「ぬううぅぅうううがあああぁぁぁぁ!!!!!」
「うわあああぁぁぁぁ!!」
「どりゃあああぁぁぁぁああああ!!!!」
「ひええぇええぇええぇえ!!」
・・・・・・・・・以下略。 ・・・・・・決して、手抜きではない・・・・・・・・・。
七分経過した。 闘ってみて判ったことだが、こいつ――セバスチャンこと長瀬――は、空手をベースとして
柔道の技を所々に入れてくる。 リーチのある空手の技を使い、こっちの防御を崩してそこで投げる。
はっきり言って、めちゃくちゃ強い。
ここまできて、KOこそされないものの少しずつポイントを取られている。 このままいけば確実に判定で負ける。
「ふううぅうぅぅぅんぬっ!」
”ぎゅおぉぉぉん!!” ・・・・・・・・・前言撤回。 KOで負けるかも・・・・・・・・・。
『残り二分です』
いよいよやばい。 足がふらついてきた。 防御の上からでも激しい衝撃を受ける。 それにしても、なんでこいつは
息が上がんないんだよ、などと思っていると、
「ひゅー・・・・・・・・・ひゅー・・・・・・・・・」
と、呼吸音が聞こえてくるではないか。 ・・・・・・奴も疲れている・・・・・・? そりゃそうだ。 休むことなくあれだけの
攻撃をやり続けていりゃ、誰だってばててくるのは当たり前だ。 そう言えば、冷静になって見れば、攻撃にも最初の
切れが無くなってきているような気が・・・・・・・・・。 俺もガタガタだが、奴も結構キている。 仕掛けるならここしかない!
俺は一旦後ろに大きく間合いをとった。
「ちょこまかとおぉ!!」
思惑通り、奴は体重を乗せた左正拳突きを撃ってきた。
「・・・・・・まさか!」
綾香は察したようだった。 そう、俺の狙いは・・・・・・ 以前綾香にも試したことのある、クロスカウンターだ。
・・・・・・あの時は俺も未熟だったが、今回はそれなりに練習も積んでいるつもりだ。 俺は突っ込んでいった。
奴のパンチを紙一重で避ける! と同時に俺の渾身の力を込めて右ストレートを放った!
確実にヒットしたと思った。 しかし・・・・・・俺の拳は肩にかすっただけだった。 そして奴はそのまま俺の伸びきった
腕をとって腕投げを決めた!!
審判の方を見ると腕は・・・・・・ 挙がっていない。 KOではない。 しかし、時計を見るとあと三十秒をきっていた。
俺の方ももう立っているのがやっとだ。
「があああぁぁっ!!」
最後のとどめと言わんばかりに奴がラリアットをたたき込んだ。 大きく伸ばした右腕が、俺の頭を捕らえた。
大きく視界がぶれる。
『あと、十秒』
アナウンスの声が聞こえた。 体中から力が抜けていく。 まぁ、よくやったかな、俺としては・・・・・・
三回戦まで来られたんだ・・・・・・。 薄れゆく意識の中でボンヤリと思う。
(デモ・・・・・・・・・ホントウハ・・・・・・カチタカッタ・・・・・・・・・・・・!)
どこかでもう一人の俺が叫んだ。 最期の力をふり絞って倒れそうな体を踏みとどめた。
「うおおおおおおぉぉぉぉ!!」
そのまま身を反転させてしゃがんだ状態から奴の顎をめがけてストレートアッパー気味の掌底を放った!!
「・・・・・・残念だったわね・・・・・・」
「まぁ・・・・・・・・・ あのオッサン相手じゃしょうがねーさ・・・・・・・・・」
「でもでもっ、クロスカウンターと最後の掌底はすごかったですよ!!」
「そうね・・・・・・。 さすがのセバスチャンも微動だにできなかったわね」
「あれが当たってりゃなぁ・・・・・・」
・・・・・・掌底は外れていた。 そのまま俺は倒れてしまったらしく、結局三回戦で敗退した。
その後、セバスチャンは準決勝まで進んだ。 俺は・・・・・・・・・とんでもなく強い奴と闘っていたという事だ。
奴は最後に一言、
「多少は、骨があるみたいだな・・・・・・・・・」
と言って会場を後にした。 まぁ今日は色々あったが今回の教訓は――『俺より弱い奴に勝てたからいいや』、だ。
・・・・・・・・・だめじゃん。
〜完〜