<思い出>
俺とアイツの出会いは最悪だった。
親に無理矢理決められたが高校に転校させられた俺は、あの時はずっと機嫌がいい日は少なかった。
そんな俺に話しかけて、友達の地位まで昇り詰めた強者もいた。その頃には男子校でやっていく自信もついて、イヤな事もすっかり忘れられるぐらいだった。
校内にはカフェテラスもあり、俺はよく入り浸っていた。そこには生徒から先生までゆったりとした時間を過ごしにやって来る。
俺はそこで家で独学していたお茶の煎れ方からマスターを見ながらプロに近い所まで登り上げたと思ってる。そこで良く店番とかさせられてたけど、今ではいい思い出だ。
・・・話がそれて行くな・・・。

ある日、ダチが”煙草を一ヶ月我慢出来たらご褒美がついてくるんだ”と騒ぎ回っていた。高校生で煙草自体がまずいもんだが、あの頃は誰もが黙っていた。むしろ先生からもらう事もしばしばあったほどだ。一人では絶対に無理だと本人も自覚していたせいか、目に見えていたせいか、俺もそいつと一緒に禁煙する事にした。その褒美があいつが作った結婚式用の大きなケーキだった。俺は別に褒美が欲しくって始めた禁煙ではなかった。ただ、気晴らしにはなるかと思っただけだし、第一俺はあいつとはなぜか気が合わなかった。俺達二人はつうか、主にダチの方だけど、頑張って禁煙していた。吸いそうになるのをじっと我慢していたし、別のモノを口に入れたりしていて、一ヶ月間じっとやり過ごしていた。

一ヵ月後、俺たちはカフェテラスで喜び合っていた。ダチの目の前には褒美の大きなケーキがあった。俺はそれを見たからって別に羨ましいとは思わなかった。でも俺の目の前にも褒美が差し出された。俺はいらないと言っていたのに何度も引かずに俺に手渡してきた。しかたなく俺は差し出された褒美を受け取る事にした。俺への褒美は小さな箱に入った指輪だった。なおさら俺は受け取れないと思ったのに、それに伴って付いて来たものもあった。それは俺が嫌っていたはずのあいつが、俺を嫌っていたはずのあいつが、実は俺の事を一目惚れしていたという。付き合えと俺に言って来た。確かに俺は男との経験はある。でもそれは腐れ縁のないオトナの関係ばかりだ。ちゃんとした恋をした事が、高二になってすらなかった。女との恋すらもなかった。どちらかと言えば遊びだけの付き合いの方がお互いにとって楽だったこともある。

俺は食わず嫌い状態だったあいつと付き合ってみる事にした。幸い顔も悪くなかった。最初の頃の俺は、一人とずっと付き合う事が不安でしかたなかった。その度に他の人にちょっかいを掛けては不安を取り除いていた。あの時、あいつはどう思っていたのだろう。俺はあいつが他のやつと居ようと何とも思っていなかった。興味がなかったワケじゃない。でも不安だけはしっかりと俺の心に刻み込まれていたような気がする。
気が付いた時には、俺はあいつ一人にハマっていた。嫉妬する事もそれまではなかったのに。あいつに憧れていた後輩にまで嫉妬していた。それを知られたくないから、俺はずっと表情に出さなかった。それだからよく喧嘩もした。喧嘩して、自分自身に腹を立てて、泣いた。仲直りが出来なくて、周囲に心配も掛けた。不安がっていた俺をあいつは辛抱していたと思う。大きな包容力があるのを俺は感じた。”コイツなら俺は一人になる事はないだろう”って。その時、俺はやっとあいつ一人を愛そうと思った。恥じててもしょうがない。嫉妬している姿も見せようとも思えた。不安は俺だけじゃないんだって判ったその時から。

それなのに・・・。

あいつは俺の横にいない。俺は捨てられたのだ。これだけ入れ込んでしまった俺はもう抜け出す事は出来ない。まるであいつと言う底なし沼に足を突っ込んだみたいに抜け出す事は出来なかった。埋まり過ぎた。暖かい、居心地の良い場所に。安心しきっていた。あいつと言う場所に。

俺の心には大きくて黒い穴が口をあけている。埋められることはきっとない。だって、あいつ以上の存在を見付ける事は絶対に無理だからだ。俺の事をずっと待っててくれた、不安さえも一緒に包み込んでくれるそんなあいつ以上の存在を見付ける事はできない。


そうあいつはもう俺の横にはいない。
これからはずっと・・・。
「終り」


後書:なんだこりゃ・・・。めっちゃめっちゃ短いよ。どうした、私って感じですか・・・(苦笑)まあ、彼の思い出を簡略に描き過ぎたのがいけないのかもしれない。でもこれ以上長く書くと相手の名前と彼の名前、しかも学校名まででてきそうそうな勢いだし。会話なんていれたら相手にバレてしまう可能性があるし。そうなると短くてもしかたないという事で・・・。詩だと思って読んで下さい。



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