綾崎咲也さんから頂いた(頼んだとも言います)小説です。

読んだら感想を綾崎さんに送っていただけると幸いです。


 

 

朝、とあるシティの一角にある家。

 

そこに住んでいる若い二人の男女は朝食を取っていた。

 

ちなみにメニューは、トースト、ボイルしたウィンナー、様々なの野菜に彩られ、自家製ドレッシングで味付けされたサラダ、といった具合である。

 

意外かも知れないが、この朝食を作ったのは少女の方ではなく、少年の方だ。

 

理由は・・・これを読んでる方なら既にお分かりだろう。

 

と、ちょうど朝食が終わったらしく二人が食器を持ってキッチンに向かった。

 

しかしサラダの盛られていたボウルと、牛乳をついであったコップ以外は紙のため、ゴミ箱にすぐさま

捨てられた。

 

そのほかの食器も、すぐには洗われず一旦流しに置かれるだけだった。

 

「(・・・いつも焔さんにやってもらってる・・・)」

 

少女は食器を置くと少し俯いた。

 

朝食は焔と呼ばれた少年が作った。

 

というより、料理は彼の仕事なのだ。

 

そのことに、彼女は罪悪感を感じていた。

 

「・・・?どうしたの、鈴?体調でも悪いの?」

 

彼女、鈴が少し俯いていたので心配したのか、焔が顔を覗き込んできた。

 

「っ!い、いえ!なんでもないです・・・」

 

気づくと焔の顔が至近距離にあったので、鈴の顔は一気に朱を帯びた。

 

「そう?なら良かった(ニッコリ)」

 

その言葉を聞いて安心したのか、鈴に向かって邪を感じさせない笑みを向ける焔。

 

その笑みを受けて、ますます鈴は赤くなった。

 

「わ、わ、私、部屋で着替えてきます。わ、私が洗うんで食器は置いといてください(真っ赤)」

 

「あ、ああ、うん。わかった(?)」

 

知った人間の9割から“鈍感”、“鈍い”といわれている焔に、何故鈴が動揺しているか分かるはずもなかった。

 

鈴は早足で部屋に向かった。

 

そんなに距離はないので、あっという間に部屋のドアの前についた。

 

「(・・・今日、なんかなかったっけ?)」

 

何かが頭の中に引っかかっていた。

 

そして自室のドアを開け、壁に掛かったカレンダーを見てそれを思い出した。

 

「(そっか、今日は・・・)」

 

 

 

鈴と焔のある一日 外伝(になるのかな?)

 

 

            大切な日は大切な人と共に

 

 

 

「じゃあ、晩ご飯の材料を買いに行って来ますね」

 

玄関で靴を掃き終えた鈴が僕に向かっていった。

 

「ホントに一人で行く気かい、鈴?なんなら僕もついていくけど・・・」

 

僕はこの言葉を言うのは、既に5回を超えてると思う。

 

でもその度に・・・。

 

「大丈夫ですよ、私だって子供じゃないんですから」

 

という返事が返ってきた。

 

でも、心配だなあ・・・。

 

何時またあの電波皇帝みたいなのが出てくるか分からないし・・・。

 

ちなみに今日の鈴の服装は、夏らしいワンピース、日焼け防止も兼ねた鍔の広い帽子。

 

どちらも白で鈴の清楚さがよく出ていると思う。

 

「行って来ます。焔さんは家で待っててくださいね。間違っても後を付けて来ちゃ行けませんよ?」

 

・・・ば〜れてら(苦笑)

 

しょうがない、おとなしく家で待ってよう。

 

「うん、いってらっしゃい」

 

そして鈴は出かけていった。

 

心配だけど・・・こっそりつけているのがばれて、『焔さんのうそつき』とか言われると辛いから大人しくしてよう・・・。

 

でも・・・何で鈴はいきなり晩ご飯を作るって言い出したんだろう?

