贈り物

何気に俺の目に止まったモノを手に取った。それは他のものよりも一際綺麗だった。 俺は普段使わない銭入れを懐から出して、それを買った。こんなの渡した所で使ってもらえないモノだと判っていた。でもどうしても手に入れたい気分だった。
俺は大事に懐にしまって館の自室に直接戻った。何だかヤツと顔を合わせ辛かったから。
「想像なんてするモンじゃねえなぁ・・・。」
俺は奴が使っている姿を想像していた。喜びもしないだろうモノを見つめて。
「何を想像したのだ?」
「うっ・・・うあっ!」
突然、後ろで声がして驚いた。声からして、今、俺が一番会いたくない、想像したヤツだ。俺は持って居たモノを引き出しの中にしまって振り返った。想像通り、そこに立っていたのは頼久だった。
「いきなり声かけんなって。驚きのあまり心臓が止まったらどうするんだよ!」
「お前の心の臓はそんなに柔なのか?」
「・・・もういい。っで、どうしたんだ?なんか用か?」
「神子殿が明日は共に行動して欲しいと。」
「判った。なぁ、頼久・・・。」
俺は膝立ちのまま頼久に近付いた。
「てっ、てん、天真?」
俺達が普通の関係でなくなってからはや数十日は経ってるのに頼久はこんなにも初だ。可愛いよな、まったく。
「なぁ、しようか?」
「だっ、だが・・・明日・・・。」
「大丈夫、明日はちゃんと起きる。」
そんな根拠どこにもない。でもこうでも言わないと頼久は俺を抱こうとしない。抱い
たら抱いたで、翌日の俺の身体を心配して庇ってばかり。だから無理強いも出来ないんだよなぁ・・・。
「イヤなら別に構わねえよ。さっさと自室に戻れよ。」
俺は振り返って膝立ちのまま部屋の中に戻った。もう寝よう。想像しちまった姿でも見ながら、夢でいちゃいちゃすりゃいい。虚しいし、淋しいけど、振られちゃ仕方ないよな。
「お休み。」
寝床に横になって俺は頼久に告げた。このまま目を閉じれば夢が見られるかもしれない。声も生々しく付きそうだけど・・・。それはソレで好し。嬉しい限りだ。
部屋の前のところでは未だに頼久の気配がする。何で戻らないんだよ。ったく。
「天真・・・。」
返事なんかしてやらない。さっさと寝よう。明日はあかねと頼久と一緒に出かけないといけないんだろう?俺は頼久と違って朝早くは起きられないんだし。
「ゆるりと休め。」
一言だけ言って、頼久の気配が遠のいて行った。明日、ちゃんとアイツの顔、みれんのかよ。つうか、そこで本当に戻るところが頼久だよなぁ・・・。戻るか、普通さ。まぁ、ヤツは気乗りしてなかったみたいだし。しょうがないよな。俺だけ餓えてるって感じでヤな感じだけど・・・。
「・・・頼久のバカ野郎・・・。」
布団の中で丸くなって俺は愚痴をこぼした。
「誰がバカだ。」
げっ、まだ居たのか。つうか、気配消すなんて卑怯者だ。
「誰だろうな。」
今も俺は頼久の方を見ていない。見られねえよ。誘いを断ったヤツの顔なんて。きっと俺の顔、変だろうし。餓えてそうな顔、絶対してるから・・・。
「天真、私は・・・。」
「ゆっくり寝ろって言ったのはお前だぞ。だから俺は寝る。邪魔すんな。」
衣擦れの音が近付いて来る。それ以上近付いて来るなって。俺を誘うなよ。せっかく、身体の熱さを沈めたって言うのに。
「天真・・・。」
耳元で名前を呼ぶな。熱さを身体に戻すつもりかよ。堪えろ、俺。堪えろ・・・。明日、あかねと行動するだ。ランニングで居るわけにはいかなくなるんだぞ。ヤツも一度断ったんだ。どうこうする気はないはずだ。
「近寄るなよ、襲うぞ。」
いくら俺だって欲求不満で襲うぞ。始めたら主導権は奴のものになってるかもしれないけど。でもやる気のない奴を襲っても虚しいだけだ。最中でさえ奴は、乗り気にならないだろうし。
「お前がそうしたいならそうすればいい。」
「お前!俺が出来ないだろうって思ってるんだろう!」
俺は堪え切れなくて、起き上がって、頼久に掴み掛かった。引っ張って体勢を崩した頼久の上に乗っかった。着物の中に手を入れて脱がした。素肌に俺は頬を寄せた。頼久の体温を感じる。触れてるだけでも気持ちがよくなって来る。
「しないのか?」
手が止まってる俺に頼久は余裕の笑みまで浮かべて身体を起こした。
「っしょう!」
俺は頼久に股がりながら着物を脱ぎ捨てた。そして頼久のを片手で触れ、もう片方の手で自分のにも触れた。相変わらず、頼久はマグロ状態で動く気配は全くなかった。先走っていたてを自分の中に手を入れた。頼久がしようが、自分がしようが、最初は痛いものなんだ、と自分でしておきながらしてる最中に考えた。
「天真、何を考えている?」
「・・・なんでもねえよっ。」
俺は頼久を自分の中に埋め込んだ。自分の手で育て過ぎたそれを全体重で詰め込んだ。
「頼久・・・ちったぁ、手伝おうとか思わねえのかよ。」
「襲ったのは天真だ。私は明日に響くからと告げたぞ。」
言ったけど戻って来て、俺の中の思いを引きずり出したのも、お前だ。でも誘ったの・・・俺になるのか。
「判ったよ、マグロでもなんでもなってろよ。」
俺は自分の身体を支えながら動き出した。

