ホワイト・アルバム〜First Review・18禁ゲームの底力〜
ええ、今回はけっこう最近のゲームのレビューにきちんとなる予定です。ただ、あらかじめ申し上げておきますが、18歳未満禁止のゲームです。文章にやばいのは入らないようにしようと思いますが、そういうゲームがそもそもお嫌いな方はこの先にはお進みにならないようお願いします。
何が18禁だ、このタク野郎め。
・・・・・・。
はい、こっから先は、あなたが18歳未満でなく、かつそういったゲームに耐性のある方だと。それを前提にお話します。お若い方、嫌いな人はお帰りいただきましたんでね。(前もこんな感じだったな。)
ええ、先ほど私、Leafから先日リリースされましたアドベンチャーゲーム「ホワイトアルバム」を一回目終了しました。
このゲーム、終えてみて第一に思ったことは、「18歳未満禁止にしておくには惜しい」ということです。
ゲームとしてはいわゆる「アニメ絵」の登場人物と恋愛(文字化するのは結構照れくさいもんだ)をするアドベンチャー形式で、いわゆる「ギャルゲー」と硬派ゲーマーからは蔑視される類のゲームです。
はばかりながら私、そういうゲームに割合耐性のある質でして、「次世代家庭用ゲーム機に移植されたギャルゲーの元のパソコン版」は軒並み制覇している人間であります。(迫害されるのは好まないのでこの事実を表明する相手を選んではいますが)
で、そういったゲームを他者に広めることは、いくつかのゲームを除いては、あまりしません。相手に耐性がなければ恐らく迫害されるでしょうし、耐性があっても今度は絵的な趣味がぜんぜん違ったりするからです。
で、この「ホワイトアルバム」なんですが、もう徹底的にお勧めします。絵柄が(多少)気に入らなかろうと、ギャルゲーが嫌いだろうと、硬派ゲーマーだろうと、おやりなさいと申し上げたい。少なくとも、前述した3つの理由だけで、やる前から敬遠するのは非常にもったいないです。
設定としては、まず、大学に通う主人公がいます。男の友人がいて、女の幼なじみがいます。1歳上の高校からの女の先輩がいます。自分が家庭教師をしている女の子がいます。そして、主人公にはゲーム開始時から、高校時代から付き合っているかわいい彼女がいます。
ここまでは非常に日常的な構図です。で、親友の男は先輩の女性に思いを抱いていて、主人公はそれを知っており、その先輩の女性は主人公に淡い思いを抱いている。と、月9のトレンディドラマを地で行く展開に入るんですけど、さらにゲームならではの設定が入ります。
主人公の彼女が、高校卒業と同時に芸能界入り、ゲーム開始時にはすでに新人歌手として「テレビに出ない日のない」活躍を見せています。で、主人公との仲を割こうとする冷徹な女性マネージャーがおり、彼女の才能に惚れ込んでいるヒットメーカーである敏腕プロデューサー(♂)がいて、さらに話はややこしくなっていくわけです。
その主題は「浮気」・・・失礼。「彼女と会いたい、けど会えない、でも彼女を応援したい、そのジレンマの中で、想いを寄せられ、また想うべき女性が現れってしまった男の苦悩」です。
ゲーム中、ストーリーにいくつかの分岐があるにせよ、主人公の彼女(アイドル)はほんとに真摯に主人公を想ってくれます。でも、徹底的に、会うことすらできない状況がこれでもかと続くのです。電話しか取れない連絡。しかも合間を縫って会おうとしても冷酷なマネージャーや急なスケジュールではばまれること再三です。
そんな中、親友が惚れている女の先輩、彼女の主人公へのほのかな、しかし確かに感じられる想いが主人公を悩ませ、「ほっとけない」印象の家庭教師先の生徒との距離は主人公をそれなりに悩ますようです。(筆者は年下嫌いなんで悩めませんでした)
特筆すべきは、主人公や周囲の人物の心象描写の巧みさです。「雫」「痕」「To Heart」など、デジタルノベル形式で成功した名作を送り出し、多くの固定ファンをつかみつつあるLeafの面目躍如というところでしょう。
