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朝、八葉があかねの前に集合した時、一人だけ身長が・・・身体が縮んでいた。いつもの視線より低い彼は、いつも見下ろしていた人物まで見上げなければいけなかった。彼いわく・・・ 「目が覚めたらこうなっていた。」 本人はあっけらかんと言ってのけた。呪いだと言われても、他人事の様に聞き、呑気に聞き流していた。身体が子供サイズになった事で困る事は、服が無いだけで、きちんと龍玉もあり、特にこれといった問題は無かった。 あかねは子供サイズになった天真と頼久を連れて、怨霊退治に出かけた。その間、あかねはいつも見下ろされていた天真にむかって可愛いと連呼していた。天真は言われる度に顔を歪めていたが、彼の性格か聞き流していた。 龍神の神子として気を高めようと京の街の中を歩き回っていると、泰明が三人の前にやってきた。出会い頭、三人に泰明が告げた言葉は・・・ 「判らない・・・。」 「はぁ?それだけを言うために探してたのか?」 「いや、これから糺の森へ行き”連理の賢木”から知恵を授かってくるつもりだ。」 返事も聞かずに泰明は足早に糺の森へと向かった。その場に残された三人はしばし呆然としていたが、自分達の目的を思い出したあかねが始めに動いた。それに釣られたように天真と頼久が続いた。 一日中、歩き回った三人は藤姫の館に戻って来た。歩き回ってる最中に永泉にも会ったが、いつもの様に後ろ向きな考えを告げて、祈祷をすると東寺へと向かって行った。未だに泰明も永泉も藤姫の館に戻って来る気配はなかった。天真の姿は未だに子供のままで、当人は少し焦り始めた。 「なぁ、明日には戻ってないかなぁ・・・。」 そのひとことだけは彼の本音が出ていた。一日中、元気に振る舞っていた天真だったが、心のうちでは少しずつ不安を募らせていたのだ。泰明や藤姫、永泉と次々に解決方法が見つからないと告げられては不安にならないわけがない。特に泰明の判らないという言葉には、流石に落ち込むと言うもの。 翌日、翌々日と日々は流れて行くが、相も変わらず天真は子供の姿のままでいた。泰明]も”連理の賢木”からは聞き出せず、陰陽寮の書籍で解決策を探していた。永泉は変わらず祈祷に頼り、藤姫はどうにもならない状態に対応するかのように、子供用の天真の服を用意したり、星の一族の仕事をきちんとこなしていた。あかねも最初の頃は、天真を可愛いと連れ回していたが、いろいろとある用事に手放していた。天真は不安を抱えたままそれでもいつかは解決策が見つかると、館の中に居れば腐るからと外に出て自分でも探していた。子供の足では遠くまで行くこともできず、近くでは情報がなく、天真は途方に暮れて、船岡山に登って京の街を見下ろしていた。 「天真。ここだろうと思っていた。」 「頼久か。まだ見つからないんだろ?」 「見つけている最中だ。さぁ、そろそろ帰らないと皆が心配するぞ。」 座り込んでいた天真を簡単に持ち上げて、立たせると背中を押した。二人は船岡山を降りて藤姫の館に戻った。 解決策が見つからないまま、さらに数日が過ぎていった。天真はあかねと一緒に行動したり、一人で街の中を歩いたり、いつもと同じように過ごしていた。身長が低い分、いつもと違う視線でものを見る事ができたが、剣術の練習は一人、違う事をしていた。いつものように掛り稽古をしようとしても身長の関係で、できないと頼久に言われていた。一人でこなしていてもつまらないと天真は一人、稽古を早めに切り上げ、馬に乗って遠出をした。自分の好きな場所を回っても気分が晴れず、結局は桂川の川辺でぼんやりとたたずんでいた。 「好い様だな、地の青龍。」 天真の背後から声が聞こえ、顔を歪めながら天真は後ろを向いた。其処に立っていたのは鬼の子供、セフルだった。 「・・・俺がなんで地の青龍、だと判ったんだ?」 