魂のあるべき場所3



20年近く生きてきたけど、こんなに触れたい人に会ったのは初めてだった。
別にいつもそう言う訳じゃない。
ただ時折、ひどく触れたくなって、その存在を確かめたくなって、でも、出来なかった。
そんな時あんたは何を察する訳でもなく俺に触れてきて、
「僕は、本当は寂しがりなのかもしれないなぁ」
そう言って、自嘲を意識した笑みを浮かべて。
だから、自分が理解できた。
寂しがりなのは俺も同じだ。
でも、そう言えなくて、黙って、抱きしめるだけで。
いつだって、逃げていた。
カッコばかりつけて、弱い所を見せてくれるあんたに、甘えてばかりいた。
PCに向かって、そこにはいつもたくさんの人間と接触する機会があったけど、
何も、確かではなく。
電話をすれば、誰かが答えてくれるけど、それだって、確かなんかじゃない。
そこにいるから、触れたくなるのか?
そう思いもしたけれど、そうじゃない。
理由なんて、わからない。
そんな物、無くたっていい。
触れたいあんたに触れられて、ひどく、幸せだった。
それだけが、確かな事だった。
目を開けた。
真っ暗だった。
電源を落としたノートパソコンが、すぐ隣りに、転がっていた。
魂も、それを入れる器も、何もなくなったあんたに触れる事は、もう、不可能だ。
だから、せめて…。
冷たく固い、四角いただの箱に、触れて。
それを抱きしめて。
その名を呼ぶ事しか、出来ない。
結局、自分の事しか見ていなかった俺を責めてくれるあんたは居ない。
罰せられたら、どれだけ、楽になれるだろう。
でも、そうしてくれるあんたは、もう、居ないんだ。
明日になれば、また、このノートパソコンを立ちあげてしまう自分を。
せめて、自分で、咎めよう。
こんな夜には。
許されるべき行為ではない事を、理解出来なくなる、その、前に。



TOP Q小説跡地 裏小説跡地