第11話:ひどいはなしのつづき

 

前回の歯磨き粉のCMから2ヶ月くらい経ったある日のことだった。

「浩之ちゃーんっ! 志保が、志保がねっ、またCMに出るんだって!」

またあかりが駆け込んでくる。 ってゆーか、なんでお前そんな情報を・・・・? まあいいか。

「ほぉう・・・ でもどうせ、また変なCMなんだろうな」

「それがね、今度は大手飲料水メーカーのCMらしいよ?」

「へー・・・・」

「だから今度は期待していていいって言ってたよ、志保が」

「なるほど、あれはあれで、けっこうインパクトのあるキャラだからな」

そう、実際一週間しか放送されなかった(しかも関東限定)あのCMで結構話題を呼んでしまったのだ、志保は。

そのまま事務所にでもは入っちまえば良かったのに、アイツは首を縦に振らなかった。

 

『だって、遊べなくなるじゃない』

 

だそうだ。 時々、アイツがバカなんだか器が大きいんだか判らなくなる。 まぁ、多分バカ、なんだろうが。

「じゃあ、アイツはそろそろCM撮影を始めるんだな?」

「うん。 今月中に撮って、テレビでは来月から流れるみたい」

「そっか・・・ じゃあ、そん時はまた面白くなりそうだな」

「そうだね、楽しみだね」

 

・・・・・・・・・・・・・・・そして放送される月になった。

 

俺の家に前回のメンツがそろった――あかりと雅志だ。 志保は今回もキャンセルした。 なんでも、おじいさんの

法事だそうだ。 しかし、孫のCMデビューがあの歯磨き粉じゃあ、ご先祖様も浮かばれないってモンだ。

それはさておき、しばらくテレビをつけながら雑談をしていると、雅志が叫んだ。

「あっ、あれ、志保だ!!」

「今度はまともだよっ!」

「おっ、本当だ!」

 

『おかーさーん、ご飯食べてく時間無いよー!』

 

ブラウン管の中の志保は、制服姿だ。 いかにも現代に見られる朝の時間がない女子高生を演じている。

 

『お味噌汁だけでも飲んでいきなさい』

『そんな時間無〜い!!』

 

・・・・・なんだ、志保の出てるヤツって、味噌のCMかぁ・・・。 飲料水って言ってたから、てっきりジュースとか

そう言うのを想像してたぜ、まぁ、味噌も味噌汁にすりゃー立派な飲料だからなー・・・ などと思った。

多分他の2人もそう思ったのだろう、3人で顔を見合わせほっとした。

 

『でも、飲んできなさい、はい、これ』

 

CMには続きがあった。 まぁ、ここら辺でおいしいみそ汁が出てきて商品名が判る――俺達はそう思っていた。

出てきた物を見るまでは。

 

なぜか350ml缶が出てきた。それにはこう書かれていた。

 

『ファ●タ味噌風味』

 

・・・・・・おえぇ・・・・・・・。

 

プシッとプルタブを開けると湯気が出る。 HOTなのかよ!

しかも志保はソレをおいしそうにグイグイと飲む飲む。 こっちはもう、見てられるモンじゃない。 もう

聞きたくもないんだが、ナレーションが流れてくる・・・・。

 

『ついに出た! ファ●タ味噌風味! パチパチ感と味噌の絶妙なコンビネーション! 今まで不可能と言われてきた

 炭酸の加熱による容器の破壊を自社オリジナルの技術で克服!  ヒートアブゾーブ缶を採用し・・・・・・』

 

・・・もう・・・・ナレーションも聞こえねーよ・・・・。

 

『えー! うそ、マジ? これおいしー!』

 

飲み終えた志保があからさまに感動する。 そして元気良く玄関のドアを開ける。

 

『いってきまーす!!』

 

と同時にまたナレーションが流れる。

 

『飲んで味わえ! ファ●タ味噌風味、新発売! つぶいりファ●タひきわり納豆味も同時発売!』

 

・・・・・・・そしてCMは終わった。 もはや俺達に言葉はなかった。 しかし、今のが味噌風味バージョンだって

ことは、納豆バージョンも当然・・・

 

『だって、納豆ってネバネバするしぃー、なんかいやなのよ』

 

ほら、あった。

 

『そんなこと言わずにちゃんと食べなさい』

 

バツン。

 

俺達はテレビの電源を切り・・・・・とりあえず星を眺めた。 

どこまでもどこまでも澄み渡る夜空に浮かぶ星達は限りなくきれいで、3人とも無言でしばらく眺め続けていた・・・・・。

                                                             〜完〜

 

――戻りますぅ――