素直
第伍話 それぞれの想い
電車の中。
中はいろんな人でごった返していた。
マナとシンジが2人旅を始め、一週間が過ぎていった。
2人は予定通り、千葉の海を離れ、青森へと向かう電車に乗っていた。
ここに来たときと同じく、電車の中にはシンジとマナ以外には、数人の客しか乗ってなかった。
「結構、寂しいなぁ・・・」
窓に映る緑を見つつ、マナははあ、と溜息をついた。
静かだった。
今マナの耳に入っているのは、電車の音、時折流れるアナウンス、
・・・そして、一つの寝息・・・
そしてその窓に薄く映っている、一人の少年の寝顔を見て、もう一つ溜息をついた。
その息は、安らかに眠っている半透明の少年の顔を、白く濁していった。
いま、マナは悩んでいた。
目の前の少年のことで。
そして、自分の気持ちのことで。
・・・私は、思春期ということをあまり強く感じたことがなかった・・・
確かに、最近背も伸びて、いろんな意味で成長しているということは感じたけど、
それは今までにもずっと起こってたことだし、そんなに強く意識したことはなかった。
でも、これは・・・違う。
今まで、全く感じたこと無かった気持ち・・・
”友達”という見えない境目を、越えたときの気持ち・・・
その先にある、”恋人”という新しい気持ち・・・
もしもその境目を越えたときに出てくる、”戸惑い”という気持ち・・・
そして私の心の中には、その”戸惑い”の気持ちが少なからずある・・・
私は、あなたが好き。
私は、あなたが嫌い。
今は・・・分からない。
分からない。
好きなのか。
嫌いなのか。
どちらの気持ちが正しいのか。
あなたは私のこと、好きといってくれた。
私は、あなたのこと、好きだった、初めて、あなたが好きといってくれたとき。
その時、私は言えなかった。あなたに、「好き」という言葉を。
やっぱり、私は、あなたが嫌い?
もし私が本当にあなたを嫌いだったら、何で私はあなたとこうして旅をしてるの?
それなら、私は、あなたが好き?
もし私が本当にあなたを好きだったら、何でこんなに悩むんだろう・・・
これが、思春期なのかな?
いろんな事を考え、いろんな事を思う。
例えばそれが、人を好きになることだったり、嫌いになったりすること。
だからこそ、分からない。
あなたを、好きなのか、嫌いなのか。
ひょっとしたら、私の言う「好き」の気持ちは、「友達」という意味での「好き」かもしれない・・・
そこまで考えたとき、マナは現実に戻っていた。
「マナ」
現実に戻ったマナの前には、目を覚ましたシンジの姿があった。
「どうしたの?シンジ?」
「いや・・・何かさっきからボーっとしてて、どうしたのかな・・って」
「ううん、ちょっと、考え事があってね。
・・・ねえ、シンジ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「シンジは、自分の気持ちが分からなくなった時って、ある?」
「そりゃあるよ。・・・それがどうしたの?」
「そう言う時ってさ、どうする?」
「どうするって言われてもなぁ・・・分からない物は分からないんだからさ、悩まないようにするな。」
「もしも、それが出来なかったら?」
「そうだね・・・そう言うときは友達に相談するとか・・・」
そう言うとシンジはマナに微笑み、ポンと肩をたたいて、「僕で良ければ相談に乗るよ」と、優しい調子で言う。
その微笑みを見て、マナは、心の荷が下りたような気がした。
「実はね・・・私・・・分からないんだ。
シンジは私のこと、好きといってくれたけど、私は・・・本当に好きなのかっていうことが。
それで、色々と考えてみたんだけど、やっぱり分からなくて・・・
・・・勝手な女の子だよね。自分から勝手に待たせて、この前『好き』って言っておいて、
そんなことで悩んでるなんて・・・」
そこまで言うと、マナの目には光る物が浮かび始めていた。
