意地悪の、つもりだった。 初めて煙草を吸った時の自分と同じ反応を、見せてくれるかもしれない。 そんな、期待もあった。 子供が意地を張ってカッコ付ける様が、どれほどおかしく見えるのか。 昔の自分を、笑ってやるつもりで、吸いかけのタバコを後ろに差し出した。 でも。 「いや、不味いならいらねェ」 素っ気なく返され。 サンジは吹き出し、タバコを口元へ。 吸い込んだ。 美味いと、思った。 …この舌は、あの頃と比べてずいぶんとイカレちまったんだろうな… 吐き出した紫煙は、喉からこみ上げる苦笑に、途切れ途切れで。 それと一緒に、途切れ途切れに。 「…そいつが言えなかった…ってだけだったのかもしれねェな」 昔の自分に苦笑を送る自分に、未来の自分が送るだろう苦笑を思う。 それが、おかしかった。 |