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しばらくは驚かれるだろう・・・クラスのやつらにも先生にも・・・。俺は細小路が居るだけで学校に行く気になれる。もしかして・・・俺・・・・。まさかな、細小路は親友だ。それ以下でもそれ以上でもない。それ以上の感情を持ったら学校も親友も止めないといけなくなる・・・。考えるな、親友以外のことを・・・。 「どうしたんだ?ぼーっとして・・・やっぱ、具合悪いか?」 「ぁ・・・何でもない。大丈夫だ。」 「それならいいけど。」 細小路はドアを開けて教室に入る。俺も続いて入って俺の顔を見る連中に挨拶でもしてやろうと息を吸った。 「・・・・よお。」 細小路は俺のほうを見て微笑んでからクラスのやつらに挨拶をしていた。俺はそのまま自分の席に行き座って空を見上げた。今日は雲一つない綺麗な青空だった。 「みんなの顔、見たかよ。すっごく驚いた顔してたぞ。」 「知ってるよ、それぐらい。見なくても想像できる。」 細小路は自分の席について俺の方を見ながら、クラスメートの話をしていた。これなら普通に接することができる。これなら親友も学校も止めなくて済む。このまま卒業までいられたらいいなぁ・・・ 「ほら、先生来たぞ。前見てないと怒られっぞ。」 「あぁ。」 ドアを開けて先生が入ってきたのを細小路に告げると俺はまた空を見ていた。ただなんとなく懐かしく見える蒼い空。前から同じなのにどうしてか俺は空にひかれている。前か・・・俺が拾われた日も蒼かったって、シスターは言ってたなぁ。そのせいかなぁ・・・きっと。先生がいつもの出席を取ってるのを聞きながら、俺は離れてるシスターのことを思い出していた。 施設を離れてから一度も戻ったことがない。シスターから戻ってくるなと言われていたから。俺は今すぐに戻りたい。あいつのことが嫌だから。世間体を気にするやつだなんて一緒に過ごしてから気がつくなんて馬鹿みたいだ。前は俺のこと買ってまで抱いてたくせに、再婚すると言って連れてきた女はコブ付き。しかも俺と一つ違い。そんとき俺の代わりを見つけてきたんだって判った。あいつは大人と子供の境目の歳になったやつが欲しかっただけなんだって。教えこむにはちょうどいいって思ってたのか・・・。それにしても俺が出てからあの家はどうなってんだろう。あの家にも一度も帰ってない。義弟が何とかしてそうだけど・・・。可愛い顔してたからきっと喰われてるんだろうな。 「蘇芳?蘇芳、いないのか?」 「あっ、はい。」 「居たら返事ぐらいしろよ。お前さんはどうやら身体が弱いみたいでしょっちゅう居ないんだからな。こちらとしても心配するだろうが。」 「すみません、今度は気をつけます。」 「大丈夫か?じゃぁ、この問題を解いてくれな。」 俺はもう一時間目の授業が始まったことにやっと気がついた。黒板を指している先生を見ながら立ち上がり黒板のほうへ行く。 チョークを持ってしばらく考えてから答えを書き始める。 「・・・流石、蘇芳だな。戻っていいぞ。」 俺はチョークを置いて手を叩いてから自分の席に戻った。それから机の中から遅くなったが教科書とノートを出して今度は黒板を見ていた。他の生徒にも違う問題を先生は与えていたがほとんどが出来ないらしく黒板の前で立ち止まって考え込んでいた。 細小路が当たって俺のほうを見てきた。俺は仕方なくノートに答えを書き込み細小路に渡した。日差しが暖かい・・・今日も昼は外で食べるかなぁ・・・。俺は机に伏せて日の当たる暖かいところに手を置いて暖を取った。細小路が戻ってきて俺にノートを返すとありがとうと言って自分のノートに答えを書き込んでいた。 時間が普通に過ぎて行き、昼は細小路と一緒に外に行き食べ、午後の授業を受けて・・・細小路はそのまま放課後はクラブに行った。 俺は久しぶりに自分のいた施設に行った。 そこには古ぼけた教会が立っていた。中からはシスターの声が聞こえる。俺は塀のところに寄り掛かり久しぶりに聞くシスターの声に耳をすませていた。わっと、中から出てきた子供たちに俺はビックリした。そのあとを追いかけてシスターまで出てきたようだ。俺は思わず顔を見せないように後ろを向いた。 「こんにちは、ここに何か用?」 「えっ・・・えっと・・・。」 俺は答えられずにもじもじしていると、シスターが俺の顔を覗き込んで口を押さえて驚いていた。 「・・・あっ・・・あなたは・・・・ツルギ・・・剣なのね?どうしたの?ここには戻ってこないようにって言ってあったのに・・・。お家で何かあったの?」 「・・・なっ・・・何もない・・・ただ・・・蒼い空を見てたらシスターを思い出して・・・でも戻ってくるなって言われたから・・・ここで声を聞いてただけ。それだけだよ。」 「まったく・・・中にお入りなさい。少しお話ししましょう。あなたの身の回りの話し、いろいろと聞きたいわ。」 俺はシスターに言われるまま教会の中に入った。外に行った子供たちはいいのかと聞くとシスターはご飯には戻ってくると言ってドアを閉めた。事務室になっている応接室にシスターは俺を入れた。