「・・・本当・・・変だよね・・・自分でも変だと思う。
だって、私はいつもシンジを困らせてばっかりで・・・こうして泣いてるばっかりで・・・
いつもこうやって・・・こうやって・・・」
マナはそこまで言うと、顔を伏せた。
「そんなことないと思うよ・・・」
そんなマナに、シンジの優しい、暖かい声が耳の中に伝わってくる。
「・・・実を言うと、僕も自信がないんだ。マナを本当に好きだって言い切れる自信が。
それに、僕はマナに困らされたことなんて無い。言ったよね。
『僕はマナが悲しみの涙を流してるところを見たくない』って・・・
もうこれ以上、マナを悲しませたくないし、悲しませるつもりもない。
それに、約束したよね。『いつまでも待ってる』って。
自分自身でせかす必要なんか全くないよ。自分の気持ちが分かったらもっと詳しい返事をくれれば良いよ。
だからさ、そんな思い詰めないでよ。ね。」
さらに、シンジは続ける。
「でもさ、マナの考えてる事って、当然のことだと思うんだ。
相手の考えてることは簡単に分かんないからさ、
『自分を本当はどう思ってるんだろう』って考えるのは当たり前だよ。むしろ、考えない方がおかしいよ。
だからって、それで何もかも分かり合えるわけではないけどね。」
「でも、私はシンジのこと・・・もっと知りたい」
「僕たちはまだ会ってから、一年も経ってないじゃないか。
ずっと一緒にいたら、気持ちだって伝わるようになるよ。
僕だって、マナのことをもっと知りたい。でも、それは一緒にいたらきっとかなうはずだよ。
ずっと一緒にいればね。そして、それは不可能じゃないと思うんだ。僕たち・・・だったら。
全部分かり合うのは無理かもしれないけど。」
「・・・・・・そうだよね。きっとそう言う日が来るよね」
マナは顔を上げた。そしてシンジの方を向き、にっこりと笑う。
シンジはその微笑みを見て、ほっと胸をなで下ろして、
「絶対、来るよ」
と、マナに向かって、答える。
その言葉を聞いて、マナもそうだね、とシンジに返す。
「じゃあ、約束。
これから私たちは、お互いに分かり合えるように、
自分の本当の気持ちを見つけるまで、ずっと一緒にいること。
それでいい?マナ。」
「もちろん、いいよ。」
「あ、あと、それとさ・・・」
「それと?」
「マナ・・・って、呼んでくれるんだね。
嬉しい・・・」
そして、少し顔を赤らめつつも、お互いの距離が少しずつ、しかし確実に近づいていった・・・
その時だった。
・・・2人が周りの様子に気付いたときは。
どこかの駅で乗ってきたのか、電車の中には沢山の人が乗ってきていて、
その人達は皆、こちらの方に目線をやっていた。
その事に気付いた2人は、耳まで真っ赤になって、下に俯いたのは言うまでもない。
・・・続く・・・
あとがき
どうも、Sreinです。
まずは、第伍話の執筆が遅れたのを、深くお詫びいたしますm(_)m
更新が止まって早五ヶ月、やっとかけました。
本当に申し訳ありません。
構想の面では、色々と悩んだりしたものの、こういう形になりました。
感想、戴けると嬉しいです。
後、少々今後について書きますと、
遅くとも一ヶ月後には、次の話を公開できれば、と思ってます。
あと、以前あとがきに書いた「アスカ・レイを出さない」というので理由がよく分からない、と
メールで頂いたので、大きな理由を挙げると、
@、まだ未熟なため、人物が増え、ストーリーがごっちゃになる可能性があるため。
A、自分の主義に反してしまう可能性があるため。
@に関してはそのままですが、Aのことに関してですが、
私は基本的に「ハッピーエンド主義」なので、アスカやレイを出すと、
そのキャラを不幸にしてしまいそうなので・・・
・・・早い話が経験不足ということです(^^;;;)
これだけはご容赦下さい。
決して「アスカ・レイが嫌いだから」とかそう言う理由では無いです。
それでは。
長くなって申し訳ありません。