Church
霧龍要瑪

  ケンの所に一通の手紙が届いた。黒い封筒で差出人の名がなかった。ケンはちょっと恐怖しながら封を開けた。中には真っ白な紙に一言だけ”逢いたい”と書いてあった。そこにも名前が無く、ケンは謎を解き始めた。
「黒と白・・・逢いたい・・・誰だ・・・?」
ケンは頭を掻きながらコトバを紙に書いた。
「WeiβとSchwarzか?でも逢いたいって・・・。しかもどこでなんだ・・・か・・・もしかして・・・いや・・・まさかな・・・」
ケンは頭に浮かんだ考えを振り払った。ケンは考えようとしても、その考えしか出てこなかった。ケンは勇気を振り絞り、バイクを走らせた。
辿り着いた場所は、ケンが育った場所。今はもう跡形もない教会が建っていた場所。今はさら地になっている。この後、ビルが建つことになっていた。育った場所であり、母親代わりだったシスターを殺してしまった場所。ナギを傷つけた場所。あれ以来、一度も近付くこともしなかった。その跡地に一つの人影があった。ケンはその人影に近づくと、それに気が付いたのか振り返った。
「・・・やっぱり・・・ナギ・・・」
「そうだよ、ケン。ケンなら判ると思ってた。ここは僕たちが出逢って話をした場所。そして、ケンが裏切った場所。」
「・・・あぁ。そのことは、否定しない。シスターを、ナギを裏切った。そんな俺に何の用だ?裏切りには死を、か?」
「そんなことしないよ。ただケンに逢いたくなっただけ。ねえ、ケン。サッカー教えてよ。約束だったでしょう。僕、ちゃんとボール持って来たんだよ。」
ナギはボールをケンに投げた。ケンは反射的にボールを胸でトラップして足元に落とした。ナギはそんなケンを見て、拍手をした。
「やっぱり凄いネ、ケン。僕に教えてくれるよね。」
ケンは短く返事をすると、ボールをナギに蹴り返した。ボールの蹴り方からパスの仕方、シュートの入れ方まで様々な自分のできる範囲で教えた。ナギは少しずつだったが、憶え実践し、自分のモノにしていった。ケンは相手がナギだということも忘れるぐらいサッカーに夢中になった。ナギもそのケンの姿を見て一生懸命頑張った。
夕暮れになりボールが見えづらくなった時にようやく、ケンの動きが止まった。ナギもつられて止まった。ケンはボールを蹴り上げ、キャッチをすると、ナギに軽く投げた。ナギはボールを受け止めた。
「ありがとう、ケン。」
「筋はいいな。だから楽しむぐらいならできるぞ。仲間・・・ってそういうことするタイプじゃないよな。うちの連中もだけど。」
ケンはそういうと笑いだした。ナギは少し驚いた顔でケンを見ていた。ケンは笑いをやめて、ナギを見た。
「そういえば俺さ、ナギの笑った顔、見たことないな。笑えないのか?楽しくなかったか?確かにキツかったかもしれないけど・・・」
「笑い方を忘れたんだ。ずっと・・・笑ってないから・・・」
「そっか。残念だな。」
「でも楽しかった・・・。ありがとう、ケン。」
サッカーボールをぎゅっと抱きしめた。笑い方を忘れたナギは、コトバと態度で伝えようとした。ケンはそんなナギを見て頑張ってるな、と感じた。教会にいた時にも、ナギのような子供は多かった。理由はだいたい同じような感じばかりだった。ナギも同じ理由から笑い方を忘れてしまったのだろう、とケンは思った。
「いつか笑えるようになるといいな。」
そういうとケンはナギに笑いかけた。ナギも首を縦に振った。笑いたいと思えたからだ。下品に笑うのではなく、ケンのように純粋に笑えるようになりたいと、ナギは思った。
「えっと・・・じゃぁ、そろそろ帰るか。」
「えっ・・・もう・・・帰るの?」
「明日は店番だからな。早起きしないとまずいんだよ。」
「もう少しここにいて欲しい。もう少し話しをしていたい。」
ナギは少しだけ感情が出てるようにケンは感じた。ナギの表情は全く変わってはいなかった。内面に少しだけ感情が戻ってきたのかもしれないと、ケンは思った。ナギがすがる捨て子犬のように感じたケンは、もう少しいることにした。もう少し話して、表情が変わるかもしれないと、ケンは思った。
「じゃぁ、あと少しだけだぞ。でもここは、暗いから移動すっか。」