天真はコレまでの経験上、つまり街の中を歩いている中で誰一人として、彼が子供であると気がつかなかった。しかしセフルは一発で判ったのは、何かあるという事を天真は気がついた。セフルの周囲を注意して見た。普段持っていないはずの所有物が有るはずだと、天真は目をこらした。セフルの腰には小さなガラス玉のようなものが、紐に連なっていた。天真は其れをいつ奪うか様子をうかがった。 「僕が、僕たちが仕組んだからだ。」 セフルのひとことで天真はガラス玉が、自分の身体を直す鍵だと理解した。子供になってしまった天真ひとりでは、普段とは勝手が違い過ぎていた。天真はセフルを睨むと腰に回していた短剣に手をかけた。 太陽の光に刃を反射させセフルの目を狙ったが、あと少しの所でイクティダールに邪魔をされセフルは連れ戻されて行った。その場に残された天真は悔しさに地面を拳で殴りつけた。あと一歩で自分の身体を取り戻せたかもしれないからだ。天真は馬に乗り藤姫の館に急いでもどった。 「天真、どうしたんだ?息を切らして。」 「頼久っ。俺の身体が子供になったのは鬼の仕業らしいんだ。」 「本当か?いったいどのように・・・。」 「セフルが持ってる硝子玉のような奴に・・・。どうやって直すのかは判らないが・・・。」 「そうか。しかし、直せるのだな。」 「あぁ、心配かけたけど。あとはセフルをとっ捕まえるだけだっ!」 天真は拳を作りガッツポーズをつくった。頼久はそんな天真を見守ることしかできなかった。天真はそれだけを報告すると館を出て行った。頼久は天真が伝えてきた事をあかねをはじめ館に居た八葉に伝えた。作戦を立てると泰明や鷹通は頭を悩ませ、頭脳派より肉体派のイノリはすぐに街に出て行った。残された頼久、詩紋、永泉、あかね、藤姫は部屋の中で考えをまとめている二人の邪魔にならないよう、しかし自分達でも考え始めた。友雅はそしらぬ顔をして縁側のところで座っていた。 天真は馬を走らせセフルとイクティダールを探した。京の街を走り回ったが、見つかりそうも無かった。イノリも京の街を自分の持っている情報網で、セフルとイクティダールを探し出そうとしていた。 神護寺で天真は馬を止めた。馬を適度な所に繋ぎ止め、天真は境内を歩いた。境内は特に問題もなく、探し相手を見つけることはできなかった。 「地の青龍。」 探している相手の一人が天真に声をかけてきた。真っ正面に居る相手を天真は睨みつけた。鬼の方は天真の睨みを受け流し、そのまま近づいてきた。天真と接触する所で立ち止まり、イクティダールは腰の辺りに有る天真の肩に触れた。天真は相手の手を振り払った。 「イクティダール!俺を元に戻せっ。」 「それを直すためにはセフルが持っている玉が必要だ。」 天真はイクティダールの言葉に思い当たる物があった。セフルの腰にぶら下げていた硝子玉をイクティダールは天真に教えていた。 「ここにはいない奴をどうやって掴まえるんだ。」 天真は焦り始めていた。やっと元の姿に戻れる解決策を見つけられたが、肝心の硝子玉が無ければ元に戻る事ができない。イクティダールの服を天真は掴んだ。イクティダールは小さい天真を抱きしめた。自分の服が少しずつ濡れて行くのを感じながらそれでも離さずに抱きしめ続けた。イクティダールは少し屈み、天真の耳にセフルがいるだろう場所をそっと囁いた。天真は少し不思議そうな顔をしたがすぐに理解した。顔を服から離すと天真はイクティダールを見、イクティダールは天真の涙を指で拭き取った。少し泣きはらした目を天真は擦った。 「俺は行くから・・・。」 「気をつけて。」 天真はイクティダールから離れ、自分の乗ってきた馬まで走った。イクティダールは天真が去って行く姿を見送ってから消えた。天真はイクティダールに言われた場所に馬を走らせようとしたが、一度、館に戻った。 