「忘れ物」






俺の前に一人、知り合いだと名乗る男がやってきた。
少し悲しそうな顔をして・・・
泣いているのかと俺は手を伸ばして頬を触った。
でも頬は濡れて無くて、それは錯覚だったと判っても手を離すことは出来なかった。
悲しそうな顔は更に悲しくなっていくように見えて。
俺の手の上に重なった手は、むかしから知っている暖かさで。
でも今の俺には彼のことは思い出せない。
それが俺は今、悲しい。
その悲しい思いをぬぐい去ることは、今の俺には出来そうにない。
どうやらその悲しい思いをさせているのは、”俺”だから・・・
いや、多分、そう思っているだけなのかもしれないが。
ごめんな、思い出せなくて。

「今、幸せか?」
「あぁ・・・幸せだ」

俺が目を覚ましたときには、何もかもが判らなかった。
その看病をしてくれた彼女が、俺の傍に今は居る。
それが最高のことだけれど、でも彼が悲しそうにしているのを見ると胸が締め付けられる。
それはどういうことなのか、彼に聞いたところで答えてはくれないだろう。
笑って「それならいい」と言われてしまったら・・・
いつか俺自身の記憶を取り戻すことが出来たなら、この心の締め付けられる思いが何なのか判るのだろうか?
それとも俺には記憶を取り戻すことが出来ないのだろうか。
遠い、場所に忘れてきた俺の記憶。
白い部屋が今の自分の記憶の最初の場所。
優しく笑う彼の姿を見てからは、必死に思い出そうとしている。
壊れてしまうから、やめろと彼は言うだろう。
でもその悲しい顔を笑顔に戻したいから、俺は必死になると思う。
いつか、遠くへと忘れてしまった記憶を取り戻すために。





「幸せだ」

今は違うと思う。
本当の幸せを見つけるために、俺は自分を取り戻そう。
幸せの中で笑っている彼と一緒にいるために・・・







後書き:ポエムです。多分。これはそんな感じでしょう。誰の心境を書いたのか、これじゃ全く判らないですよね。判ってて書きました。ということで、これは久しぶりにWEIβです。えっと、最後のアニメシリーズの方の。これしか思いつきません。多分、もう書けないかも(苦笑)一応CPというか、そういうものとしては、アヤとヨージです。もし、次が書けたとしたら、最初の頃かもしれません。アニメと漫画の中間点は流石に書けないので。

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