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船室の隅っこは特等席で。 その角に座り込み、刀の手入れをする。 それが、日常だった。 「なぁ、ゾロは刀振るの好きか?」 放って置いても勝手に揺れる船の上。 ハンモックをワザと揺らして、ルフィは問う。 「あぁ」 口にくわえた布を落とさぬよう歯で噛んで。 顔も上げずに、ゾロは答えた。 その答えを、聞いているのか、いないのか。 「戦うの、好きか?」 次の問は、ゾロの返事の語尾をさらうように。 「まぁな」 「人を斬るのは?」 「多分な」 嘘は吐いていないが、適当な返事。 ゾロの視線は、刀に映る己の目から、ルフィのそれへ移動する。 目は、あわなかった。 ゾロではなく、刀に映る、何かを見ていた。 「俺も、戦うのは好きだ」 あまり、表情を変えない。 何が言いたいのか、だいたいの察しは付いていた。 かと言って、こちらから核心に触れる必要は無い。 視線を戻す。 「だろうな」 直に日に当てない刃の鈍い輝き。 落ち着く、輝きだ。 「でも、好きだから戦うんじゃないぞ?」 「なんとなく。で、誰より先に手ェ出してんのは誰だよ」 鼻で笑って、もう一度、視線を上げた。 今度は、目があった。 「ゾロは?」 「何が」 「戦うの好きなんだろ?」 …コイツはもしかしたら俺よりタチが悪いんじゃねェか…? いつもなら誘導尋問には決して引っかかることのないゾロ。 適当な返事から自分で勝手に結論を出して勝手に納得すりゃァいいだろ? いつもなら、そう思う。 だけど、今回は何故か、それに逆らってみたくなった。 天の邪鬼な、天の邪鬼。 裏を歩ってるヤツの、裏を返せば、表に行き着く。 たぶん、それだ。 「…俺は、人より先に刀は抜かねェ」 口の端だけ持ち上げて、目を、瞑る。 まぶたを上げれば、鈍い光に自分が見えた。 見えるはずのないルフィの顔が、音をたてるように笑顔に崩れるのが解る。 「そっか。じゃぁ、おんなじだ」 コイツの結論は面白い。 自分とは違う答えに行き着く。 でもそれは、いつだって気持ちがイイ答えだった。 「…何だ? そりゃ」 とぼけるように、眉をしかめて。 腹の中だけで、笑う。 …どうせ、お見通しなんだろ? |