頼久を見つけ、天真は頼久を連れてイクティダールに言われた場所に馬を走らせた。近くに馬を止めると歩いてセフルを探した。セフルは川の所で座っていた。天真と頼久は静かに近づいた。 二人同時にセフルに襲いかかると、頼久がセフルの身体を押さえ天真が腰につけていた硝子玉を掴み取った。 「よっしゃっ!」 「しまった・・・。くそっ!」 セフルが頼久から逃げ出そうとしている間に天真は走って逃げた。逃げ切った所で頼久と落ち合う手筈になっていた。頼久はセフルを木の幹に括り付けると馬に乗り天真を追った。天真は馬に乗って藤姫の館に戻ろうとしていたが、神泉苑まで向かった。なんとなく呼ばれている気がした天真は、必死になって走っていた。 日が落ち辺りが闇に満ちてから、神泉苑に辿り着くと其処にはイクティダールが待ち構えていた。 「イクティ・・・ダール・・・此れを取り返しに来たのか?」 天真は震える声で手に持っていた硝子玉を見せた。イクティダールは静かに首を横に振った。 「今回、私は其れに関っていない。お館様の遊びにセフルが行っていた事だ。鬼の一族の私が言った所でお前は信用しそうに無いが・・・。」 「信用するよ。でっ、この呪いを解く方法は?」 「方法は玉を砕けばいい。」 天真は持っていた玉を地面に落とした。バリンッという音を立てて硝子玉は砕けた。すると硝子玉から白い煙が出て、天真の身体を包み込んだかと思うと、天真の身体がみるみると元どおりになっていった。煙が消えると同時に天真は自分自身の変化を実感する事ができた。煙が出る前は目の前に居たイクティダールの腰の辺りに目線があったのが、今は前と同じ身長差に戻っていた。 「元に・・・戻った。」 「ようだな、天真。」 「小学生のままだったらどうしようかと思ったぜ。」 「しょうがくせい?しかし、小さいのも可愛いぞ、天真。」 「お前まで、それをいうのかよ・・・。」 天真はうんざり顔でイクティダールを見た。最初の頃、さんざんあかねに言われ続けた言葉に顔を歪めた。それでもなおイクティダールは微笑みながら天真を見ていた。天真はイクティダールを見返し、少し背伸びをして腕を伸ばしやっと届く首に腕を絡めた。小さい頃の自分ではけしてできなかった姿勢で、イクティダールの唇に口付けた。イクティダールも天真の腰に手を回し、支えて口づけをする。暗闇とはいえ鬼の一族との逢い引きを知られまいと、二人は少し移動をした。 床にイクティダールの衣類を敷き、天真が其処に横になった。天真はイクティダールの服に手をかけ、イクティダールは天真の服に手をかけて、お互いの服を脱がした。視線を合わせ絡めると目を閉じて唇を合わせた。天真は腕を伸ばしイクティダールの首に廻し、イクティダールは首に廻ってきた手で引き寄せられるのを感じ、笑んで再び唇に重ね合わせた。しっとりと濡れた唇を甘く噛んでは軽く吸い、口蓋を開くように舌先で突付いて合図すると天真は口を開いた。イクティダールは開いた瞬間を逃さず、舌を咥内に滑り込ませて蹂躙し、天真の舌を探り当てると唾液を混ぜ合わせ、ねっとりと深く絡める度にくちゅくちゅと淫猥な水音を響かせる。 「・・・んっ・・・はぁ・・・イクティ・・・ダール・・・。」 イクティダールは前を寛げるとそのまま下着を脱がせた。天真も手を伸ばしイクティダールの下着に手をかけ、少し首を伸ばして口づけを強請った。イクティダールは天真に答え口付けた。相手を裸体に剥いてしまいつつ、身体を下にずらしてペニスを握り込み先端に口付ける。手指をスライドさせて緩々と扱きながら、先端の鈴口を舌先で突付いては吸い付き、熱くなっていく睾丸を反対側の手でやわやわと揉んだ。相手の下肢を外気に晒しながら、唾液の絡む水音を立てて舐め上げ、握る掌を解くと共に喉奥まで竿を口に含んだ。裏筋に舌をねっとり這わせてなぞり舐め、頭を上下に動かし強く吸い上げると、天真は手探りながらイクティダールの髪の毛の中に手をいれぎゅっと握り締めた。 