その後、結局、頼久の理性もブッ飛んで俺の事を激しく抱いた。今、奴は気持ち良さそうに、隣りで寝ている。俺は半ば意識を飛ばしてたから、途中から記憶がない。ただ激しさの中にも、優しく抱き締めた腕の温もりは思い出させる。
そろそろ朝稽古が始まる時間だ。でも、もう少しコイツの温もりの中にいたい。
「いっ・・・てぇ・・・。」
身体を少しずらしただけで、一部だけが物凄く疼く。まだ何か入っている気がする。絶倫だったんだよな、コイツって。朝稽古はパスするとしても、流石にあかねとの同行はパス出来ないし。どうしたもんだろうなぁ・・・。
「・・・天真・・・。」
頼久?目を覚ましたのか?もう少しだけ・・・もう少しだけ寝ててほしいんだけど・・・。
「・・・。」
寝てる・・・?寝ボケ?寝言か?
「頼久、まだ寝てろよ。」
そっと起き上がって、布団からでて引き出しの中から取り出して、しまったものを手に取った。
「天真、そんな格好でいると風邪を引くぞ。」
「うっ・・・わっ・・・びっ、びっくりした・・・。」
起こさないように起きて来たつもりだったのに、そんなことにも関係なのか、頼久は目が覚めてしまったらしい。やっぱ、武士(もののふ)だからなのか。俺の背にかいまきをかけてくれた。頼久は俺が持っていたものに目を止めていた。驚いていたせいで隠し損ねたモノが手中のかなにありっぱなしだった。
「天真・・・それは・・・。神子殿に渡すモノか?」
そう言う誤解をさせてしまったのは持って居たモノ自体を隠せなかったのも悪かったから。
「あっ・・・えっと・・・こっ、これは・・・違う、違うぜ。」
「隠す事はない。女性に贈り物をするのが普通なのだろ?」
「だから・・・これは・・・。」
校則やぶりのものをセンセに見付かって言い訳をするようなしかたしてるし、俺・・・。ここは男らしくずばっと言おう、これは・・・。
「お前にやるためだよ!受け取ってもらえないの、判ってても。つい買っちまったんだよ。」
頼久の手に押し付けて、恥ずかしくって顔を余所に向けた。買う時も、買ったあとも、部屋に戻って来ても、俺の頭の中は頼久に渡したらどうなるのか、その事ばかりが駆け巡っていた。今、渡したあとも、頼久の否定する顔が見たくなくて、俺は頼久を見ないようにしている。
「私のために買ったと言うのか?」
「そうだよ。頭が腐ってるとでも思えよ。オトコの俺がオトコのお前に・・・。」
「有り難う、天真。」
俺の言葉を遮って礼を言いながら、頼久は俺を抱き締めてくれた。でも、奴の唇は次の言の葉を紡ぎ出していた。アレで終わりではなかったみたいだ。
「だが、これは、私には似合わないだろう。」
その言葉に俺は傷ついた。俺の髪を触りがならまだ頼久は続けた。
「だからこれは・・・。」
散々弄んだ俺の髪の毛を少し直しながら、手持ちの紐で結び、そこに刺した。
「似合うかよ、俺に・・・。」
むかし見た、髪の毛の短い女の子が無理矢理したような感じになってるんじゃないだろうか。
「可愛いぞ。」
