郷愁

 眠りに就く瞬間、まどろみの中でいつも思う。
 私が眠るのと彼が眠るのは、どっちが早いのだろうか。
 昨晩は、そう思っているときに微かないびきが聞こえた。
 昨日、遅く起きて外でブランチをして、そのまま買い物にでかけて一日引っ張り回したことをうつろに思い出した。
 目的も無くあちこちの店に立ち寄っては目につくものを買い込み、何軒も何軒も歩いた。
 途中、本が欲しくなり、大きな本屋を探して二時間も右往左往した。
 その後、私が疲れ果てて眠りこんでも何一つ文句も言わずしっかり運転し続け、私が目覚めた時にはもう家の前だった。
 ゆっくりと夕食をとり、早速買ってきた、もう飾る場所が無いとたしなめられつつも強引に買ってしまった鯨のパズルをいくらか作った後、いつものようにごろごろしていたら日付けが変わったので寝ることにしてベッドに入った直後のことだった。
 私のわがままな要求につき合って、一日中あちこち迷ったりしながら車を走らせ、遠出もしたのだから尚更のことだ。
 疲れていたのねぇ、と、妙に愛しくなってしまい、たまらずかわいい寝顔にキスをした。
 そしてそのたくましい腕に抱かれて私は、いつものように彼の呼吸と心臓の音を聞きながら安らかな眠りに落ちる。
 至福の喜び。そう呼ぶ以外になんと呼べば良いのか。この眠りがある限り、私は救われる。
 それなのに、どんなに固く抱き合って眠っても、目覚める時間も見る夢も違う。
 そのことは身を裂かれる程に辛い現実。
 でも、彼の私への愛はその辛さから私を救い出すのに充分に足りる。
 夜中、ふと目が覚めると寝相の悪い私は布団から足やらお尻が出てしまっている。それを中に入れようと少し体を動かすと、寝ている彼が無意識のうちにも布団をかけ直し、抱き締め直してくれるのだ。
 眠っていても私を気遣ってくれる優しさに安心しきってまた眠りに就くことができる幸せ、それ以上のものなど何も要らないとさえ思える。
 以前、目が覚めて体を動かした私をいつものように抱き締め直して「愛してるよ」と、まるで一昔前の少女漫画のような歯の浮く寝言を言ったことがあった。
 でも、私はその時歯が浮いたりせずに幸せな気持ちになれた。
 それだけで、何故にこれ程幸せに満ち足りて眠りに就けるのか。
 狭いベッドに二人でも、まさに后の位もなににかはせむ、の心境。
 言い古された陳腐な言い回しなど流行らなくても、本当に、どんな高級な羽毛の布団でも、彼の腕、彼の息、彼の体温、彼の匂い、私を包むすべての彼に勝るものは無いだろう。


未完(^-^;


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