「・・・もっ・・・やぁ・・・。」 天真はびくびくと身体を震わせ、首を振った。が、イクティダールの咥内でむくむくと膨らみ硬度を増すニペスを、先走りの蜜が滲み出て何度も啜り上げ、絶頂へと追い詰めておきながら根元をきゅっと手指で戒めた。 「まだだ・・・。」 イクティダールの咥内にある天真の蜜を自分の指で少し絡め取り、残りを下肢に垂らし、後孔の肉襞にも丁寧に塗りつけて解かした。天真は絶頂へ追い詰められてから、戒められて顔が苦痛で歪んだ。目を見開きイクティダールを睨みつけるがあまりにも効果がなかった。身体が強張って天真の緊張が伝わり、唾液と天真の精液でたっぷりと濡れた指を1本埋め、根元まで沈めると前立腺のしこりに強く押し当て、指先でのみ擦り付けるように動かして直接刺激を送り込りこんだ。イクティダールはペニスを戒めたまま指を2本に増やし、更に分泌液で潤いヒクつく内壁を擦り上げ、特に敏感なしこりには意地悪く時折霞めるのみで焦らした。 「・・・イクティ・・・ダール・・・もうっ・・・。」 天真はいてもたってもいられなくなって戒めをしている手の方に片手を伸ばした。イクティダールは耳朶に甘く噛み付いて、耳孔に舌先を挿し入れて舐め廻した。天真は寸止めされた分だけ、全身が性感帯になった感じがし、イクティダールに触れられるだけで身体をくねらせた。 「イカセテ・・・イクティ・・・ダール・・・頼むから・・・。」 イクティダールは耳孔を舌先で愛撫し続け、撓る身体と強請る声に欲情し眼をギラつかせて、膝を掴むもM字開脚に固定し、床に押さえつけ、欲に猛る己のペニスを潤いヒクつくアナルに宛い腰を進め、ずぶずぶと綻んだ孔へ根元まで挿入した。 「・・・相変わらず、中は溶けそうに熱いな・・・。」 天真の包み込む熱と締め付けに熱っぽく吐息をつき、腰を鷲掴みにして質量に慣れるまで待ち構えた。天真は艶めかしい声で囁きイクティダールの質量が感じるぐらい絞め付けて間が取れずに自分の伸ばした手が相手を掴めず宙を切った。イクティダールは妖艶な笑みで見詰めると顔を近付けて胸にキスを落とすと、伸ばされた天真の手を掴み自分の首へと廻した。緩々と動き出し、慣れて来た頃合を見計らって奥へ奥へと突き上げた。亀頭で前立腺のしこりをダイレクトに穿ち、徐々にだが激しさを増し最奥を犯して、融合部からジ卑猥でどうしようもない水音を響き渡らせた。天真はイクティダールの動きに合わせて自分も快楽を求めて腰を動かし、抱きついた事で近づいたイクティダールの顔をうっすらと目を開けて瞳に自分を映して唇にそっと触れた。二人はリズムを合わせるように動く互いの動いていた。イクティダールは不意にそのリズムさえ崩すように捲くし立てて性感を煽り、ギリギリまで引き抜いては串刺しを思わせる動きで貫いた。天真の触れるだけの口づけに温もりを感じ、舌で舐めると天真に口蓋を開くように促し擽った。促されるように口を開き舌を出し、イクティダールの舌を受け入れた。イクティダールは吸い付き、舌裏を掬い取って歯列をなぞり舐めた。口の中を動き回る舌に天真は舌を絡ませた。二人の口の端から流れてくる唾液は、天真の身体を流れ走る汗にびくびくと震わせた。快感が体中を駆け巡って行った。 「きもち・・・いいっ・・・。」 天真はぎゅうぎゅうに絞め付けているのが判っていてもとめる事ができずにいた。天真の体内で膨らみ硬度の増したイクティダールのペニスは、先端の鈴口から止めど無く先走りの蜜が溢れ、内壁に染み渡させて更に滑りを良くした。ぬめりを利用して激しく突き上げ、肉のぶつかる音が短くなって追い込んでいった。 「天真・・・もっと淫らな声を私に聴かせてくれ。お前のイク顔が見たい。」 「・・・んんっ・・・はぁ・・・んっ・・・。」 天真は両足で腰を固定するが動きは衰えず、前立腺のしこりのみを狙い打ちにして何度も穿ち、激しい抽挿を繰り返して孔への刺激だけで追い討ちを掛けた。