俺は中に入るとソファーに座った。最初で最後に座ったここにもう一度座ることになるとは思いも寄らなかった。シスターはお茶とお菓子を持って俺の前に座った。 「それで本当にどうしたの?」 「・・・シスターの顔見たかっただけ。本当だよ?」 「判ってるわよ、あなたの瞳は嘘をついてないもの。でも何か隠してるわね?」 「隠してないって・・・何を隠すって言うんだよ。」 「あなた・・・家で何かあったんでしょう?」 「へっ?何でそんなこと聞くの?」 「これは私のカンだけれど、顔色が良くないわ。それに肌もちょっとこの若さにしてはぼろぼろよ。ちゃんとご飯食べてる?ちゃんと寝てる?」 「隠しごとはシスターには出来ないな・・・。」 「話してごらんなさい。力になれることはしてあげるから。」 俺は自分の身体を売っていること以外、話し始めた。”蘇芳”さんが結婚をしたこと。その相手に自分より一つ年下の子供が居ること。家を離れたこと。最近高校にまともに行ってること。他にもいろいろと話した。シスターはそんな俺の話を聞き漏らさないように聞いていた。 一通り話すとシスターは俺の方に来て座り俺の手を握り締めた。 「いろいろと大変だったのね。いいわ、あなたは特別にここに戻ってくることを許してあげるから、何かあったら私のところにいらっしゃい。話し相手にならなってあげるわ。」 「ありがとう、シスター。それにしても相変わらずぼろぼろだね、ここ。」 「仕方ないわ。子供も増えたから自給自足で毎日食べて行くのがやっとですもの。」 「そっか・・・。シスターも大変なんだな。」 俺はそれしか言えなかった。俺はまだ自分を売ったお金をここに寄付してない。ある程度溜まったら送ろうと思っていたから。ここまでひどいなら今、あるお金を俺だって判らないように送らないと。きっと俺からだって判ったら受け取るどころか返されるのがオチだもんな。帰ったらここに寄付できるようにしておこう。 「えっと・・・そろそろ帰るよ。明日も学校あるし。」 「真面目に行くのよ。あなたはまだ扶養家族なんですからね。」 「判ってるよ、シスター。」 俺はシスターにまた来るって一言残して応接室から出て行った。入り口付近にご飯の時間に帰ってきた子供たちが待っていた。俺は子供たちが俺の時のような大人に引きとられないことを願った。俺と同じ目になんて合わせたくないし。俺はこいつらを養えるぐらいのお金を溜めることを心から誓った。早く大人になりたい・・・。いっぱい稼げるような大人に・・・。 俺は家につくと今どのくらい銀行に預けてあるか通帳を見て確かめた。 「こんなもんかなぁ・・・でも、もっと沢山溜めないと・・・。」 俺は通帳をしまって寝室に入った。ポケベルが鳴ってたらしく、俺は手に取った。 『土曜日のことなんだけど、 話があるので連絡下さい。 晴美』 と、画面に出ていた。俺は明日学校に行ったら保健室に寄ることを決めた。お金を溜めると決めた以上、今以上に身を削らないと。でも学校に行けなくなるほどしないようにしないとな。せっかく学校に行ってることシスターに報告したし。一応卒業までしておかないとな。明日は早めに起きて飯喰って・・・学校行って授業受けて普通にバイトでも探すかなぁ・・・。それともお水でも行くかなぁ・・・。店に行ってる分、また授業で寝てそうだけど・・・。頑張るしかないよな、俺自身のため・・・しいては、シスターのために。 翌日、俺は迎えに来た細小路を外で待たせてすぐに学校に向かった。すぐに行くと細小路にまた心配されそうだから放課後、あいつが部活に行く頃に行こう。 普通に授業が過ぎて行くのを空を見ながら過ごした。いつもと変わらない先生の声、いつもと変わらない風景・・・。俺はそんな中先生の声を聞きながら昼寝に入った。 細小路が昼飯の用意をして俺を起こしに来た。いつものように外に行き、最近お気に入りになったベンチに座り昼食を摂り始めた。買ってきた半分以上を細小路が食べていた。俺はそれを見ながらやっぱり胸やけを起こしていた。 「本当に良く喰うよな、お前って。燃費悪すぎ。」 「うっせぇ〜。蘇芳が喰わな過ぎなんだよ。」 「はぁ・・・もういいや・・・。」 俺はベンチの背もたれに寄り掛かり空を見た。木陰から覗く光は俺の顔を照らした。俺は手で顔を被った。暖かい日差しは俺を包んで俺に眠りを誘った。俺は横で食べている細小路をちらりと見てから目を閉じた。 少ししてから細小路が俺を起こした。俺は恨めしそうに睨んだが、時計を見て昼が終わる時間だと判って仕方なく身体を戻した。細小路は俺を立たせてひっぱりながらゴミを捨て教室に向かった。俺はまだ眠気が飛んでなくて教室に戻ると自分の席で眠りに入った。先生が来ていることにも気づかず寝ていると、細小路がまた俺を起こした。今度はなんでも寝てるつもりだったが先生に指されていることに気づき、前に行って黒板に答えを書いて戻ってきた。戻ってきてから机から教科書とノートを出して問題を書いて答えを書いて細小路に渡してまた眠りに入った。本当に今日はいい天気で俺に睡魔が襲ってくる。俺は睡魔に取り合えず身を任せて眠った。 |