最初に手に入れた宝物



どこまでも見慣れた風景が広がる。
疲れるまで走って迷子になっても、
誰かが家に連れて帰ってくれる。
冒険し尽くした狭い大地を抜け出して、
どれほど暴れても誰も怒らない、
大きな声を出しても誰も怒らない、
まだ見ぬ冒険がたくさんつまった、
大きな海へ行こう!
嵐が来ても、迷子になっても、誰も助けちゃくれないけれど、
きっと誰かが手を貸してくれる。
きっと何とかなると信じてるから。
きっと何とかなるにきまってる。
たったひとつの宝物を頭に乗せて。
たくさんの仲間と一つの船に乗る事を夢見て。
陽気な歌を歌いながら、輪になって踊り明かして。
叶わぬ夢のワケがない。
それほど遠い夢じゃない。
大きな帆の上の大きな海賊旗の下で。
目指すは『グランドライン』!
目指すは…『ワンピース』!!

「私、世界一の剣豪になるんだ!」
「けんごう…? って、何だ?」
「強い剣士のことだってお父さんが言ってた。私、世界一強い剣士になる!」
「ずるいぞくいな! 俺だって世界一のけんごうになる!」
「じゃあ、ゾロも鷹の目の男に勝たなきゃね」
「たかのめの男…?」
「うん。世界一の剣豪の人なんだって。
 そいつに勝たなきゃ、世界一にはなれないよ?」
「俺は大人にも勝てるんだぞ! そいつにも勝てる!!
 そいつ、どこに居るんだ?」
「それは、わからないよ」
「そうか。じゃあ、探しに行こう!」
「うん! 大きくなったら、一緒に探しに行こう!」
「約束だぞ!」
「あ、でもゾロは世界一にはなれないね」
「なんでだよ!!」
「だってゾロ、私より弱いじゃない」
「なんだとォ!? 本当は俺の方が強いんだ!! 勝負しろ! くいな!!」
「いいよ! 何回でも勝ってやるから!」
「今度こそ俺が勝ってやる!! いくぞ!!!」

オヤジ、今、どこにいるのかなぁ。
きっと今ごろはオヤジもメシ食ってる頃だぜ!?
海の上だから魚ばっかり食って、髭のかわりにウロコが生えてきたってよ!
え? テレパシーだよ! テレパシー!!
時々、オヤジからピピッと送られてくるワケよ! いろんな話がさ!
シマ模様のでっかいカレイをおどかしたらビックリしてシマが飛んでったとかな!!
そいつが勢いよくシマ模様を飛ばしたから、陸にいる馬に付いちまったんだ!
だから、シマウマの中には一頭だけ青と白のシマシマのヤツがいるんだよ!
なぁ、面白いか!? そうか!! 他にもあるんだぜ!?
ノコギリザメが船の底に穴を空けてさ!!
…なんだよ、もう食わねぇのか?
ダメだって、俺オヤジが帰ってくるまでに、かあちゃん元気にさしとくって…
そうそう、テレパシーで送っちまったからさ!
何言ってんだよ! 帰って来るって!! もうすぐだよ! あ…明後日ぐらいか?
じゃぁ俺、毎日、港に見に行ってやるよ!
帰ってきたら、でっかい声で言うからさ!!
海賊が来たぞ〜!! って、言うから! お!? もう来てるかもしれないぞ!?
よし! ひとっ走り見に行ってくる!! 
海賊が来たぞ〜!! って聞こえたら、すぐ元気にならないとダメだからな!!
メシもきちんと食っとかないとダメだぞ! わかったな!?

ジジィの本棚が解禁されて、最初に飛びついたのが、このノートだった。
潮とロウとホコリの匂いが染みついた、分厚いボロボロのノート。
そこには、たくさんの冒険がつづられていた。
正直、ドキドキした。
のめり込んだ。
でも、ふっと現実に帰る一言が、冒険の終わりには必ず記されていた。
『ここも、オールブルーではなかった。残念だ』
ジジィの口からは、たった一度しか聞く事の無かった、言葉。
それが、幾度も、幾度も記されていた。
夢は、途絶えた。
俺が、途絶えさせた。
始めて、オールブルーの話を笑わずに聞いてくれたヤツだ。
俺以上に、オールブルーを夢見たヤツだ。
俺をガキ扱いする、ムカつくジジィで、大嫌いなヤツだ。
でも、なんとかして、オールブルーを見せてやりたかった。
だけど………
航海日誌を閉じて、レシピがつづられたノートを開いた。
ジジィと一緒に戦える舞台は、もう、そこにしかない。
………夢を、見たんだ。 ジジィには言えない夢。 どこまでも深い碧の海の夢。
あふれる魚の鱗が反射して、底の見えない碧さを作る、オールブルーの、夢を…

大好きだよって、私も、言いたかった。
そう言われたから、言い返すんじゃなくて。
ねぇ、ベルメールさん。
私のしてること、間違えてなんかないよね?
いつかみんなで笑いたいって。
心の底から笑いたいって…思ったんだ。
だから、今は我慢して笑ってるの、許してくれるよね?
もう誰も、傷ついて欲しくなかったんだ。
もし、また誰かが自分のために死んだら、もう笑っていられないって思ったんだ。
だから、がんばるから。一人でもがんばるから…
泣かないからッ! ずっと…ずっと笑ってるからッ!! だから…見ていてね?
…へへ………黙って見てるのなんて性分じゃないだろうけどッ!
ねぇ、聞こえてる?
あのね、自分の意志で、大好きだよって言おうって、ずっと思ってた。
それから、一度だけで良いから、おかあさん…って。
呼んでも…いいかな……?
もう照れくさくて、ベルメールさんの前じゃ、言えそうにないからさ…。
ねぇ、知ってる?
母親と娘って、大きくなると友達みたいになれるんだって!
今からでも…友達みたいに、なってもらえるかな…?





「よっしゃ偉大なる海に船を浮かべる進水式でもやろうか!!」
「おれはオールブルーを見つけるために」

「俺は海賊王!!!」

「おれァ大剣豪に」

「私は世界地図を描くため!!」

「お…お…おれは勇敢なる海の戦士になるためだ!!!」

いくぞ!!! 『グランドライン』!!!!















陽気な歌を歌いながら、輪になって踊り明かして。
『ひとつながりの秘宝』は、その手の中にある。














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