ケンはナギの手を掴み近くの喫茶店に入った。そこはうるさくなく、少し大人の雰囲気だった。
ケンとナギは窓際を避け、内側に座った。
なぎはボールを足元に置き、ケンは紅茶を二つ頼んだ。
あれから一度も忘れたことのないシスターのことを二人で話した。お互いの逢っていた時間の違いはあっても、シスターは変わっていない、と二人は思った。店が終わる時間まで二人はいろいろと話した。ケンの話しも、ナギの話しも、けして笑える話しばかりではなかったが、ナギの顔は少しだけ感じが変わっていた。ほんの少しだけ、表情が表に出てるような感じだった。
ケンは二人分の代金を支払い、店を出てきた。
ナギは店の前でケンが出てくるのを待っていた。
「俺はバイク取って来てから帰るけど、ナギはどうするんだ?」
「ついて行ってもいい?ケンといると楽しい。」
「いいけど・・・いいのか、戻らなくて。」
「戻らなくても何も言われない。」
「そっか。じゃぁ来てもいいけど、何もないからな。」
「うん。」
ケンはバイクを取りに行き、ナギを後ろに乗せて店に戻った。
店につくとバイクを置いて、ナギを連れて部屋に戻った。他のメンバーの部屋は暗く、寝てるか出かけてるかしているかのように静かだった。
ケンはクローゼットからパジャマを出し、ナギに着替えさせたあと、自分もパジャマに着替えた。
ナギをベッドに行かせケンは冷蔵庫からジュースを持ってソファーに座り、一つをナギに渡した。ナギは受取ながら”ありがとう”と言った。
二人は黙って空に浮かぶ月を眺めながら、いつしか眠っていた。

ケンの意識の遠くから、目覚まし時計のベルが鳴っていた。ケンは手を伸ばし目覚ましを止めるとソファーの中で伸びをする。横で人肌があたり目を開けると、いつの間にかナギがソファーに来て寝ていた。ケンはナギを起こさないようにソファーから降りた。ケンはパジャマから着替え、下に降りて行った。
しばらくするとケンは両手にパンを抱えて戻ってきた。するとすでにナギは目を覚ましていた。ケンは床にパンを置いて、冷蔵庫から飲み物を持ってきた。二人は同時に合掌し、神に祈り始めた。それが可笑しくて、ケンは笑いだした。ナギは祈りを中断してケンを見た。
「俺たち、それぞれ神に祈りをするにはほど遠いなぁって思ってたけど、こういう時って癖が出るんだって思うと、可笑しくてさ。」
Weiβは殺人、Schwarzは悪の組織の一部。神に懺悔もなしに祈りを捧げている自分にケンは笑いが止まらなかった。ナギもケンの言うことが解って、なんだか可笑しいと、感じた。ケンが感じていると思える感情だった。
少しずつだったが、ナギの表情が出てるような感じがケンに伝わった。ナギの心に少しでも楽しい思い出ができることをケンは願った。少しの間でナギは変わったのだろう、とケンは思った。
「さてと、そろそろ俺は店に戻るけど、どうする?戻るならあいつらに見付からないように裏口、教えるけど。」
「ケンが働いてるところ覗いていたい。この窓からでも見えるみたいだし。」
「そっか。じゃぁ、昼はこの残り食ってくれ。たぶん、部屋に戻ってこれないだろうから。」
「うん、判った。」
ケンは返事を聞くと下に降りて店の方へ行った。ナギは窓から外を覗いた。外では女性がたくさん声をあらげていた。ケンの姿を見た女の子は一斉にケンの周りに集まって何やら手渡していた。
「こんなんで花屋、大丈夫なのかな?」
ナギが呟くと時折本当に花を買って行く女の子がいて安心した。
時々、怒鳴り声が聞こえ、女の子の黄色い声が聞こえた。ナギは店の中は賑やかなんだろう、と思った。確かに賑わってはいたが、花屋としての機能は働いていなかった。
昼ごろになると客はいなくなっていたが、店番を交代しながら昼休みを取っていた。ナギはケンの言ったとおり、さっきケンが持ってきたパンを食べていた。ケンはどうやら外食を摂りに行ったらしい。店番をしている二人はケンが、またもや交代の時間になっても戻ってこないと、もう一人のほうに言っていた。ナギは店を覗き込むように、見ると一人で店番をしているのが見えた。二人はどうやら休みをとって食事を摂りに行ってしまったらしい。