 

 

《時間は過ぎて、鈴はデパートについて買い物を始めました》

 

「(まずは、本屋さんで料理の本を買おうと。それから、何を作るか決めればいいよね。)」

 

そう考えて鈴は本屋のあるフロアに向かった。

 

「(何作ろうかな・・・。これは材料が手に入りそうにないし、これはソースが難しそう・・・)」

 

本屋で料理本を立ち読みしながら、メニューを何にするか悩んでいた。

 

その料理本は、普通の家庭料理を載せたものではなく、本格的な料理ばかりが載っているものだった。

 

「(・・・あ、これなら私にも出来るかも。材料も簡単に手に入りそうだし・・・。うん、これに決定!)」

 

納得できたメニューが載った本を見つけ、レジで精算を済ませる。

 

「〜♪(ドンッ)きゃっ!」

 

気に入った本が見つかったせいか、注意散漫になっていたようで鈴は人にぶつかってしまった。

 

さらに、ぶつかった勢いで尻餅までついてしまった。

 

「すまない、ボーっとしてた。大丈夫か?」

 

鈴が軽かったのか、ぶつかった相手の男性は全然ダメージらしいものを受けていないようだった。

 

謝りながら、鈴に向かって手を差し出す。

 

「(・・・この人、誰かに似てる・・・?)」

 

鈴はぶつかった相手の男性を見て、そう感じた。

 

「・・・?本当に大丈夫か?脚とか痛めたんじゃないか?」

 

へたり込んだまま動かない鈴を見て、かなり心配になったらしい。

 

さっきよりさらに顔を近づける。

 

「っ!あ、あの、だ大丈夫です!こちらこそすみませんでした!」

 

「お、おい!」

 

鈴は凄い勢いで立ち上がり、男に一礼して走り去っていった。

 

鈴は激しく人見知りをする子なのだ。

 

「・・・なあ、美津音」

 

男は近くにいた連れと思われる女性に声をかける。

 

「何、咲也?」

 

「俺って・・・どこか怖いところあるか?」

 

「・・・雰囲気かしらね」

 

確かに、この男性の服は黒色が多いため、見た目はかなり・・・である。

 

「・・・・・・・(T_T)」

 

咲也と呼ばれた青年は、鈴に走り去られて結構ショックを受けたようだ。

 

 

 

《一方鈴は食料品売り場に来ていました》

 

「(・・・あの人に悪いことしちゃったかなあ。でも、知らない人って怖いし・・・)」

 

鈴は咲也から走り去ったことに、少し罪悪感を感じていた。

 

「(それより、何を買えば良いんだっけ?)」

 

早速さっき買った本を開いて、必要な材料を確かめる。

 

そして、必要な物を買うために歩き出した。

 

 

 

・・・45分ぐらい後、鈴は必要な物を買い終えて支払いも済ませた。

 

「〜♪(良かった、全部材料が揃って。・・・ちょっと多くなっちゃったけど)」

 

事実、抱えている紙袋がかなり大きくなっていた。

 

鈴が作る予定の料理は、一つ一つの過程は簡単だが材料がべらぼうに多かった。

 

全部材料が揃い、鈴はご機嫌な様子で帰路についた。

 

「(ドンッ)きゃっ!」

 

荷物で前方がよく見えなかったため、鈴はまた前から歩いてきた人にぶつかってしまった。

 

今度は肩が当たった程度なので転ばず、荷物も落とさずにすんだが・・・。

 

「す、すみません!前をよく見てなかったもので・・・」

 

鈴はぶつかった相手に頭を下げて謝罪する・・・が。

 

「ああ?そっちからぶつかっておいて『すみません』で済ませる気か?」

 

ぶつかった相手が悪かった。

 

ヤーさん等と呼ばれる阿呆共の中で、一番たちの悪い下っ端が相手だった。

 

「あ、あの・・・」

 

ただでさえ人見知りする鈴、それに加えて相手がこんなやつなので怯えきっている。

 

「肩に傷が残ったらどう落とし前つける気だ?おい」

 

無茶苦茶なことを言ってくる。

 

見た感じ痛そうでもないし、何よりあの程度の衝突で傷など出来るはずがない。

 

「あ・・えぅ・・・」

 

完全に怯えきっているようで、ちゃんと言葉がでてこない。

 

「へっ、取り敢えず治療費10万程出せや。それで取り敢えずは許してやらあ」

 

「そん・・・お金は・・・」

 

金を請求されても、さっきの買い物で殆どを使い切っていた。

 

