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トントンとリズミカルな音。 丸めた大きな背中。 眉間に深くシワをよせたランチ。 そしてイスに座ったニコニコ顔の。 「……リーダー」 ずっとずっと感じていた視線に、思い切ったように声をかける。 「そこでジーッと座って見てんの、よさねぇか?」 「…どうしてだい?」 包丁とまな板の音に耳を傾けながらランチの後ろ姿を眺めていたスプーキーが、 きょとんとする。 この悪意のない表情を見たら間違いなく強く出れなくなる。 わかっているから、振り返らずに。 「気になんだよ」 ぶっきらぼうに。 どうしてそんなに気になるか、問われたら、終わり。 「そうかい?」 カタン…とイスから下りる音に、ほっとした。 隣りから、蛇口をひねる音。 …頭が痛くなりそうだ。 「…なに袖まくってんだよ」 その、はにかむような笑顔をむけて。 「手伝おうかと思ったんだけど」 「………」 大きなため息。 少ししゅんとしているのがわかる。 しゅんとして、うつむいて、 「やっぱり、駄目かい?」 そう言って、包丁に視線を集中させているランチを覗き込んだ。 「あぶねぇな。顔出すなよ」 濡れていない腕のあたりで額を押し返す。 押し返されて後ろにつんのめりそうなスプーキーを、押し返した腕で慌てて支えて。 少し恨めしそうなその顔に、苦笑と、額に小さなキス。 「洗い物くらいは出来んだろうな?」 「報酬の分くらいは、働くよ?」 額に残る余韻を眺め、にっこりと笑う。 …仕事は増えちまうけど、まぁ、良いか。 一つの調理器具をいつまでも洗いながら、 「今日はカレーかな?」 適当な大きさに切られていく野菜を、そしてランチを眺めるスプーキー。 こんなに良い位置から鑑賞を許されるなら、もっと早くから手伝えばよかった。 そんな風なスプーキーを横目に、 …このままカレールウ仕舞い込んで、肉じゃがでも作っちまおうか… そんな意地悪を考える、ランチだった。 |