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モニターにむかって大きく息を吐いて、慣れた手つきでタバコを取り出すと、 それを咥え、体中のポケットに手を触れる。 「…吸いすぎだぜ?」 背後から差し出されたライターが、聞きなれた音で点り、 ありがとう。と、それに顔を近づけ、大きく息を吸った。 「…そんなに美味いのか?」 決して理解できるとは言い難い顔でそう尋ねるランチに、 「そんな事はないよ?」 そう言って、柔らかに、目を細める。 美味くはないけど、なかったら死んじゃうかもね そんな感じ。 そのランチの子供みたいな発言に少し微笑んだ口元へ、当の本人の大きな手が伸びる。 乾いた唇に少し張り付いた感じのそれを剥して、唇を重ねた。 「…確かにな」 確かに美味くはない。そういう意味だろうか? そう言いながらも、もう一度唇を重ね、軽く吸った。 …何だか可笑しい。 「美味くもないのに、どうしてするんだい?」 その穏かに笑いを含んだ声に 「美味くはないけど、なかったら、死んじまうんだろうな」 そう言って、意地悪く笑った。 「…のろしみてぇだな」 スプーキーから取り上げたタバコに目をやりながら呟く。 細く煙の上がり続けるそれを挟んだ指を、円を描くように回した。 「助けてくれって、言ってるみてぇだ」 「そんな細いのろしじゃ、誰も気付いてはくれないよ」 …君以外はね。 「助けてくれって言ってるから、君はキスをするのかい?」 そう言って、小さく声を出して笑うスプーキーに、 べつに、タバコを吸ってるやつ全員に、こんな事してるワケじゃないぜ? って、笑って、もう一度キスをして、その唇にタバコを挟み、くるりと背を向ける。 「あんまり、吸いすぎるなよ?」 その遠ざかる広い背中に、吸い込んだ紫煙を細く吹きかけた。 扉が閉まる。 …こんな細い煙じゃ、誰も気付いてなんかくれない。 少し寂しい自嘲の笑みを、煙と共に吸い込み、吐き出した。 …カチャッ 扉が開く。 「…降ってきやがった。しばらく、帰れそうにねぇな」 「ハハ…のろしは、雨を呼ぶんだよ?」 雨を、大地の潤いを求めて、昔の人はのろしを上げたんだ。 …結構、効くもんだね 濡れた体を遠慮もなくベッドに投げ出し、ふてくされたように眉をしかめるランチに、 今度は僕から、キスをした。 天の恵みに、感謝の、キスを。 |