というか、端から必要最小限の金額しか持ち合わせてなかった。

 

「ああ!?払えねえってか?だったらお前自身で稼いでもらおうか!」

 

そう言って男は鈴の腕を掴もうと手を伸ばす。

 

「っ!!!(嫌、助けて、焔さん!)」

 

もう声は出ず、頭の中で焔に助けを求める。

 

しかし残念ながら、此処に彼はいないし、二人にテレパスの能力もない。

 

此処に彼が助けに来てくれる可能性は皆無だ。

 

「なにをしている?」

 

不意に、鈴の後ろから声がした。

 

「!!(焔さん!?来てくれた?)」

 

声がしたという理由だけで、鈴はその声が焔のものと決めつけた。

 

こんな時助けてくれるのは彼しかいないという絶対の信頼の表れであろう。

 

しかし、振り向いた鈴の目に映ったのはさっきデパートでぶつかった“咲也”だった。

 

「(焔さんじゃ・・・ない。この人は・・・さっきの?)」

 

「自分より弱いものにたかる男は・・・感心しないな」

 

咲也は鈴を後ろに下がらせ、彼女とチンピラとの間に割って入った。

 

「るせぇ!でしゃばってくるんじゃねえ!」

 

そう叫んでチンピラが殴りかかってきた。

 

咲也は体を右に捻り、左足の爪先はそのまま残す。

 

「だらあ!っっとあああ!」

 

チンピラは勢いに乗ったまま、咲也の脚に引っかかってこけた。

 

「猪突猛進型のやつは簡単に足下をすくえる。もうちょっと冷静になるんだな」

 

咲也はこけたチンピラを見下ろして冷静に言う。

 

・・・が、チンピラの反応がない。

 

あまりに凄い勢いのままこけたので、頭を打って脳震盪を起こしたらしい。

 

「やりすぎじゃない?咲也」

 

咲也の連れで、今は鈴の隣に立っている女性“美津音”が声をかける。

 

「俺はただ足をかけただけだ。こいつが勢いよく走りすぎたのが原因」

 

「あ、あの・・・」

 

鈴が遠慮気味に口を開く。

 

「あ、ごめんなさい。大丈夫?なにか、されなかった?」

 

美津音は鈴に声をかける。

 

しかし、鈴はおどおどとしているだけで答えない。

 

「ああ、そうそう。自己紹介がまだだったわね。わたしは門橋 美津音って言います。でこれが・・・」

 

「おい、何で俺は‘これ’なんだ?」

 

「じゃあ・・・この怖い顔が・・・」

 

「・・・もういい、自分で言う。俺は綾崎 咲也だ」

 

二人の自己紹介が終わる、咲也はかなり不機嫌になったが・・・。

 

特に、【怖い顔】と言われたときに不機嫌度はかなり加速したようだ。

 

「あ、ありがとうございました。助けてくださって・・・」

 

やっと、鈴が口を開いた。

 

先のやりとりを見て、少し警戒を解いたようだ。

 

「いいのよ、そんな気にしなくて」

 

「おい、お前がやったわけじゃないだろうが」

 

「わたしは構わないわ」

 

「そう言う問題じゃないだろ!?」

 

この二人が話すといつのまにかミニコントになっている。

 

回りの目も気にせずに言い合っている。

 

「・・・(クスクス)」

 

「・・・あ!」「おっ」「えっ!?」

 

ちなみに上の台詞は左から、美津音、咲也、鈴の順番だ。

 

「やっと笑ってくれたね」

 

「笑った顔の方が似合ってるぞ」

 

「怯えた顔が似合う人なんていないわよ」

 

そう、鈴は二人のやりとりを見て笑ったのだ。

 

さっきまで怯えていた表情からは想像できないほど、鈴の笑顔は美しかった。

 

「え、あの・・・っと・・・(//_//)」

 

当の本人は、自然に笑ったことに顔を真っ赤にして戸惑っている。

 

いや、戸惑っているのは笑顔を褒められたからかな?