亀頭でより強くしこりを抉り貫くと、濃厚な口付けを名残惜しげに離して呼吸し、両胸の突起を摘んで捏ね繰り回した。天真は性感帯をすべて弄ばれ、二人の腹の間に有る自身から白濁の液体を吐き出しながら抱きついたまま身体が弓なりに反った。天真が射精する瞬間に括約筋が働き、きゅうきゅうとこれ以上無い程ピッタリと強く締め付けられ、イクティダールも限界に達して体内で弾けた。ビュクビュクと数度に分けて最奥に白濁を放ち、残滓もすべて注ぎ切り緩々と息を吐き出して、凭れ掛かりながら射精の余韻に浸った。 「・・・天真・・・」 天真の痙攣の治まった頃に腰を引いて抜き取り、紙を手に取ると素早く後処理をした。イクティダールの身体の下で精も根も使い切った天真が焦点の合わない目が動いた。イクティダールは天真の顔に触れてから軽い口づけを交わした。やっと正気に戻ってきた天真は少し恥ずかしそうにしながら、しかし視線を背けることはせず、イクティダールを見据えた。天真の服をイクティダールは拾って着せ、自分の服を着てから上着を天真に着せた。天真は腕を出さずにそのまま羽織っていた。腕を伸ばしイクティダールに抱きつくともう一度、軽く口づけをした。イクティダールは天真を抱きしめて、口づけを深くした。苦しそうに唇を先に離したのは天真の方だった。其れを追いかけイクティダールはまた唇に触れた。 もう一度、天真は今度は喉を反らせてイクティダールの唇から離れた。 「・・・んっ・・・はぁ・・・。」 「・・・天真、大丈夫か?」 「あぁ、大丈夫。・・・っしかし、無茶すんなよ。いくら俺でも壊れるぞ。」 「それは困るな。」 イクティダールはたいして困ったような顔をせずに微笑んだ。天真は苦笑いを浮かべてから、握り拳を作ってイクティダールの胸を軽く叩いた。軽く叩かれたなのかイクティダールは更に笑いながら叩く天真の手を握って止めた。そして天真の拳にキスをすると引き寄せて抱きしめるともう一度唇に触れる。今度は軽く口付けるとすぐに離れた。 「空が白んできた様だ。そろそろ館に戻った方が良いのではないか?」 イクティダールは天真の耳もとで囁いた。少しくすぐったそうに身体を捩りながら天真は頷いた。離れがたい顔をしながら天真は、離れて行くイクティダールに上着を脱いで手渡した。服を受け取りイクティダールは上着を着て立ち上がって天真に手を差し出した。天真は差し出された手を掴んで自分の身体を起き上がる。 「次はいつになるんだろうな。」 「いつでも逢える。敵としてだが・・・。」 「逢うのはな。出来るかどうかってこと。」 「それは・・・判らないな。」 天真は腕を伸ばし首に絡めて口づけをするとすぐに離れた。くるりと向きを変えると出口の方へ歩き出す。 「じゃぁ、な・・・。」 その一言でイクティダールは、姿を消した。天真は気配がなくなったのを確認すると後ろを振り返らずに歩いて藤姫の館に戻った。 足音を立てないよう静かに自分の部屋に戻るとそこには頼久が座って待っていた。天真は箪笥に近づき自分の服を取り出し着替えてから頼久の前に座った。待っていたように頼久が口を開いた。 「今まで何処へ行っていた?」 「・・・街の外れ・・・?」 聞かれた事に疑問で答えていた天真に頼久は眉をしかめた。天真としてもまともに答える事はできなかった。鬼の一族と逢い引きをしていたと知れば、頼久は容赦なく叱咤されると天真は簡単に予測できた。天真は立ち上がって頼久の横を通り過ぎ、布団を敷いてその上にごろりと横になると頼久は向きを変えて天真の方を見た。 「まだ話しは終わっていない。」 「身体も治ったんだから万事解決。それでいいだろ?」 天真に言われてやっと頼久は天真の身体に気がついた。天真はそのまま横向きになったまま、目を閉じるとすぐに寝息を立て始めた。