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「お誕生日おめでとう!」 寝ぼけまなこで、でもいつもの癖で、 何の気無しにPCを立ち上げたら、リーダーの出迎え。 「…はぁ?」 「はぁ?って…誕生日だろう?今日」 …そういや、去年もこんなだったな…。 去年の今日は休日で、前夜に皆で週末恒例行事として騒いで飲み明かして、 翌日の昼頃、目が覚めたと同時におめでとうラッシュを受けた。 母さんが、まだ死ぬ前の事を、思い出した。 家族で、一年のうちに一番豪華な食事の出る、一番楽しみだった日。 母さんの隣りで、一緒に料理を作って。 一番、母さんがニコニコしていた日。 生まれてきてくれて、ありがとう。 そういう日。 『お誕生日、おめでとう』 『おめでとう潤之介』 「………どうしたんだい?」 はっと、我に帰る。 「今年は、お祝いしてあげられるの、僕だけなのかな?」 …家に、帰れ。そういう事だろうか。 この人も案外おせっかいだな… 思わず吹き出して。 「え…?な、何かおかしな事言ったかい?」 少し慌てたように、自分の言葉を思い返す。 少し穏やかな気分になって、だからか、決心が固まった。 「家に、帰ろうと思うんだ」 あまり、器用とは言えないタイミングで切り出す。 そんなランチに、優しく微笑んで。 「良い事だと思うよ?」 柔らかな、声で。 …わかってて、言ってんのか? シックスも、ユーイチも、たぶんここへはしばらくの間、数ヶ月、数年間、 下手したらもう二度と、帰ってこないかもしれない。 こんな所で一人きりで? 最悪、スクラップになる日だって来るかもしれない。 痛みは無いと言ったって、痛覚だけが痛みじゃない。 だけど… 良いのか…?本当に、言っちまっても… 「…リーダー」 「ん?なんだい?」 「…プレゼント…欲しいんだよ」 目を大きくするスプーキー。 「…どうしたんだい…?」 ゴクリと、つばを飲んだ。 …何でこんなに緊張しなきゃなんねぇんだ…? 心臓がバクバク言って、声がひっくり返りそうだ。 こころなしか肌も汗ばんで来る。 「…ランチ?」 かけられた声をきっかけに、ダンッと、ノートパソコンをデスクの上に乗せた。 振動でキーボードが跳ねる。 息を、吸った。 「ひ…引っ越し、してくんねぇか?」 案の定、声がひっくり返ったが、お構い無しに、話を続ける。 「俺達に、このトレーラーハウスを維持できるとは思えねぇし、 ここにだって、そうしょっちゅう来れなくなる。 もしかしたらもう来ないかもしれない。だから…」 「僕自身が、プレゼントって訳かい?」 くすくす笑って。 「しょうがないな。誕生日だからね」 「…やなら、いいんだぜ?」 少し下の方に視線をそらして、平静を装う。 らしくない、表情。 スプーキーは、笑いを含んだ、でも、ひどく優しい声で、 「喜んで、お伺いするよ」 そう、言った。 「ただいま」 バツが悪くてふてくされたようなランチのしばらくぶりの帰宅の声に。 「…遅かったな」 ランチと同じ声で。 「おかえり。誕生日、おめでとう」 小脇に抱えたノートパソコンからは、小さな、笑い声。 |