 

「ホント、笑った方が凄く可愛いわよ。もう食べちゃいたいくらい・・・」

 

「美津音、それは問題発言だ」

 

「・・・冗談よ」

 

「本当か?」

 

「・・・実はちょっと本気」

 

美津音がそう言うと、咲也と鈴は頬を引きつらせて後ずさる。

 

「ちょっ・・・冗談、冗談よ!わたしはいたってノーマルよ!」

 

必死になって否定する美津音。

 

しかし、二人は後ずさったままだ。

 

「そ、そう言えば貴女の名前聞いてなかったわよね?」

 

そして話題を一気にすり替える。

 

「あ、すみません。申し遅れました、私は鈴と言います」

 

鈴は二人に向かって、ぺこりと頭を下げて自己紹介をする。

 

「鈴ちゃんか・・・良い名前よね」

 

美津音は普通に笑いかけた。

 

が、先ほどの発言のせいで、二人は更に後ずさる。

 

「だ、だから!あれは冗談だってば!」

 

「・・・まあ、そう言うことにしといてやる」

 

取り敢えず、美津音はノーマル(仮)と言うことになった。

 

「(仮って何よ・・・)それで、本当に大丈夫?怪我とかはない?」

 

「はい、大丈夫ですのようです。それより、あの、さっきデパートで逃げてしまってすみませんでした。初対面の人が苦手なもので・・・」

 

どうやら咲也から逃げたことをまだ気にかけていたらしい。

 

またぺこりと頭を下げて謝る。

 

「気にしないで。何とも思ってないから」

 

「おい、だから何でお前が答える」

 

「いいじゃない。それとも、今更鈴ちゃんを咎める気?」

 

「いや、そんな気は毛頭ないが・・・」

 

「なら問題ないわね」

 

「いやだから・・・」

 

また二人のミニコントが始まる。

 

「仲良いですね。恋人さん・・・ですか?」

 

「「だれがこんなやつと!!」」

 

鈴の言ったことに対する返事が、見事に被った。

 

それを見て、また鈴が笑い出す。

 

「(クスクス)やっぱり仲良いです」

 

「「・・・はあ・・・」」

 

今度はため息が被った。

 

恋人と言うより、コンビだな。

 

「ところでね、鈴ちゃん。いくら大通りとはいえ、ここら辺の治安の良いとは言えないから、鈴ちゃんぐらいの年頃の子が一人で出歩くには危なすぎるわ」

 

美津音がいきなり真面目な話を始める。

 

「はい、すみません。でも、今日はどうしても一人で来たかったんです」

 

鈴はちょっと沈んだ顔になる。

 

「あ、謝らないで。怒ってるわけじゃないから。でも、出かけるときはなるべく二人以上、例えば(咲

也を指さして)こんな奴でも良いから男の人を連れて歩いたら安全よ」

 

「おい、人を指さして“こんな奴”呼ばわりはないだろう?」

 

美津音の行為に、咲也はムスッとする。

 

「はい、なるべく誰かと一緒に来ることにします」

 

「うん。ところで鈴ちゃん」

 

美津音がまた鈴に問う。

 

「なんで今日は一人で来たかったの?」

 

「えっ、それは・・・あの・・・(//_//)」

 

鈴は顔を真っ赤にして俯く。

 

「・・・!(ピピーン)」

 

「・・・???」

 

その表情と手荷物を見て、美津音は理由を悟ったようだ。

 

こういうことに激鈍い咲也は分かってないようだ。

 

「あ、言い難かったら良いよ。ゴメンね、変なこと聞いて」

 

美津音は理由が分かったので、これ以上の追求を止めた。

 

「(俺には何が何の事やら・・・)」

 

咲也は本気で分かってないようだ。

 

「い、いえ。・・・あっ」

 

鈴が咲也の顔を見て声を上げる。

 

「?どうした?俺の顔、何かパーツが足りないか?」

 

「・・・全部あるわよ。いい加減、そのネタ止めなさい。飽きたわ」

 

珍しく、美津音がつっこむ。

 

どうやら咲也はこの台詞を多用するようだ。

 

「はい、全部ありますよ(^^;)」

 

「ん、そうか。そろそろ新ネタを考えるかな・・・」

 

鈴が声を上げた理由はそんなことではなかった。

 

デパートでぶつかったとき感じた、『誰かに似てる』の答えが出たのだ。

 

