カウボーイビバップのSF考証
「カウボーイビバップ」通信
 カウボーイビバップの魅力の第一がキャラクターである事は間違いない。が、キャラクターの魅力は私が語るまでもなく一目瞭然である。そこでここではここではビバップを裏から支えているSFの魅力について語ろうと思う。
 ビバップのSF考証は一言で言って「骨太」である。登場するSF的なシチュエーションの中で現実世界の物理から飛躍しているのは「位相差空間ゲート」のみといっていい。ビバップは「ゲート」の発明を機に世界がどう変化するのか、そのシミュレートの上に成り立っている。

 ここでゲートの能力を確認しておこう。ゲートに出来るのは、「あらかじめ結んでおいた2点を通過する物体を何百倍かに加速する」 ただこれだけである。よくワープの説明で紙を折り曲げて離れた2点を近づけるというものがあるが、ゲートはその2点にあらかじめ橋を架けておくようなものだろう。

 このシステムがあれば一度到達してゲートさえ設置してしまえばその後は地球上を旅行するくらいの感覚で簡単に行き来する事ができるが、面白いのは、レールを敷設しなければならない為、また結局光速以上は出せない為太陽系の外に出て行く事が事実上不可能な点である。この絶妙な設定によってビバップは太陽系という新たな世界に説得力を与えている。
 また、ビバップの華の一つに改造された惑星があるが、惑星改造の成り立ちにもゲートが大きく役に立っている。水・空気・その他物資等の運搬に用いるのは誰でも思いつくところであるが、ビバップでは「太陽光」を外惑星に直接運搬するという離れ業をやってのけている。これは1箇所に固定して設置されているゲートならではだ。作中、水の星として描かれている木星の衛星ガニメデは本来、太陽から遠すぎるため極寒の地である。このアイデアがなければ温暖な水の星ガニメデという設定は決して出てこなかっただろう。

 ゲートにより惑星間の距離が縮まり、惑星改造が容易になっても残されている難関がある。それは「人類が地球から出て行く動機」である。舞台を宇宙に移す為には何が何でも地球から人類が退去してもらう必要があるが、人口爆発や環境破壊程度では他の惑星を改造するより地球を改善する方がはるかに手間が少ない。ビバップはこの問題に真っ直ぐに向き合い、力で捻じ伏せている。それが「ゲートの事故による月破壊」である。2020年に起こったゲート実験の事故で月が半壊して以来、地球を月の破片が常に降り注ぐ危険極まりない世界にしてしまったのだ。一応地下に隠れ棲むという選択肢も残されていたが、どんなに整地しようと次から次へと隕石が降ってくるのでは再び地上で生活するのは望むべくもない。
これだったらいっそ他の惑星を改造して移民した方がマシだ!かくして人類は未踏の開拓地「宇宙」へと旅立つのであった。

―――それから50年。開拓の熱気や地球への望郷は過去のものとなり、生まれながらの火星人、金星人が縦横無尽に活躍するする大太陽系。ビバップのキャラクターの魅力はこんな骨太な設定の上になりたっているのである。
98.11.11 GiGi

「カウボーイビバップ」通信