ちいさなひとのおおきなちから



「オレね、ランチの手、大好きなんだ!」
大きくって、指が長くって、節がしっかりした、その年齢と不相応な手。
少し疲れた感じの、でも優しい手。
しかしランチはその小さな指をからませて遊ぶユーイチの様に、瞳の色を落とすと、
「…ロックバイターって知ってるか?」
と、低い音を出した。
「うん!オレ、ネバーエンディングストーリー大好きだもん!」
大きな手を弄びながら、そこから視線を外さず、でも笑顔を認識できるような声。
ランチは、それとは対照的にどこまでも落ちていく声のトーンを意識的に持ち上げ、
かすれた音に色を付けるみたいに、それを言葉にした。
「…そいつがな、言うんだよ。こんなに大きな手をしているのに、何も出来ないって」
全てを掴めそうな大きな手で、しかし何も確かな物なんてなくて。
何も掴めない。
大切な人を、護る事すら出来なかった大きな手。
ただ、大きいだけで、何を護る事も出来ない…
「うん。でもオレ、好きなんだ!」
ロックバイターも、ランチも、無力だと嘆く大きな手を持つ人だから。
「オレ、ランチの手、大好き!」
そう言って、力のない小さな手で、でも精一杯、ランチの手を握った。

こんな、小さな手で、何が出来る?と、誰もが笑うだろう。
でも、何よりも無力な生れたての赤ん坊は、
 つないだ手を放したら、泣く事を知っている。
大切な人の手を放した事すら、気付かなかった、大きくて無力な手。
こんな、小さな手なんて、
 この手のひらから抜けてしまっても、きっと気付かないだろう。
でも、この小さな手は。
こんな小さな手で必死に何かを護ろうと、捕まえた手を、放そうとはしない。
こんな、小さな、手で…。

ランチは、その手を包むようにもう片方の手を添えて、祈るみたいに、うつむいた。
うつむいて、つぶやく。
「…俺も、お前の手は、好きだぜ?」
「うん。ありがと!」
まるで知ってたみたいに、さも当然のようにそう言って、
俺も大好き!と、何度も何度も繰り返した。

ちいさなひとのおおきなちから。

大きな手に包まれた小さな手は、大きな人だって、包みこむ事が、できるんだ。



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