そう言われると恥ずかしいっての。それに可愛いって言われてもあんま嬉しくねえし。俺が買って来て、戻されて・・・何か、告って”ごめんなさい”された気分にもなりそうなのは、俺の気のせいか?・・・慣れない事、するもんじゃなかいかも知れねぇ。つうか、するんじゃなかった。余計に自分が恥ずかしくなってきた。
「頼久のアホ。」
「天真・・・顔が紅いぞ。どうした?」
頼久が俺の首に当てられた。頼久の少し冷めた手が気持ちイイ。さっきまで、この手が俺の身体を動き回って・・・って、なに想像してるなよ、俺・・・。ヤバいって・・・。
「熱があるなら、今日の外出は控える事だぞ。」
「・・・熱なんてねえよ。」
気付かないってどうよって・・・感じもしないでもないけど・・・。仕方ないか・・・、頼久だもんな。
「なら良いが・・・。無理はするな。」
「誰が無理させるようなことさせたんだよ・・・ってぇ・・・。」
叫んだら怠い腰の奥が響いた。さっきまで・・・って・・・だから・・・。
「最初は、お前だ、天真。」
「・・・。」
始めたのは俺だ。でも途中からノって来たくせに・・・。時司の鐘鼓が鳴ったのが聞こえた。
「行けよ、頼久。俺は今日は行かないから。」
「あぁ。」
「あっ、待った。」
俺は立ち上がった頼久に抱きついて、キスをした。そして自分の髪の毛に刺してあったのを外して、頼久の手に握らせた。
「やっぱ、お前が持ってろよ。お前のために買ったんだからさ。」
「判った。受け取っておく。」
頼久は俺から離れて、着物を着た。そして何事もなかったように、いつものように、俺の部屋を出て行った。そんな姿も惚れた弱みじゃなくとも、かっこよく見える。アレはこの後、どうするんだろう。奴は絶対に刺す事はないだろうし。持っていたら、誰かに勘違いされるだろうし・・・。妥当的には頼久が他の奴に渡す・・・。特にあかね辺りに・・・。きっとそんな風景を見たら泣きそうになるんだろうな・・・。でもまぁ、今は取り敢えず受け取ってくれたんだ。それだけでも好しとしかないといけないな。
「俺も着替えて準備っすっか。」
井戸の方へ俺は行き、昨日の情事を消してから部屋に戻った。着替えたあとにあかねの部屋に向かった。

あのあと渡したソレは、頼久の手元にずっとあった。時々、思い出した様に俺の髪の毛につけて。何が楽しいのか、それをじっと見つめて満足している。まぁ、頼久が喜んでくれただけ嬉しかった。簪に運命のようにひかれたのかもしれない。手渡しできて本当に良かった。喜んでくれた顔が見れて・・・。買った甲斐があった。でも、いつか、頼久につけて、それを自分なりに楽しもう。付けてくれそうには、ないけどな・・・。

[終]

後書:簪じゃなくても良かった。簪を材料にしなくても良かった。
だけどどうしても使いたくなって簪を渡す事にした。
平安時代だし、あるかなぁって・・・微妙だけど。
天真から頼久にプレゼント。
頼久が買って来ても良かったんだけど、やっぱり武士だし、
そういうのはしたことなさそうだなぁってイメージ的にね。
だから天真。
天真だったら女の子にプレゼントぐらいしてるでしょうと理由で天真からのプレゼント。
という変な考えに辿り着いた作品です。


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