「(綾崎さんの目、優しい目だけど・・・奥に悲しいものがある。凄く深い悲しみ。この目は・・・)」

 

「・・・?鈴ちゃん、どうかした?」

 

俯いていた鈴を心配して、美津音が顔を覗き込んだ。

 

「あ、何でもないですっ」

 

鈴はすぐに元の表情に戻った。

 

「おい美津音。そろそろ・・・」

 

咲也が腕時計を見て美津音を促す。

 

「ん、あら、もうそんな時間?ゴメンね、鈴ちゃん。わたしたちもう行かないと・・・。今日は楽しか

ったよ。またね」

 

二人はこの後何か予定があるようで、そろそろお別れらしい。

 

「はい、お話しできて楽しかったです。またどこかでお会いしましょうね」

 

「じゃあな」

 

咲也と美津音は、鈴が行く道と違う方へ歩き出した。

 

鈴と別れてからも、二人は何かしょうもないこと言い争っているようだった。

 

「(本当に仲がいいんだなあ。二人はお似合いだと思う。私も焔さんと仲良く二人で・・・ってわ、わ、何考えてるんだろう、私。早く帰らなきゃ)」

 

鈴も自分の家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

《鈴はようやく自分の家につきました》

 

「ただいま、焔さん」

 

鈴は玄関から家の中に向かって言う。

 

すると、一室から焔が顔を出す。

 

「お帰り、鈴。ゴメン、ちょっと手が離せないんだ」

 

そう言ってまた部屋に引っ込んでしまった。

 

「私、台所で晩ご飯の準備しますね」

 

鈴は買ったものを持って台所に向かう。

 

「あ、僕もこれが終わったら行くよ」

 

「い、いえ!今日は私一人でやりますから・・・」

 

「そう?なら鈴に任せるよ」

 

いつもなら絶対に鈴一人ではやらせないのだが、今日はいつもと雰囲気が違うのでそうもいきそうにな

い。

 

鈴はまず自室でラフな格好に着替え、エプロンをつけた。

 

そして、鈴の闘い(大袈裟か?)が始まった・・・。

 

買ってきた本を開き、作り方を確認する。

 

「・・・(えっと、こうして、ああして、こうなるんだ)」

 

そして早速取りかかる。

 

まず飼ってきた鳥のもも肉を取り出し、まな板の上に置く。

 

それを魚を三枚におろすように切る。

 

鈴の包丁使いはゆっくりと、慎重に進んでいく。

 

そして、買ってきた鶏肉を全て切り終える。

 

「(よしっと。次は・・・)」

 

そして料理はどんどん進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

鶏肉は下味を付けて、今はオーブンの中。

 

ソースは弱火にかけている。

 

その状態で、鈴はサラダ用の野菜を切っていた。

 

野菜を切りながら、ドレッシングは何が合うか考えていた。

 

「(和風、フレンチ、アメリカン・・・どれが今日のメニューに合うかな)」

 

今までにないくらい、料理は順調に進んでいた。

 

今までと大きく違う点は、自分で味見をしながら料理をしたことだろう。

 

料理が下手な人の大部分は、自分で味見をしないため変な味のものを作ってしまうからだ。

 

初めはドキドキしながら調理していた鈴だが、もう肩の余分な力は抜けていた。

 

・・・と、まな板の上のおいてあるトマトが突然転がりだした。

 

このままいくと床に落ちるだろう。

 

「あっ・・・」

 

それに気づいた鈴は、慌てて落下を始めたトマトに左手を伸ばす。

 

が、あまりに勢いが良すぎてバランスを崩した。

 

「・・・きゃあ!」

 

倒れると同時に、右手に持っていた包丁が宙を舞い、手が滑ったことでまな板がひっくり返った。

 

 

 

 

 

《ちょっと時間を戻して場面転換です》

 

焔の部屋からカタカタとか、カチカチという音が聞こえてくる。

 

「(はああ、心配だなあ・・・。鈴には悪いけど、今までがあれだったからなあ・・・。かといって、普通に行ったらそのまま帰されそうだし・・・。そうだ!飲み物取りに行く振りをしてさり気なく覗こ

う!それなら・・・)」

 

思い立ったら直実行、と言った風に立ち上がる。

 

そしてそのまま台所に向かおうとする・・・と。

 

 

 

がしゃあああああああっっっっ!!!!

