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気がつくともう日は上がっていた。まる一日眠っていたらしい。俺はバスルームに行って軽く汗を流した。さっぱりしたところでベルが鳴った。俺はバスローブを羽織って玄関先に行った。 そこには義弟の十夜が立っていた。俺は玄関を開け中に入るようにいうとまたバスルームに行って制服に着替えた。リビングに戻ってくると十夜は立ったまま待っていた。俺はキッチンに行って冷蔵庫からジュースを持ってくると座るように言った。近くにあったパンを掴んで俺は座った。 「どうしたんだ?朝っぱらから。」 「何でも・・・。義兄さんに逢いたかったから。」 「あっそう。でもお前、学校は?」 「行くよ、これから。」 「そう。俺はそろそろダチが呼びに来るから出なきゃいけないんだけど・・・。」 「うん・・・判った。学校に行くよ。突然、邪魔してごめん。」 「おっ・・・おい。本当にそれだけかよ。何かあったんじゃないのか?」 「何でもないよ。じゃぁ、今度はちゃんと連絡してから来るよ。」 そういうと十夜はそそくさと玄関に行き出て行った。そのあとすぐに細小路がやってきた。細小路は開いていた玄関から入ってきてリビングに居る俺に声を掛けてきた。俺はいたことにすら驚くぐらいほうけていた。突然やってきて帰って行った義弟は何をしに俺の部屋までやってきたのか。家のほうで何かあったのかもしれないのに、相談にも乗ってやらなかった俺が悪かったのか? 細小路はそんな俺を連れて学校に向かった。 俺は学校帰りにここ最近帰らなくなっていた実家に帰ることにした。義弟の様子を見るために。細小路が部活をやっている姿を少し見てから学校を出た。 実家に帰るとまだ誰も家にはいなかった。俺は持っていた鍵を使って家に入って待つことにした。 暫く経ってドアが開く音がして俺は玄関に向かった。ドア先に立っていたのは義母で、俺の顔を見ると驚いていた。いないはずの俺がここにいるのがそんなに驚くことなのだろうか。 「お帰りなさい、お義母さん。お邪魔してます。」 「ただいま・・・。いいのよ、ここはあなたの家なのだから、そんな他人行儀じゃなくても。いつでも帰ってらっしゃい。」 俺は玄関先でしゃべってることに気がつき中に戻って行く。義母も一緒に中に入ると俺はリビングの椅子に座った。義母は買い物をしていたのか荷物を冷蔵庫に入れていた。冷蔵庫からお茶を取りだし俺の前に出した。 「それにしても今日はどうしたの?何かあったの?」 「いや・・・ちょっと義弟に・・・。」 「十夜に?あの子、最近何か変なのよ。相談にのってあげてね。」 「判ってます。」 普通、両親が子供の相談にのるもんじゃないのか?でもあいつの相談事は両親にも言えなさそうなことみたいな感じだったしな。 お茶を飲みながら少し義母と雑談をしつつ義弟を待つことにした。 「・・・ただいま・・・。」 「お帰り、十夜。剣さんが来てるわよ。」 「えっ・・・。義兄さんが?」 「よお、十夜。俺んちに来いよ。話し、聞いてやるから。」 「うん・・・。じゃぁ、母さん。義兄さんの所に行ってくるね。」 「えぇ、判ったわ。剣さん十夜のことお願いしますね。」 俺は十夜を連れて自分の家に戻った。 十夜は俺の部屋に入ると借りた猫のようにかしこまってしまった。俺はリビングの椅子に座るように言って冷蔵庫から飲み物を持って戻ってきた。十夜は下を向き唇を噛み締めてるようにみえた。俺は飲み物を十夜に渡すと隣に座った。 「どうしたんだ?相談、ちゃんと聞いてやるから話せよ。」 「うん・・・。義兄さんは義父さんの・・・。」 「義父さんの?・・・そうか・・・やっぱり・・・。」 「やっぱりって・・・。