少し時間が経って女の子たちが戻ってきたらしく、店はまた賑やかになった。ケンはまだ戻ってきてないらしく、一人で群がっている女の子達に対応していた。女の子たちは四人がそろってないことが不満らしかったが、好きな人が番をしてるだけでも嬉しい人は、花を一本買って居座っていた。女の子達は店の前に群がって四人になるのを待っているようだった。
少し経って、ケンが走って戻ってきた。
呑気な声でケンは謝っていたが、忙しかった時間を一人で乗り越えていた怒りは収まらないらしく、しばらく怒鳴り続けていた。
一頻り怒鳴った後、ケンに仕事を押しつけ、店の中に入って行った。店の外に残されたケンは店番の続きを始めた。
また少し経って、昼休みを取っていた残りの二人が店に戻ってきて、午前中のような賑やかさが戻ってきた。相変わらず、女の子の黄色い声が聞こえ、花を買わないお客で店が溢れていた。時々買って行く人もいるが、残っているのが過半数だった。
閉店時間になると、蜘蛛の子を散らすように女の子たちが家路についた。ナギは窓から離れ、しばらくぼーっとしていた。
ケンは仕事を早く終わらせ、部屋に戻ってきた。扉が開く瞬間、ナギは気配をけすように隠れた。ケンはナギが帰ったと思い、電気をつけると、ナギはケンだと認識して出てきた。ケンはいないと思っていたナギがいたことに驚いた。
「ビックリした、いたのか。気配消すなよ。」
「ケンじゃなかったら困るから。」
「俺以外が部屋に入ってこないよ。干渉はされないし、干渉もしないからな。夕飯どうする?」
ケンはいいながら、抱えて持ってきたプレゼントの山を適当な場所に置いた。ケンはそのままナギの隣りに座った。
「ケンが決めていい。」
「俺が決めるのか・・・ん〜・・・ファミレスでも行くか。・・と、その前に・・・パジャマはやばいよな。」
ケンはクローゼットからTシャツとジーパンをナギに渡した。ナギが着替えるのを待ちながら、ケンはポケットに財布の中を確認してからしまう。
ナギが着替え終わり、ケンに近寄った。ケンにはピッタリの服でもナギが着ると、ブカブカだった。ズボンの裾を折り、ベルトを探して着けさせた。ケンとナギは近くのファミレスに歩いて行った。
ファミレスは時間帯のせいか、夕飯を食べている客でいっぱいだった。二人は少し待つことにした。待つ間、ナギは母親のいるテーブルをじっと見ていた。ケンは仕事柄、つい、無意識のうちに植物を見てしまっていた。
二人の席ができるとウェイトレスが二人を案内した。二人が席に座ると水とおしぼりとメニューを持ってきた。二人はメニューを見ているとお決まりの台詞をウェイトレスが言って二人の席から遠ざかった。ケンとナギはそれぞれ食べたいものを決めると、テーブルに設置してあるボタンを押した。ウェイトレスが二人のメニューを聞いて去って行くと、二人はドリンクバーを取りに向かった。それなりに豊富のドリンクを選び、席に戻ってきた。ナギは飲み物に口をつけながら、目は母親のいるテーブルを見ていた。ケンも何気なく母親のいるところに目が行っていた。ふっと二人の目があって、苦笑いをした。
「何やってんだろうな、俺たち。」
ケンはそういうと、また苦笑いを浮かべた。
二人が頼んだ料理をウェイターが持ってきた。二人は目の前に置かれた料理の前で両手を合わせ、軽く合掌し食べ始めた。
二人は食べ終わるまで無言だった。食べ終わると、ケンが伝票を持って立ち上がった。それを追いかけるようにナギも立ち上がった。
ケンが会計を済ませてる間、ナギはレジの横においてあるモノを真面目に見ていた。ケンがそれに気がついた。
「ナギ、それ、ほしいのか?」
「えっ・・・いらないよ。ただ、こんなのがあるんだって思っただけ。」
”買ってもらえなかったし”とケンに聞こえないように小声でナギは言った。
ケンは自分も買ってもらったような経験がなかったような、気がして自分とナギを重ね合わせた。なんとなく、ナギが見つめていたモノをケンは掴み、代金を支払ってナギに手渡した。
「・・・いいのに・・・」
「素直に喜べ。」
ナギの子供っぽい言い方にケンは苦笑した。ナギは握らされたモノを落とさないようにしっかりと持った。ケンはそんなナギの行動を見て笑いながら、ナギの空いている手を掴んで店を出た。すっかり夜が更けて空に星が輝いていた。ケンはナギを連れて自分の部屋に戻った。
