素直

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話 真夏の海 そして・・・(中編)


 

 見渡す限りの海、見渡す限りの山

 そんななかにある、小さな海の家

 そこには、都会にあるもの

 私たちの生活になじみのあるものは 何もなかった

 でも その中に それはあった

 都会にないもの

 

 それは 大地

 都会はコンクリートのなかにそれはあり

 見ることはほとんどない

 

 それは 透明な海

 都会はゴミのなかにそれはあり

 見ることは出来ない

 

 そして・・・

 それは 大きな恵み

 都会にいたら感じ取ることが出来ないもの

 

 

 豊かな自然・・・

 

 

 私はそれに

 どんな恩返しをしただろうか

 

 美しい自然の力無しでは

 生きていけないはずの私たちが・・・

 

 

 

  「ふーっ・・・」

 マナはそこで鉛筆をとめ、もう一度その景色を見た。

 外では、都会では決してみることの出来ない、満天の星空が闇色の空を照らしている。 

  

   「いい詩、出来たな・・・」

 そして再び、自分の書いた文字に目を移した。

 横を見ると、すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てる、シンジがいる。

  

 

・・・自然の力って、すごいな・・・

  今までは言葉にならなかったものが、頭の中からわき出てくる・・・

  都会にはない安らぎを、ここでは与えてくれる・・・

  都会では出来ないことも、ここでは出来る気がする・・・

  

 

 マナは、横に寝ているシンジの顔を、じーっと見ていた。

 

・・・シンジ君・・・

  私のことを・・・好きって言ってくれた・・・

  でも、私は・・・何も言えなかった。

  私も・・・シンジ君のこと・・・好きなのに・・・

  素直に・・・なりたいのに・・・

  たった二文字のはずなのに・・・

  何で、言えないんだろう・・・

  素直に「好き・・・」って・・・

 

  「ちょっと、頭、冷やしてこようかな・・・」

 

 マナは外へ出ていった・・・

 そして、海を見る。

 

そこでは水の中に映る月の光がマナを迎えてくれた。

 

 

・・・私も、こんな海みたいに、なれないのかな・・・

  こんな、透き通ってて、広い心・・・欲しいな・・・

  そして、月のように、優しい光をともすことは、出来ないのかな・・・

  私は・・・

 

 

 その時だった。

 後ろの方で、人の気配がした。

 

 

 

  「マナ・・・ちゃん?」

 その人影は、今朝会ったばかりの、女性だった。

 

  「伊吹・・・さん、ですか?」

 

  「マヤでいいわよ。ところで、何してるの?」

 近くに近づいてくるマヤ。

  

 

  マナ「眠れなくって・・・夜風に当たって、少し頭を冷やそうと思って・・・」

  マヤ「・・・シンジ君の事?」

 少しためらったマヤだが、思い切って聞いてみる。

  マナ「えっ!?」 

  マヤ「図星でしょ?」

  マナ「・・・・・・やっぱり、分かりますか?」

  マヤ「シンジ君のこと・・・好きなんでしょ?」 

  マナ「・・・・・・」

  マヤ「・・・・・・やっぱり、そうなんだ・・・」

  マナ「・・・・・・シンジ君って、どんな子でした?マヤさんから見て。」

  マヤ「え?何で私に聞くの?」

  マナ「結構、シンジ君と、仲良さそうだったから・・・」

  マヤ「まあ、シンジ君とは、シンジ君が幼稚園の頃から、知ってたけど・・・

     そうね・・・思っていることをストレートに言う子だった。

     それに、すごい女の子が、苦手だった。

     私と初めてあったときも、顔中真っ赤になってて顔を合わせようとしなかったくらい。

     ・・・でも、人一倍傷つきやすかったな・・・」

  マナ「ふーん・・・そうだったんですか・・・」

  マヤ「・・・シンジ君のこと、好きなんでしょ?」

  マナ「・・・・・・じつは・・・」

 

 マナはこれまでのことを、全て話した。

 出会ったときのこと、本屋での出来事、そして・・・

 

 

  初めてのデートのこと・・・

 

  マヤ「・・・あのシンジ君が、告白なんてしてたなんてね・・・」

  マナ「でも・・・私はその時、それに答えられなかった・・・

     今から思えば、どうして答えられなかったんだろう・・・って、後悔しています。」

  マヤ「何言ってるのよ。だいたい常識で考えても見てよ。シンジ君のした行動って、

     言ってみれば『付き合ってから三日目に、結婚指輪を渡す』ぐらいの大胆な行動をとったのよ!