昨夜の情事で疲れていたからだ。頼久は寝入ってしまった天真を見るとそのまま立ち上がって部屋を出た。そのまま藤姫他、あかね達のいる部屋まで戻った。そこで天真の身体が元に戻った事と今日は出かけられないと告げて、また天真の部屋に戻ってきた。天真は深い眠りについていた。頼久は邪魔にならないようにと天真の部屋の前の縁側に腰を落ち着かせていた。本当は天真に聞かずとも昨夜、天真が何をしていたのか知っていた頼久だったが、どうしても天真の口から聞きたかったのだ。昨夜、藤姫の館に戻る途中、天真の姿を見つけ、声をかけようとした。館へ戻る様子もない天真を頼久は追いかけた。神泉苑にはイクティダールが待ち構えていた。そこで天真とイクティダールの関係を頼久は知った。そのあとどうやって館へと戻ってきたのか頼久は覚えていない。ただ頼久は天真が戻って来るまで天真の部屋でずっと寝ずに待ちつづけていた。今朝帰ってきた天真は今布団で眠っている。頼久は天真が起きるまで縁側で刀を抱きしめながら、昨夜寝れなかった分を取り戻すかのように眠りについた。 天真が夢も見ず深い眠りから覚めると、縁側に片膝を立てて刀を抱きしめながら眠っている頼久を見つけた。天真は布団から出て膝立ちで頼久に近づくと肩を揺さぶった。 「おい、頼久。お前、こんなところで寝てんなよ。」 「・・・天真。起きたか。」 「起きたかじゃねえよ。お前な・・・寝るんなら部屋行け、部屋。こんなとこで寝てっと風邪引くぞ。ったく、これじゃ、あかねのことも言えなくなるぞ。」 「お前が起きるのをここで待ちたかったのだ。」 「あっそ。んで?」 天真は頼久の前の柱に背中を預けて座った。頼久は天真を見据えた。話しをどうやって切り出そうか、頼久は必死に考えていた。 「頼久?」 「・・・良かったな、元の姿に戻れて。」 「あぁ、あとであかね達に報告しとかないとな。」 「報告なら私がした。神子殿も安心して気の巡りを正しに行かれた。」 「そうか。サンキューな。」 「・・・。」 「でっ、さっきから俺に聞きたそうな顔してるけど、何?」 頼久はずっと天真に告げられずにいた。昨夜見た事を言えば、喧嘩になりかねない事をわかり切っているからだ。しかし、聞かずにはいられないと頼久は決意を固め、深呼吸をすると思いを口にした。 「・・・とは・・・本気なのか?」 「はぁ?」 頼久の必死な思いは小声で切れ切れだったため、天真にはきちんと聞こえず、間抜けな答えが戻ってきた。頼久は天真を見据えて再び同じ質問をした。 「鬼の一族の男とは本気なのか?」 「・・・知ってたのか。」 「昨夜、お前を神泉苑で見つけ、声をかけようとした所にあやつが現れた。」 「そっか。見られちまったのか。それにしてもよりにもよってお前とはな。」 天真は今までの事を頼久に話し始めた。まるで予告をしていたかの様に天真はイクティダールとのことを赤裸々に話した。頼久は驚きを隠せずにいた。反りが合わないと反発していた頃から天真とイクティダールはお互いを支えあっていた。今では新の友ともいえる二人だったが、天真の支えとはなれていなかった事を頼久は知った。天真の妹、蘭のことを知ることもできて一石二鳥だと天真は少し哀しそうな顔で笑った。頼久は天真に近づき抱きしめた。 「なっ・・・なんだよ、頼久。」 「そんな悲しい顔で笑うな。哀しい時は哀しい顔をしろ。」 「かなしかない。蘭は近くに居る。手を伸ばせば取り戻せるところにいる。俺がいた所から比べれば近くなった。必死に探していた一年間、やっと報われる。」 「天真・・・。」 「あいつがどんな状況でさえ元気でやっている。それが判れば、アクラムをぶっ倒して蘭を助けられる。だから俺はつらくないし哀しくない。今を精一杯やってあかねを助けて、この京を救って蘭を助けて。俺は・・・。」 「神子殿を護り京を救う役目は私たち八葉が一緒だ。妹御を助けるのを私たちに手伝わせてくれないか。