義兄さんは知ってたの?知ってて俺を・・・。」 「多分って憶測だったけどな。義母さんには言った訳ないか・・・。」 「言えないよ。義父さんが俺を・・・なんて・・・。言えないよ。」 「そうだよな・・・。十夜、お前ここに住むか?そうすれば、義父さんからは逃げられる。俺みたいだけどな。義母さんには悪いけど・・・。」 「いいの?俺がここに住んでも・・・。俺、お金・・・。」 「いいよ、そんなことは。ただ、家事一般交代制で俺を朝起こしてくれれば。」 「うん。俺、あまり上手くないけど、頑張るよ。」 「それでよしっと。客室があるからそこに住んでくれ。荷物とかは・・・。引っ越し会社に頼むか・・・。義母さんがきっと用意してくれるだろう。それまでは俺の服とか使っていいし。あとは・・・何だろうな。食費は俺の財布から取っていい。昼代も兼ねてな。弁当作りたいなら作ってもいいし。他に聞きたいことは?」 「大丈夫だと思う。」 「なら、決まりだな。これから一緒に住もうな。」 「うん。義兄さん。これからよろしくお願いします。」 ぺこりと頭を下げた義弟が可愛くも見えた。俺は義弟の頭をぽんぽんと子供を慰めるように軽く叩いた。義弟が居ることで多少は生活費も浮くことになるだろう。義母さんも甘いからな・・・、義弟には。 その日から俺たち義兄弟は一緒に暮らすことになった。義弟は家に電話をして説明をしたらすぐに引っ越し会社の人たちが荷物を持ってきてみるみる間に客間が義弟、十夜の部屋へと変わっていった。俺は学校に行って義弟は部屋に戻って引っ越しのあとの片づけをしていた。翌日から行くといっていた学校にも本当に行ってるようで、ここからでは少し遠いのか定期代がかかると嘆いていた。それでも実家に居るよりはと一生懸命だった。 それから義弟はバイトも始めて俺に宿代の半分を出すと言いだし、俺は遠慮をした。流石に義弟から宿代まで出させられなかった。それでも引かない義弟に俺は食費代だけを請求することにした。それでやっと納得させ、俺も自分のバイトを見つけ施設に送るお金を稼いでいた。 前までは静かだった俺の家も十夜が居るだけで賑やかになった。時々、細小路が俺の家に来ては十夜となんだか話し込んでいたけど、俺よりも兄貴らしいことしてる気がするのは、俺に対しても同じようなことしてるからなのだろうか。十夜は細小路に懐いていた。 月日は流れそれでも変わらない毎日を過ごしていた。俺は時々、シスターの居る施設に足を運び話を聞いてもらっている。最近はもっぱら義弟、十夜のことについて話しをしている。シスターも喜んでいた。家族の話をすると暗くなる俺のことを心配してくれていたのだと思う。シスターが時々、入金があると言うと俺はちょっとびくっとする。それでもそのお金を使わないのか、いまだにぼろぼろの教会で、暮らすのに一苦労だと言っていた。俺は思わず使わないのかと聞いてしまいそうになるのを堪えていた。聞いたら俺が出しているのがバレてしまいそうだったからだ。俺はそういう時にはそうそうに帰ることにしている。 それから数日後、十夜に男の恋人が出来ていた。なんだかんだ言って男子校に居るせいなのか、恋人も必然とそうなるんだろうか。まぁ、十夜が幸せならいいんだけどな。何しろ一度嫌な思いをさせてしまってるし。楽しそうに曲や詩まで作ってる十夜の姿を見て俺はすごく嬉しかった。このまま幸せで居て欲しいけど・・・。卒業とともに終わるって言うのもあるし・・・。俺みたいに好きでもないやつらに身体を自由にさせたりしないでほしいな。俺は十夜が幸せを続けられるように祈り願い続ける。自分の分も幸せになって欲しいから。俺は一人の恋人を作るなんて出来そうにないし。ちょっと羨ましい感じもするけど、それはそれ。頑張れよ、十夜。 |