 

 

 

「(!!!何の音だ!?)」

 

焔が立ち上がった瞬間、凄まじい音が聞こえてきた。

 

「鈴!」

 

焔は自室から飛び出し、すぐさま台所に向かう。

 

台所に着いた焔が見たのは、床に散らばった野菜、まな板、包丁、赤い液体、そしてその中に倒れてる

鈴の姿・・・。

 

こんなところを目の当たりにしたら、普通の人なら最悪の事態を連想する。

 

しかし、焔は同じく床に落ちていた潰れたトマトを見つけて、ほっと胸をなで下ろす。

 

そして鈴に近づいて、肩を揺すりながら声をかける。

 

「鈴、鈴?」

 

すると、鈴はゆっくりと上半身を起こす。

 

「・・・焔さん?」

 

「ああ、僕だよ」

 

焔の姿を見て安心した様子の鈴。

 

鈴の無事を確認して安心した焔。

 

二人は共に安堵の表情を浮かべた。

 

「大丈夫?怪我とかは・・・」

 

「えっと・・・特にないと・・・痛っ」

 

そう言って起きあがろうとする鈴だが、床に着いた手に鈍い痛みが走る。

 

痛みのした右手を見てみると、人差し指の先が少し切れて血が滲んでいた。

 

転けたときに、包丁で切ったのだろう。

 

「わ、指が切れてるじゃないか」

 

安心した顔をしていた焔だが、これを見て慌て出す。

 

「だ、大丈夫です、これくらい」

 

そう言って鈴は立ち上がった。

 

立ち上がると、体のあちこちにトマトの汁がついていた。

 

「でも、変な菌が入って化膿すると大変だから、絆創膏を貼っておこう」

 

「はい・・・」

 

そう言って焔は救急箱を取りに行った。

 

鈴も、汚れてしまった服から着替えるために部屋に行こうとする。

 

が、その鈴の鼻をくすぐる匂いがあった。

 

こう、何かが焦げていくような・・・。

 

「(・・・・・・!!)」

 

大変なことを思い出した鈴は、急いでオーブンを止めて開けてみる。

 

その中には、少し焼けすぎた鶏肉があった。

 

それに続いてコンロの火を止めて、それにかけていた鍋を見る。

 

こちらは焦げてはいなかったものの、火にかけすぎで色が少し変になっている。

 

「(・・・やっちゃった・・・)」

 

鈴の顔が一気に曇る。

 

ペタン、と床にへたり込んでしまった。

 

涙が浮かんできた顔に手を当てて俯く。

 

そこから、小さな嗚咽が聞こえてきた。

 

「鈴、絆創膏持って・・・。どうしたの!?」

 

救急箱を持ってきた焔が、鈴の姿を見て駆け寄る。

 

「・・・焔さん、あの、また、失敗、しちゃいました・・・」

 

嗚咽混じりに鈴が答える。

 

それを聞いた焔は、鍋にあるソースをお玉ですくって舐めてみる。

 

「あ、焔さん!駄目です、こんなの食べたら・・・」

 

焔はもう口に運んでしまっていたが、それでも鈴は止めようと起きあがって腕をつかむ。

 

鈴は、自分の作ったものを食べて焔が倒れるのを何回か見ていた。

 

さっきまでは少し自信があったが、失敗したと思ったのでまた焔が倒れると思ったのだ。

 

「鈴・・・」

 

焔が口を開いた。

 

倒れる様子はない。

 

「・・・おいしいじゃないか」

 

「えっ・・・」

 

鈴は自分の耳を疑った。

 

おいしい、そんなことを言われるなんて思ってもなかったからだ。

 

「でも、火にかけすぎちゃったし、色も変になっちゃいました・・・」

 

「そんなことないよ。ほら」

 

そう言って、焔は鈴にお玉を差し出す。

 

鈴はソースを指につけて、口に運ぶ。

 

「・・・嘘・・・」

 

鈴は今度は自分の舌を疑った。

 

確かに、少し色が変わってはいるが、味は良かった。

 