     とまどうのも無理無い・・・」

 

 そこでマヤは、はっ、となって言葉をとめた。

 横を見ると、マナが俯いていた・・・

 

  マナ「その時に・・・私の気持ちもシンジ君と同じだったんです・・・

     でも・・・言葉に出そうとすると・・・全く声が出なくなるんです。

     その言葉とは入れ違いに、・・・涙が出てくるんです。止めようにも、止まらない涙が・・・」

 

  マヤ「・・・分かるな・・・その気持ち。伝えようにも、伝えられない気持ちってあるわよね。

     私も・・・そうだったから。」 

  マナ「青葉さん・・・ですか?」

  マヤ「そう。

     ・・・私も告白されたとき、シゲルのこと好きだったんだけど、

     返事出すのに5年・・・かかったんだ。正直、私も驚いちゃった。

     言葉で書くとたった二文字なんだけど、実際口に出すと・・・ね。」

 

 

 

 この時、マナは気付いた。

 

・・・マヤさんって、私と同じなんだ・・・

 

  マヤ「だから、悩むこと無いよ。シンジ君は、言ったことは必ず守るから。きっと待っててくれるわよ。

     よーく考えて、自分の本当の答えが出たときに、返事を出せばいいんじゃないかな・・・」

  マナ「・・・そう、ですか?」

  マヤ「よく考えても見てよ。恋愛になれた人が、女性のこと分かってる人が、

     出会ってから三日目で、いきなり告白なんてすると思う?」

  マナ「え?」

  マヤ「シンジ君はその時、泣いてなかった?」

  マナ「・・・泣いてました。」

  マヤ「・・・シンジ君はその時初めて、『好き』っていう言葉の重みを、知ったんじゃないかな?」

 

 この時、マヤの視線はマナではなく、後ろにあったもう一つの人影に向けられていた。

 

 

  マヤ「・・・そうなんでしょ、シンジ君。」

 

  マナ「えっ!」

 

 慌てて後ろを振り返るマナ。その人影は・・

・・・紛れもなく、碇シンジだった・・・

 

  マナ「シンジ・・・くん?」

  マヤ「・・・いつからいたの?」

 シンジ「伊吹さんが僕の昔の話をしていた頃からです。

     夜風に当たろうと思っていたんですけど、たまたま外を見たら、二人が話して多ものですから。」

  マヤ「・・・さ!もう時間的にはもうすぐ朝なんだから、二人とも部屋に戻りなさい。

     ゆっくりと二人で話しなさいよ。」

  マナ「・・・色々と、ありがとうございます。」

  マヤ「いいのよ。それとマナちゃん、」

  マナ「・・・何ですか?」

  マナはシンジには聞こえない声で、こう言った・・・

  マヤ「その時のシンジ君が『待ってる』って言えたのは、やっぱりあなたのことを大切に思ってるからだと思う。

     ・・・頑張ってね。」  

 

 そう言うと、マヤは海の家へと戻っていった・・・

 シンジ達も、それに続く・・・

 しかし、どちらも口を開くことはなかった・・・

 

 

 そして、部屋の中にて・・・

 

 

  マナ「・・・なんで、ずっと隠れてたの?」

 シンジ「隠れてはいなかったんだけど・・・何話してるのか気になって・・・」

  マナ「そう・・・あのとき、私、嘘はついて・・・ないからね・・・」

 シンジ「・・・別にいいから。」

  マナ「え?」

 シンジ「・・・今日、僕は、夜風をあたりに行っただけで、何も聞いていない。

     ・・・これで、いい?」

  マナ「・・・」

 

 マナは言葉も出なかった。

 

・・・何で?何でそんなに優しくできるの?

  私は、シンジ君に何もしてないのに・・・

  大切に思ってる・・・そうマヤさんが言ってた。

  私は・・・私は・・・やっぱり、そんな優しいシンジ君が・・・

  

 

・・・好き・・・

 

 

  マナ「シンジ君」

 シンジ「何?」

 

  マナ「・・・私は、不器用で、ドジで、気が小さくて・・・

     いい所なんてほとんどない。

     ・・・そんな私でも・・・」

 

 ここで、一呼吸おいてから・・・マナは・・・

 

 

  マナ「好きになって・・・くれます・・・・・・か?」

 

 

 シンジ「え・・・・・・」

 

 突然のことに、シンジは驚きを隠せなかった。

 ただ・・・それは、嬉しい驚きだった・・・

 そして・・・シンジは笑顔を浮かべながら・・・

 

 シンジ「・・・ごめん、よく聞こえなかったから、もう一度・・・言ってくれるかな・・・?」

 

 思ってもいなかった言葉に、最初は驚いたものの、

 その後は・・・

 

  マナ「・・・イジワル。」

 少し、顔が紅くなった。でも・・・  

 

  マナ「でも、今なら、何度でも言える。

     私は、あなたのことが・・・好きです。

     こんな欠点だらけの私で良ければ、付き合って下さい。」 

 

  しばらく、沈黙がその空間を支配する。

  そして・・・ 

 

 シンジ「・・・・・・ごめん。」

 

 

  マナ「えっ・・・」  

 

・・・一瞬、時が止まった。

 

 

・・・なんで?