ナギは相変わらず、仲間のところに戻ろうとしなかった。ケンは部屋に戻ると冷蔵庫を見た。中には飲み物のほかには何も入っていなかった。開けたまま悩んでいると、ナギが近付いてきてケンが覗く冷蔵庫の中を見た。
「何も入ってないね・・・」
「生活感、出さないほうがいいだろう。一応、隠れ家だったし。まぁ、すでにバレてるところだけどなぁ・・・」
苦笑いしながらケンは飲み物を出してから冷蔵庫のドアを閉めた。ケンはナギに飲み物を渡すと立ち上がってソファーのほうへ歩いて行く。ナギも追いかけてソファーに座る。
「でも何か入れとかないと、外食ばっかりだと身体に悪くない?」
「・・・そりゃそうだけど・・・まぁ、それが楽だし。」
「僕のために何かいれといて欲しいなぁ・・・」
「・・・」
ナギの一言にケンは返す言葉をなくした。少し笑った気がしたナギの顔をケンは覗き込んだ。
「・・・じゃぁ、なんか買いに行くか?いまだと、スーパーやってないし、コンビニぐらいだぞ?」
「それでも僕の食べるものは確保できるよ。」
ケンは飲んでいたペットボトルの蓋を閉めて、ソファーの肘掛けのところに置く。ナギもそれを習って肘掛けのところに置く。ケンは立ち上がりナギを立たせると、ポケットの中に財布を入れる。ナギを連れてもう一度、外に出かける。隣りにあるコンビニまで、周囲の注意を払って歩いて行った。
ケンは入り口でカゴを取り、ナギに食べたいものを聞きながら店の中を歩いて行た。しばらく置いておける食べ物もカゴの中に入れ、飲み物も何本か入れた。
これぐらいで大丈夫というところで、レジに持って行った。ナギはケンの後ろについて行き、会計を済ませるのを待っていた。ケンは店員に言って袋を2つに分けてもらった。ケンは軽そうな袋をナギに持たせ、もう一つを持った。ナギは面倒くさそうな顔をして少しだけチカラを使っていた。ケンはそんな顔のナギを無視して店を出た。
ケンはそっと部屋に戻り、コンビニの袋から出して冷蔵庫にしまった。ナギからも袋を受け取ると中身をしまう。ナギはそそくさとソファーに座り外を見る。ケンはそんなナギを見て冷蔵庫を閉めるとソファーに歩いて行く。
ケンはナギの服装、つまり自分の服を見ながら思い出したように声をあげた。
「・・・あっ・・・忘れた。」
「何を?」
「何をって、ナギの服だよ。俺のはでっかいだろ?しばらくいるんだったら、服が必要になるだろうが。」
「あっ、そっか。でもいいよ、ケンの服、パジャマみたいだし。」
「ならいいけど。」
「うん。」
ナギがそれで納得したのならとケンはそれ以上言わなかった。しばらくはブカブカの服で我慢してもらおう、とケンは自分を納得させた。ケンは時計を見てクローゼットのほうへ歩いて行った。
クローゼットの中には、多少使われてない服があった。それを袋から出してナギに渡した。ナギはその服を見つめた。ケンはバスルームを指差した。
「風呂、入ってこいよ。昨日、入らないで寝てんだから。」
「でも・・・」
「子供が遠慮しない。さっさと入ってくる。」
ケンはナギを立たせて背中を押しお風呂場まで行かせると、冷蔵庫から飲み物を取りだしベッドに座る。窓から覗く星空を眺めながらジュースを飲む。
ナギはケンに無理矢理、風呂に連れて行かれ、仕方なく服を抱えたまま風呂場に入った。ケンはそのままナギが出てくるのを気づかないぐらい星を見ていた。ナギは髪の毛から水を滴らせながらケンを後ろから呼んだ。
ケンは驚いて思わず戦闘態勢に入った。
「・・・どうしたの?ケン。お風呂・・・」
「・・・あっ・・・あぁ・・・ワリィ・・・」
ケンは苦笑いしながら戦闘態勢を解いた。ナギの髪の毛から水が滴れているのを見てタオルで髪の毛を拭いてやる。
「風邪、引くだろ。ちゃんと髪の毛、拭けよ。」
「うっ・・・うん。あとは自分でやるから・・・ケン、お風呂入りなよ。」
「あぁ。」
ケンはタオルから手を離して、クローゼットから服を取り出し、それをもってお風呂場に行った。ナギはケンに言われた通りに髪の毛をタオルでちゃんと拭いた。
ケンが風呂から出てきた時には、ナギはソファーで寝ていた。