私たちは仲間だ。そうだろう?一人で何もかもを抱えてしまう事はないのだ。その荷物を私たちにも預けないか?」 「・・・頼久・・・サンキュー。でも蘭を助けるのは俺の役目だ。護ってやれなかった俺の。」 抱きしめられたまま天真は頼久の胸で静かに泣いた。頼久は静かに天真の頭を撫でた。天真は腕を突っぱねて頼久から身体を離した。少し離れた頼久の目の中に天真が映り、真剣な顔で頼久は口を開いた。 「私では・・・だめなのか?頼りにならないか?」 「・・・頼久・・・。」 「どうなのだ、天真。私はお前にとって頼りにならない存在か?」 天真は頼久の目に映る自分に堪えがたくなり下を向いた。頼久の言葉が天真に響かなかったのでは無かった。天真にとっても今の状態を良くは思っていなかった。イクティダールと逢う事は、仲間である八葉、護るはずのあかねを裏切る事になる。しかし、天真の心の中を占めているのはイクティダールだった。敵として最初は会っていたはずが、今ではなくてはならない存在であるイクティダール、反発し合っていたが今では友の頼久。天真は頼久の言葉に更に涙を流した。ずっと頼られる事に慣れていた天真に頼る事を教えてくれたイクティダール、そして今は頼久。二人の思いの間に天真は揺れ動いた。 「頼久は本当に頼りになる。だけど、俺は・・・お前の思いを受ける権利はない。」 天真は袖で涙を拭いて頼久を泣いてない瞳で見て、自分の思いのたけをぶつけた。頼久を引き離し天真は座っていた位置をずらし、きちんと見える所に腰を落ち着かせると正座をした。 「ごめん、頼久。お前の思いは嬉しい。でも・・・本当にごめん。」 「鬼の男とはこれからも関係を続けるつもりなのか?」 「たぶん、続けると思う。イクティダールは敵かもしれないけど、でもあいつは優しすぎる。人に対しても。アクラムから救い出すのは、蘭だけじゃなくてあいつも救いたい。それが今の俺の思い。俺を救ってくれたイクティダールに返せる思いだ。」 「そうか・・・無理を言って悪かった。しかし、お前は一人ではないことを忘れないでほしい。私たち八葉と神子殿がついている。何か支えを必要と頼ろうと思った時には忘れないでくれ。」 頼久は立ち上がって刀を手に取ると廊下を歩いて行った。天真はいつまでも顔を上げる事ができなかった。裏切りを続けるかぎり、天真にとって京を救う戦いはつらい思いを続けるだろうことを頼久は理解した。頼久の足音が聞こえなくなると天真は顔を上げてその場から見える京の空をゆっくりと見上げた。 「今日も快晴だな・・・。お前もこの空を見てるのか、イクティダール・・・。」 ”終” |
| ちょっと中途半端かな?というより、”子供”というお題のわりには子供の行数はとても短いかも。でも天真が子供になったらが書きたかったのもあるんです。そして絶対に反発を食らうだろうと思うのがカップリングです。今まで頼久×天真を書いてたくせに今回イクティダール×天真です。本当は書くよりは読みたいんです、この棘道。しかし、棘道。誰一人としていや、書いているかもしれないけれど少ない。いないに等しい状態。だから思わず書いてしまいました。「イクティダール」がいればいいんだけど、この人と関わり有る八葉って、少ないんですよね。イノリに天真に頼久、泰明に友雅。その中でカップリングって更に減るんです。私の中でイノリと天真がフィーリングカップリングでいくんですが・・・何せイノリは無理なんです。私の中でちょっとショタが入ってしまいそうで。そうなるとやっぱり天真でしょう。それにしてもこれは浮気になるんでしょうか?くっきりと頼久にバレバレでしかも天真は振ってしまったし・・・。果たしてこんな小説を書いてしまった私は許されますか?許されなくてもしかたないかなぁとは思うんですが、やっぱり自分的には頼久×天真<イクティダール×天真が読みたいです。 |