主人公が、長年の夢をかなえて歌手となった彼女への、自分が取るべき態度の迷い、とまどいそして苦痛。そんな彼のすぐそばにあった優しさ、ぬくもりへの逃避、それによる彼女への裏切り、自分への悔恨の念。壊れてしまった友情。
そういった描写が、文章にとどまらず、絵的にも、演出的にも、非常に細やかに表現されています。全編に流れる切ない雰囲気が、「愛しい人に会えない切なさ」から徐々に「愛しい人、大切な人を裏切る(裏切らざるをえない)切なさ」に変わってゆくそのストーリー展開はまさに秀逸といえます。
・・・もちろんゲームですから、ゲーム開始前の主人公の性格付け、ゲーム中の主人公のセリフ、行動の選択によって、ストーリーは非常に細かに分岐するようです。その彼女に思いを通し続けることもできれば、すべての信頼を刹那のぬくもりと交換し続けること、自ら心から血を流しながら新たな相手に想いを移すこともできるようです。
いくつかの分岐を選択肢直前セーブ→やり直しを駆使して試みましたが、手を抜いた感じのストーリーは一つとしてありませんでした。
さらにこの文章に前述した感想、「18歳未満禁止にしておくには惜しい」というのは、その性的描写の美しさ、そして少なさにあります。
ほんとに少ないです。回数的にも。当然ですね。後ろめたい気分を隠しながら他人を裏切りながらするわけです。双方悲しみながら、ね。この点主人公は非常に純粋で、開き直りやあきらめとは無縁です。芸能界でがんばっている彼女にすまないと思いつつ、(場合によっては相手もそのことを知りつつ)行う刹那的な行為に終始します。描写も文章的にはややきつめかも知れませんが、文章と絵柄をほんのちょっとだけ直せば、ほんとにトレンディードラマレベルの描写にすぎません。
さらにストーリーの趣旨、その行為が行われた必然性を考えるに、それがメインのゲームとは考えにくく、露骨に性的描写を目的としがちな他の18禁ゲームとは明らかに異なります。映画やドラマの性描写であって、決してアダルトビデオの性的描写ではありません。
登場人物、ストーリーの内容についてはゲームの性質上言及しませんが、ストーリーも硬派な恋愛小説(?)並み。絵柄に目をつぶればかなり良質なデジタルノベルとして、相当魅力的な作品に仕上がっているといえるでしょう。
ギャルゲーといわず、やって見てください。 掛け値なしで、これはすごいです。・・・買うときにちょっと恥ずかしいかもしれないけど。
PS:
パソコンゲームの売れ筋が、いわゆる硬派なシミュレーション/RPGからいわゆるアダルトゲーム・18歳未満禁止のゲームにウェイトが移ってから久しいですが、中にはこのようなストーリー的に秀逸なアドベンチャーが埋もれていることも結構あります。
もちろん、多くの18歳未満禁止ゲームは、扇情的な性的描写を供給することを主体としたものであるでしょうが、中には「なんでわざわざ18禁にしたんだろ」というようなゲームもあり、口コミで名作として広まっている物も少なくないようです。
要するにある時期から「アドベンチャーゲームはストーリーに必然性があろうがなかろうが、性的描写がいくつかあり、18歳未満禁止のステッカーがパッケージに貼ってないと売れない。」という状況になっており、そのためにストーリーに何ら必然性のないところでもHシーンを設けている(名作といわれているものほど、必然性の無さは際立っている)というのが真相のようです。
その辺の事情は、開発サイドというより流通サイドの問題であるような気がしますが、18禁でアニメ絵で、ギャルゲーっぽいと言う理由だけでゲームを取捨していては、今作品をはじめ、「DESIRE」「EVE」「YU−NO」などの「名作」と呼ばれる作品をみすみす見逃すことになりましょう。
情けないようですが、これが、18禁ゲームの底力なんでしょうか。
White Album
1998 Leaf / Windows 95
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