  シンジ君は・・・さっき笑ってくれたのに・・・

  告白した私を見て・・・

  何で・・・

 

 

 

 

 

マナは完全に自分の世界に入り込んでいた。

再び考えが無限ループになり、頭の中をぐるぐる回る。

 

 

 

ただ、全然マナの異常に気付かないシンジが、そのまま続ける。

 

 

 

 

   「ごめん・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                            返事、焦らせちゃったみたいで・・・」

 

 

 

 

 

 

相変わらず、マナは無限ループを繰り返していたが、

シンジのその一言を聞いて、頭に?マークを浮かべる。

 

 

  マナ「あのさ、さっきの『ごめん』って・・・ひょっとして・・・」

 

 そうマナが聞き返すと、シンジは平然とした顔で・・・

 

 シンジ「だから、返事をせかしたみたいだったからさ・・・

     謝るっとかないと気がすまなくってさ・・・」

 

 

その答えを聞いて、マナは呆然とした。

と同時に、嬉しさと安堵感が同時にこみ上げてくる・・・

やがてそれは・・・

 

 

 

 

           ・・・涙へと変わった・・・

 

 

 

 

  マナ「シンジの・・・バカ・・・

     何で『ごめん』なんて言うのよ・・・

     私ね・・・不安だったんだからね・・・

     シンジに・・・フラれるんじゃないかってね・・・

     そんなときに、いきなり『ごめん』なんて・・・・・・ひどい・・・じゃない・・・」

 

 マナはそのまま、涙顔でシンジに抱きつく。

シンジの体に、暖かい感触が走る。

 

  マナ「うわぁぁぁぁぁぁん!」

 

最初は何が起こったのか把握できなかったシンジだが、体の感触に気付き、

すぐに現在置かれている状況を把握した。

そして、目の前には、自分に抱きついて思いっきり泣いているマナの姿があった。

 

 

 シンジ「・・・ごめん。・・・といっても、謝って許されることじゃないよね・・・

     僕はマナにとんでもないことをしてしまった・・・

     全然、マナの気持ちを大切に出来なかった・・・」

     

 

 

 

 

 

 

   「・・・でも、こんな僕でも、マナが『好き』っていってくれるなら・・・

    僕は喜んで、マナの好きな『碇シンジ』になるよ・・・

    それが、僕の願いでもあるから・・・もう、これ以上、マナが泣いてるところ、

    ・・・いや、マナが悲しみの涙を流してるところ、見たく・・・ないから・・・

    だって・・・僕も・・・好きだから・・・マナのこと・・・」

 

 

  

 そこまで言い終わると、シンジもマナを抱きしめる。

マナの気持ちを、受け止めるように・・・

壊れやすい物を抱えるように・・・そっと・・・

 

 

 

   マナ「・・・今の事、本気で・・・言ってくれたんだよね?」

   

 マナは目と顔を真っ赤にしつつも、シンジの方を向きながら聞く。

   

  シンジ「・・・・・・もちろん。」

 

そしてシンジも又、顔と目を紅くして、マナに微笑みかける。

 

 

   マナ「・・・嬉しい・・・」

マナもまた、極上の笑顔で、シンジに笑いかける。

 

 

 

 お互いにお互いを意識したとき、ようやっと今の状況を把握した。

お互いに抱き合っているという状況を知った二人に、再び赤みがさす。

そして、二人同時に手を引く。

だが、お互いに寂しいと感じたのか、再び二人同時に手を出す。

その仕草があまりに似すぎていたので、思わず二人は・・・

 

 シンジ「ぷっ!」

  マナ「クスクス・・・」

 

 

   「「あははははっ!」」

 

 

 ・・・光を失いつつあった月の光が、今の二人を祝福していた・・・

 

 

 

 

 

                                                 ・・・後編へ続く・・・


あとがき

 

 Sreinです。少々書くペース落ちたかな・・・

いやーそれにしても、・・・自分で書いたことながら、変なこと書いたなーって気がします。

せっかく告白・・・って思ったら、いきなり「ごめん」だなんて・・・

そんでもって、

それにしても長くなったな・・・今回は・・・

まだ後編もあるんで、また頑張りたいと思います。

 

ではまた。