「ね?」

 

焔は鈴に微笑みかける。

 

「でも、お肉がこんなことになっちゃったら・・・」

 

そう言って、焔に鶏肉の乗った鉄板を見せる。

 

「大丈夫、これくらいが香ばしくて丁度良いって」

 

「でも!お料理の本を見ながら作ったから、当たり前です・・・」

 

やはり、自分が作って上手くいったと認められない鈴。

 

今までのことが頭にあるからだろうか。

 

と、焔の顔が少し変化を見せた。

 

「鈴、確かに君は本を見てた。でも、作ったのは本じゃなくて鈴自身だ。だから、これは鈴の料理だよ」

 

焔は鈴に諭すように言う。

 

今まで以上に優しい笑みで。

 

「・・・はい!」

 

鈴も笑った。

 

今までで一番綺麗な顔で。

 

「さ、僕がお皿を持ってくるから、盛りつけようか」

 

「はい、お願いします」

 

ここからは二人で準備をした。

 

料理を皿に盛り、綺麗な布を見つけてテーブルにかけ、料理の皿とその他の食器を置く。

 

飲み物は、二人ともまだ未成年のためオレンジジュースだ。

 

焔がテーブルをセッティングしてる間に、鈴は着替えてきた。

 

 

 

 

そして、二人の夕食が始まった。

 

「まずは、乾杯かな?」

 

「はい・・・」

 

そう言って二人はともに、ジュースの入ったグラスを差し出す。

 

「じゃあ、乾杯」

 

「乾杯です」

 

チィン、と良い音を立ててグラスが当たった。

 

それから暫く、他愛もない話をしながら食事をした。

 

その話の中には、昼に出会ったあの二人の話もあった。

 

「・・・で、お二人とも否定されるんですが、その言葉もピッタリ合ってて・・・」

 

「へえ、面白そうな人たちだな。一度あって見たい気もするよ」

 

そして、もう食事も終わるかという頃に、焔が鈴に聞いた。

 

「・・・ねえ、鈴」

 

「はい?」

 

鈴は飲もうといていたジュースのグラスを置いて、話を聞く。

 

「ずっと気になってたんだけど、何で今日は料理を作ろうと思ったの?しかもこんな本格的なやつを」

 

「焔さん、覚えてないんですか?」

 

「へ?」

 

鈴の問いに、変な声を上げる焔。

 

「やっぱり覚えてなかったんですね。最近忙しそうでしたから・・・」

 

そう言って鈴はちょっと悲しそうな顔をする。

 

「あ、もしかして今日は鈴の誕生・・・いや、それはもう過ぎたし・・・」

 

鈴が悲しそうな顔をしたから、彼女の誕生日かとも思ったがそれはもう過ぎていた。

 

焔は難しい顔をして真剣に悩んでいる。

 

「(クスクス)本当にわかりませんか?」

 

本気で悩んでる焔の姿を見て、微笑ながら鈴が言う。

 

「う〜ん・・・ええっと・・・・」

 

まだ答えがでないようだ。

 

「大切な日ですよ?」

 

鈴がヒントを言う・・・が、まだわからないようだ。

 

「う〜ん、ダメだ。本当にわからない」

 

そう言って両手をあげて“降参”のポーズを取る焔。

 

「はい、じゃあ答えです。今日は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【後書き】と書いて【言い訳】と読む!(核爆)

 

 

はあ、内容薄いッスね、これ。

ラストの意味ありげな終わり方も意味ありげになってないし(ダメじゃん)

せっかくお二人に出演してもらったのに、それをいかしきって無いッス。

はああ、所詮俺は駄文書きさ、ベイベ〜!!!(発狂)

と、いうわけで(何が?)今回は焔君に常日頃の感謝を込めてこれを送ります。

読んでくださって、本当にありがとうございました!

心からSilver Snowのますますのご発展を祈っています。

それでは、また次の機会に!

 

                          メールアドレス   isobe@tamano.or.jp

 

P,S管理人より 綾崎さん、小説どうもです。m(__)m

   感謝感激雨あられ〜 といった心境で舞っている次第であります。(爆)

   〆切ギリギリまでご苦労様でした〜


                            戻る