ケンはナギを起こさないように抱き上げ、ベッドのほうへ運んだ。天使のような寝顔に、ケンはいつもと違うナギの顔を見た気がした。掛け布団をかけてやり、ケンはタオルを持ってソファーに寝転んだ。
目覚まし時計をセットしたあと、少し離れたところで気持ち良さそうに寝ているナギを見た。ケンは掛け布団代わりのタオルを掛けて眠りについた。

そんな毎日を二人は過ごして半年が過ぎた。相変わらず、ナギはケンの部屋に居座っていた。時々は戻っているみたいだが、自分が関わっていないと判る、とケンの部屋に必ず戻っていた。ケンはケンでナギが居ることが当たり前のようになっていた。店を抜けては、部屋に戻りナギが居るかどうか確かめて昼食を一緒に食べに行ったりしていた。裏の仕事が入る時は一言いってから出かけるようになっていた。敵同士のはずの二人がいつの間にか仲間同士のように話しをしていた。
「ねえ、ケン。今夜、何もないならあの場所につれて行ってよ。」
「あぁ、いいよ。じゃぁ、店が終わったら部屋に戻ってくるから用意しとけよ。」
ナギは首を縦に振って出かけるケンを見送った。ケンはエプロンをつけ店に出た。相変わらず、店の周りには女の子の集団で溢れていた。そんな中にケンが居るのをナギが見つめていた。自分でもなんだか判らない感情を抱えもて余しながら。
ケンはいつものように仕事を終わらせ、エプロンを外し自分の部屋に戻ってきた。
「行くぞ、ナギ。」
ナギを呼んでヘルメットを二つ持って下に降りて、ナギも気配を消しながらきた。ケンがヘルメットをナギに渡してバイクにまたがる。ナギもヘルメットをかぶってケンの後ろに乗った。
ケンはナギが言うあの場所へバイクを走らせた。
着いた場所はいまだにさら地になっている広い場所だった。ここは二人の出逢った場所だった。ケンはバイクを止めるとナギを降ろしてから自分も降りた。ナギはバイクから降りると、さら地のまん中まで歩いて行った。ケンもバイクを端に置きナギの所まで歩いて行く。ナギはその場に座りケンも座る。
「どうしたんだ?いきなりここへ来たいなんて。」
「ちょっとね。そろそろここに新しい建物が建つから。どうしてももう一度、ここに来たくなったんだ。」
「そっか。」
ケンはそれ以上、聞かなかった。ナギは黙り込んで地面を撫でる。数日間とはいえ、自分が暮らしてきた場所。母親代わりになっていたシスターをこの場所で亡くした。でもここでケンに逢えたことを信じてもない神に感謝してしまうほど嬉しかった。
「ねぇ、ケン。」
「どうしたんだ、ナギ。」
こっちこっちと、ナギはケンの顔を自分に近づけさせた。そして、頬に軽くキスをする。ケンは唐突のことで何が起きたのか判らなかった。ナギは少し微笑んで立ち上がった。
「部屋に帰ろう、もうここには未練はないから。」
「・・・あっ・・・あぁ・・・」
ケンは一瞬呆気に取られたが、自分を取り戻し立ち上がった。そしてバイクのところにいき、二人はまたがってまたケンの部屋に戻って行った。
 

後書き:頭が腐ってます。ただナギ君の微笑んだ顔が見たいだけで始まったこの小説。時期も何もかもパラレルです。もしかするとオリジナルに近いかもしれないです。こんなこときっと奇跡でも起きないかぎりないだろうし。ナギが笑ったり、ケンと部屋に住んでみたり・・・。住み着いた期間はどのくらいがいいだろうと、悩みました。1年って長いし、かといって一週間は短すぎるだろうし。とりあえず、まだ住み着くらしいナギ君。ケン君はナギ君に振り回されてるかもしれない。頬にキスなんてお子様かもしれないけど、やっぱりこの二人にはお似合いだと思って頬にしました。唇はもう少し先かななんて、勝手に思ってみたりします。私のなかでこの二人はお子様チームにしたいから、アダルトに行くにはもう少し先かな・・・。”ケン×ナギ”にしようかと思ったけど、この二人には”ケン&ナギ”がいいかな。もう少し、私の中でお子様でいて下さい。お子様のままでいてくれてもいいけど、それだと進展なさそうだから。可愛い二人組はこのままでしまっておきたいですね。あぁ・・・本当に私の頭は腐ってます。すみません。


 

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